死にたくないなら戦え
血の海……
今、俺たちの目の前に広がっている光景だ。男女問わず殺され、残ったのはただの死体だけだ。この惨劇を見せられ嘔吐している人もいる。いや、結構いっぱいいる。泣き出している奴もいる。だが、誰も喋ろうとしない。いや、声がでなくなっているのだ。普通の高校生が目の前で残虐行為を見せられ、まともに喋れるはずがないのだ。
そんな時、第一声を放ったのは覆面の男だった。
「いやー、残念な光景ですね〜大切な戦力が無くなって〜」
俺は聞きたいことが山ほどあったので質問しようと思ったが、思い止まった。おそらくこれは撮影されたものだろう。奴はさっき、放送されていると言った、質問は後回しで、奴の説明を聞く。
「さて、ルールを説明しますね。」
「ルールその1、他校への攻撃の際12時間前に通達を送ること。」
「ルールその2、攻撃作戦時以外で学校領地外への外出は禁止とします。違反を犯した場合は奇襲とみなし、その戦闘でのptは与えられません。」
「ルールその3、モンスターが出現する場合がありますが、その場合は迎撃してよい」
「ルールその4、対校戦において負傷、もしくは死亡した場合でも本校が勝利した場合は肉体が再生されます。」
「以上になります。それとこの世界では他校生を1人殺すと1pt、学校を占拠すると200pt、学校を破壊すると1000pt、仲間を殺すと−100pt、このポイントを使い、武器の購入、校舎武装などの費用に使えます。食事は7時、13時、19時に提供します。では、頑張って下さいね」
モニターはそれで消えた。俺はなんとかこの状況を理解し、打破するために生徒会に招集をかけることにした。幸い俺は生徒会に入っていた。
「生徒会のみなさん!ステージ上に集まって下さい!」
マイクなんて取りに行けないので俺は大声で叫んだ。
生徒会メンバーはすぐに集まった。
3年生徒会長 高村 雫
3年副会長 篠宮 半蔵
3年書記 長門 哲
2年会計 千葉 心美
2年庶務 俺だ
このメンバーが生徒会メンバーなのだ。そして、パニックを起こしている人たちをなんとかして取りまとめ、生存者でクラスごとにまとまってもらった。そして、そのクラスの委員長達を呼び、俺たちの考えを伝え、クラスのみんなに伝えてもらった。そこらじゅうから驚愕の声が聞こえる。
俺たちの考えはこうだ。ここはおそらく他の世界であること。そしてここでは戦わなければ生き残れないこと。そして、ここの世界には俺たち、学生以外はいないこと。恐らくだが、全て当たっているだろう。目の前であんな光景を見せられたんだ。誰だって納得するさ。
そして、俺と千葉心美、長門哲は学校内を探索することになった。
本校はA校舎B校舎に分かれている。俺と千葉心美は特別教室が多くを占めるB校舎を探索、長門哲は一般教室が多いA校舎を探索することにした。
俺と千葉心美は一階から調べる事にした。一階は理科室や工学実習室などが並んでいる。そこで俺達は驚くべきものを見た。武器の山だ。いや、正しくは武器庫のようになっていた。多種多様な銃、刃物、それに防護服も用意されている。1200人近くのものが揃っていてもおかしくはない量だった。2階も同様に武器庫になっていた。3階は、布団や日用品などが敷き詰められていた。4階はパソコン実習室だ。パソコン実習室はそのままになっていた。
そして急いで体育館に帰りこの事を会長に伝えた。そして、もう一度委員長達を呼ぶ。武器の事、他の日用品の事、全てを伝えた。隠し事をしても意味がない。すぐにバレるし、生徒会への信頼性が無くなる。先生と呼べる大人がいない以上、俺たちでなんとかするしかないのだ。
生徒会で話し合った結果。とりあえず、布団を敷くことにした。布団があれば横になることもできるし、寝ることもできる。部屋は自分の教室だ。男女混合になってしまうが仕方ないのだ。幸い、うちの高校には別館として、食堂と宿泊施設がある。そこには風呂やシャワーがあるので人間的な生活は送れるだろう。生徒の皆には教室で待機してもらい、俺たち、生徒会はパソコン室に行くことにした。目的は情報収集だ。インターネットは使えなくとも、おそらく何かしらの情報はあるはず。会長がそう言い出したので皆で行くことにしたのだ。
パソコン室に到着し、会長がパソコンの電源をつけた。そこに映し出されたのは、いつも見ているWindowsの画面ではなく、真っ黒い背景だった、そして赤い文字でこう表示されていた。
「デスゲームにようこそ」
少しぞっとした。不意を付かれたのもあるが正直怖い。てか、黒い画面に赤文字って呪いのサイトとか、AVサイトでしか見ないし…
まぁ、こんなことはどうでもいい。大事なのはデスクトップには選択項目が4種類のあることだ。
校舎状態確認
レーダー
pt確認
会長はまず校舎状態確認の項目を選択した。
校舎被害状況0%
戦闘員被害状況0%
戦闘員とは俺ら生徒のことだろう。戦争が始まったらこれがどんどんあがっていくのか…
次に会長はレーダーの項目を選択した。
レーダーには3種類あった。索敵レーダー、モンスター探知レーダー、ミサイル探知レーダー。どれも異常は無かった。
pt確認はだいたいの予想がついたので特に見なかった。次にMailを確認した。これは他校との連絡手段だろう。そして、ため息をついた会長が口を開き話し始めた。
「さて、どうしましょうね。この状況、本当に戦うのかしら…」
その問いに答えたのは篠宮半蔵副会長だ。
「今の状況を見る限り、ドッキリとかテレビ番組とかではないですね、先ほど銃を見てきましたけど本物でした。しかも、多種多様な個人用火器がありました。ね、幹彦君?」
「そうなの?幹彦君?」
ポニーテールの会長が首を斜めにしてこちらを見つめている。
「はい、先ほど篠宮先輩と武器庫を見てきました。かなりいい武器もありました。それに、防弾服と盾が人数分ありました。」
「1200人はいるのよ?そんなにあったの?」
「はい、間違いなくありました。数えましたので。」
「そう…ご苦労様」
「か、会長!大変です!」
俺たちの会話に割り込んできたのは千葉心美だ。
「どうしたの?心美ちゃん?」
「宣戦布告です!第三東中からです!」
「隣の学校よね?」
「はい、ここから1.5kmの所にあります。」
会長は渋い顔をした。どうするか考えているのだろう。戦うか、戦わないか。ここの選択は非常に重要だ。1200人の命がかかっている。だが、迷っている時間はない。戦うしかないのだ。
「やりましょう。幹彦君、男子生徒を校庭に集めて頂戴。射撃訓練を行います。女子は武器庫に、今回の戦闘は男子のみで行い、女子生徒はサポートにまわります。」
的確な判断だ。女子生徒が戦えるはずがない。時間をおいて、訓練を積んでから女子も戦闘に参加させるべきだろう。
「はい!わかりました!」
そんな事を考えながら俺はパソコン室の隣にある放送室に向かい、会長の言葉を生徒に伝えた。そして俺は一言付け加えた。
「みなさん、死にたくないなら戦って下さい。」