ショッピング&ファイティング
現在、400人弱の人間が服屋を目指し徒歩で移動している。最初はバスを使うなどの案が出たが鍵が見つからないので断念した。
幹彦と2人の戦闘員を先頭にし400人が後をついていき、最後尾に4人の戦闘員がついてくる。幹彦は黙り周囲に警戒の目を向けている。
2時間ほど歩いてやっと服屋に着いた。とてもデカイ店でそこらのチェーン店の10倍はあるだろう。
そこでは自由行動を許し、下着や部屋着などの収集を指示した。この店の大きさなら1200人分の服もあるだろう、そう幹彦は思った。
そんな事を思い、ナイフを眺め暇を潰している時ある男に話しかけられた。
「丸山さん、ちょっといいですか?」
「はい?」
幹彦の目の前に立っているのは1年生の戦闘員だ。彼の名前は田中佑磨、キックボクシング部で積極的に戦闘員になった数少ない一人だ。
「帰ったらでいいんで少し、練習に付き合ってもらえませんか?スパーリング相手がいないもんで」
田中佑磨は学生のキックボクシング大会の全国チャンピオンでプロでも活躍している。
「あぁ、いいよ。相手になろう。」
「ありがとうございます!」
そんなたわいもない話をしている時だった。雫からの無線が入ったのだ。
「戦闘員の皆さんに通達です。モンスターをレーダーで捉えました。数は3体、空から低速で飛来して来ます。会敵後、各個撃破でお願いします」
「了解」
全員が声を揃えて言った。
「総員戦闘体制を取れ!β1、β2、β3、β4は店内に入り生徒の保護、α2、α3は俺と来い!」
幹彦はすぐに支持を出した。ちなみにα、βはコードネームのようなものだ。
幹彦と田中佑磨、もう一人の戦闘員(α3)は各自、銃を構えいつでも戦える状態だ。
幹彦は警戒を怠らずデザートイーグルを手に持ち空を眺める。次第に白い羽が幹彦の目に入る。だが、射程圏外だ。
幹彦を含め他の二人も諦めた時上空で二つの物体が二つの肉片に変わった、遅れて発砲音も聞こえる。心美がバレットM82で狙撃したのだ。
「幹彦く〜ん一匹は残しとくね」
「わかったよ、サンキューな心美」
心美の狙撃を逃れた一匹がかなり近くまで飛来して来た。
その一体は上半身は鳥、下半身は獣、神話などで出てくるグリフォンのような姿をしている。
幹彦はグリフォンの羽を狙いデザートイーグルの引き金を引く。轟音と共にグリフォンの羽を貫く弾丸、羽を失い落下するグリフォン、それを幹彦はなんの感情もなくただ見つめていた。
そんな時、田中佑磨が突然おかしなことをいい始めた。
「丸山さん、アイツ俺にもらえませんか?」
「本気で言っているのか?相手はモンスターだぞ?」
「マジですよ、力試しです。」
田中佑磨はプロのキックボクサーとは言えまだ高校一年生だ。それに強いと言っても人間が基準の話、相手はモンスター、魔物なのだ。正直幹彦は迷った。田中佑磨の力を信じ戦わせるべきか、それとも自分が処理するべきなのか。
幹彦はデザートイーグルをそっとホルスターにしまった。田中佑磨を信じグリフォンと戦わせる事に決めたのだ。幹彦は彼が死んだ時のことまで考えたが、その時は自己責任、それが戦争であって殺し合いだ。
「いいだろう、好きにしろ。ただ、死ぬなよ」
「了解です!」
そう佑磨が頷き、幹彦は後ろに下がる。
佑磨はアサルトライフルのストックを肩に当てグリフォンに照準を合わせた。グリフォンは無言で佑磨を睨んでいる。そしてグリフォンは佑磨めがけて突進した。佑磨はアサルトライフルの引き金を引き、全弾撃ちつくす。
残念ながらグリフォンにチャンダンしたのは6発、ダメージは皆無に近い。
そんな事を気にせず、佑磨はコンバットナイフを腰の辺りから引き抜き、戦闘体制を取る。この間もグリフォンは依然接近中、そして佑磨は近接戦闘に持ち込むためグリフォンめがけて走り出す。お互いの距離は約10m、その時、グリフォンが宙に舞った。正しくは跳ねたのだ、そして落下の勢いを使って佑磨に前足を叩き込む。その攻撃を間一髪避ける佑磨、そしてナイフをグリフォンの脚に刺す、間髪入れずに左手にハンドガンを握りグリフォンの頭に撃ち込む。
見事全弾命中しグリフォンはその場に倒れる。佑磨も疲れたのかその場に片膝を着き息を切らしている。
ゆっくり幹彦が歩み寄っていく。
「大丈夫か?田中」
「はぁ、はぁ、はい、問題ないです」
「立てるか?」
「はい」
ゆっくり佑磨は立ち上がる。そして幹彦の後をついていく。
その日これ以降何事もなく買い物をすることができ、全員生還することができた。そして2年、1年の買い物も何事もなく済ませることができた。ただ問題が一つ、新たに宣戦布告があったことだ。それに備え俺や心美他の戦闘員は準備を始めている。一つ戦いが終わればまた次の戦いが待っている。この連鎖をおわらせることができるのか、幹彦はそう考えていた。そして終わった後、自分達はどうなるのか、それは終わってからしかわからない、生き残るしかないそう幹彦は考えながら装備を整えて戦場に向かう。