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phase1-1

 碁盤のように画一化された街の中を、一人の少女が駆けていた。


 少女は何かを恐れるように、しきりに後ろを見ながら全力で走っている。その体躯は細く、全速力でのマラソンに耐えられるような筋力も体力もありそうになかったが、しかしいつまでたっても息切れする気配はなかった。


 しばらくして、身体的というよりも精神的な疲労で、少女はビルの壁にへたりこむ。


――これが、『世界』なのか……。


 少女は、恐ろしくてたまらないというように自分の体をかき抱いた。


 けれど、その顔には危うい快楽を伴った笑みが浮かんでいた。まるで、社会に反抗することで安息を得る不良少年のような。


 ここから先へ進んだら、もう後戻りはできない。けれど、それができるのはこの『力』を持った自分だけで、その機会も今しかなかった。戻ったとして、こんなものを持っていることが知られたら、〈街〉の軍隊に何をされるかわからない。


 心の中で足踏みをしている自分に対して、少女は自嘲的な笑みを浮かべた。


 すでに自分は、越えてはいけない一線を越えてしまっているのだ。戻ったらやつらに殺される。それが、肉体的な意味ではないとしても。


 陸続きにある街を見て、少女は顔をほころばせた。


 少し前まで、この先に街があることすら見ることができなかったのに。


 本当に、『力』を手に入れることができたのだ。


 少女は立ち上がり、そこにある『壁』に触れた。大気でできているような、この目に見えない障壁は、この地区からたやすく脱出できないように設置されている。この地区に住んでいる人間が意識していないだけで、ここはある意味牢獄なのだ。


 『力』を使う。


 少女の手が支えを失ったように前へと押し出された。


 『壁』が消えたことに対して、隠せない喜びを顔に張り付ける。少女は用心深く後ろを振り返りながら、そこからさらに走って夜の暗闇に消えていった。







 目を開けると、額がぶつかりそうなほどの距離に少女の顔があった。


 最初に誰の顔であるかを知って、続いて自分が座ったまま腕を枕に突っ伏していたことに思い至る。


「ふわぁ!」


 反射的に、紗世(さよ)は跳ねるような勢いで上体を反らした。


 なんてこと! 友達を勉強会に誘っておきながら、その友達の目の前でうたた寝してしまうなんて!


「うむ、いいリアクションをご苦労」


 その友人、理奈(りな)はくすくすと笑っている。


「うう、恥ずかしい……」


 紗世は言葉通り恥ずかしさに顔を染めて、俯く。この前理奈に貸してもらった映画のデータがあまりにも衝撃的で、ついつい夜更かしして見てしまったのだ。来週に控えた定期考査のために学校で友人とともに勉強会を開くのはもはや習慣となっていて、睡眠が足りないことなど考えていなかった。


 ちらりと理奈の開いているノートを見やる。同時進行でやっていて、紗世がうたた寝していただけ理奈のほうが進んでいるはずなのだけれど、その進み具合は紗世とほとんど変わっていなかった。


「ど、どのぐらい寝てた?」


「だいたい二十分ぐらい。表情を見ている限りは、夢を見始めてたよ」


 即答だった。ということは、理奈は紗世が寝ている所をずっと見ていたのだ。紗世はますます恥ずかしさに身を縮めた。


「眠ることは人間の三大欲求の一つ。そんなに恥ずかしがることはない」


 そんな紗世の様子に、理奈は眉一つ動かさずフォローを入れる。慰めているのか、そうでないのか今一つ判断できない顔だった。


「そう言われても……」


 言いかけて、やめる。理奈はそういった羞恥とかの感情にほとんど理解を示さないし、第一そんな場面がこの少女に存在した試しがないのだから。


 端的に言って、瀬戸(せと)理奈(りな)という人間は天才だった。


 大抵のことは一人でできてしまって、教師陣が彼女の世話をやいたことなど見たことがない。コード技術によって知識を直接脳にインストールできる時代とはいえ、そうして得た知識を脳になじませるのにはある程度時間がかかる。しかし、理奈はどんな知識をインストールしても一瞬でそれを自分のものとしてしまうのだ。


 本当なら、こうしてわざわざ勉強する必要なんてないのかもしれない。事実、クラスでもかなり優秀な成績を持っている紗世にも、全く引けをとっていないのだから。


 けれど、紗世はそんな理奈のことを少し心配していた。


 というのも、理奈には紗世以外、友達と呼べるほどのつきあいのある人間がいないからだ。


「隣町から引っ越してきました。瀬戸理奈です。よろしくおねがいします」


 なんの変哲もない自己紹介をして、今年の春転校してきた理奈は、美少女とよんで差し支えない見た目と相まって、当然ながらクラスのなかでは驚異的に目立った。男女問わず彼女に話しかける人は多くて、けれど、最初のコンタクト以降、そのまま関係が続く者もいなかった。


 べつに口が悪い訳じゃない。ちょっと素っ気ないような性格ではあるけれど、率先して人を遠ざけるような雰囲気もなかった。


 けれど、彼女と接したことのある人は、皆こう感じただろう。「全身をくまなくスキャンされている気がする」と。


 理奈は、意識してかそうでないのか、その実感を接した相手に対して植え付けてしまうのだ。体験したことはないけれど、警察で取り調べを受けているときよりも、理奈と接しているときのほうがずっと落ち着かないに違いなかった。


 紗世は、理奈が過去に何らかのトラウマを抱えていて、どうしても人を詮索してしまうクセがあるのだと推測していた。まさか目の前の人間をスキャンするようなコードは持っていないだろうから、それは精神的な問題のはずだった。


「昨日、私が貸した映画データを見たの?」


 紗世の沈黙をどう受け取ったのか、理奈は急に話題を変えた。


「うん……。でもあれ、すっごく古い映画だよね。いつの?」


 答えると、理奈はくすりと笑った。


「やっぱり、見たんだ。紗世ならきっと、最後まで見ると思ってた」


「う……そこまで予想を……。うん、でも、確かに理奈の言うとおりだったよ。怖いもの見たさと言うか……なんというか……」


 数日前に渡されたその映画は、国家元首がすごくスパルタ主義みたいな人で、あれよあれよと言う間に国民を戦争に引きずっていってしまう、というような内容だった。そんな国家元首にどうして人々が付いていってしまうのかとても不思議で、なんだか魔術をみせられているような感覚になった。


「そう。あれは、二世紀くらい前の映画だよ。世界が〈情報化〉される前の時代は、あんなことがざらにあった。国家とかいう単位だけでなくて、カルトとか、テロ組織とかではあたりまえにあったことみたいだよ」


 こんな風に説明する理奈には目には、どこかおもちゃを自慢するような子供っぽい輝きがある。紗世以外にはほとんど見せない表情だ。友達としてつきあい始めた時に感じていた全身をスキャンされる感覚も今ではほとんどなくて、紗世はそれが理奈からの信用だと思っていた。


 そうこうしているうちに、学校の下校時刻を知らせるチャイムが鳴り響く。二人はノートと鞄に仕舞込むと、そろって学校の門を出た。


「紗世はさ、あの映画を見て、どう思った?」


 理奈は帰り際、先導するように紗世に背中を向け、聞いてきた。初夏の湿気を帯びてきた風が、肩口で切りそろえられている理奈の髪をそっと撫でていく。


「どうって……。ええと、なんていうか、不思議だった。どうしてあんな人に人々が付いていってしまうのかなって。だって、今道ばたであんなふうに演説したら、どう考えても不審者扱いだよ」


 紗世の答えに、理奈は満足げに頷く。


「そう。確かに、あんな風に演説するだけででは人々は付いてこない。今の私たちは、頼るべきものがすでにある」


 それから、理奈は心底楽しそうな笑みを浮かべて、続ける。


「ねえ理奈、ああいうふうに人々を操ることをね、昔の人は洗脳って言ったんだよ。扇動と洗脳。笑っちゃうよね、やることも似てて発音も近いんだから。それでね、洗脳された人々は、虐殺だって、革命だって簡単に起こすことができたんだ。どんな政治家も、数の力の前には無力。ようは、やるかやらないか、そういう問題だったんだから」


 映画でみたことを思いだしつつ、理奈が言ったことを想像しようとする。そうして鳥肌がたつまで、二秒とかからなかった。


 いつのまにか、理奈の笑みに邪悪なものが混じり始める。


「それが……二世紀前の世界だったの?」


「ううん。実際によくあったのは、そのさらに半世紀前。とは言っても、洗脳は個人でもやろうと思えばやることができた。すごい人はね、一人で三つの家族を奴隷みたいに扱ってたらしいよ」


 いくらなんでも、悪趣味だなと思った。とはいえ、理奈がこんな風にえげつない話をするのは、今に始まったことじゃない。でも、どうして理奈はこんなことばかり知っているのだろう。


「理奈は将来、何になりたいの?」


 だから紗世は話題を変えようとちょっと斜め上方向の質問をしたのだけれど、理奈はよく聞いてくれましたとばかりに笑った。さっきの話をしているときと劣らない。邪悪な笑みだった。


「革命家。そんなふうになれたら、きっと楽しいと思うんだ」


 ちょうど、十字路だった。理奈はそこが自分のステージだとでもいうように中央を陣取って、紗世に対峙する。


 紗世はてっきり、歴史学者とか心理学者みたいな職種を答えるのだと思っていたから、返す言葉がなくて、押し黙る。


 理奈はおもむろに手を宙に差し出す。すると、文字列のような形をした光が理奈の手から湧き出す。それらが一カ所に集まり、あっと言うまもなく工作用の小刀が出現した。


「こんな小刀だって、世界が〈情報化〉される前だったら革命の立役者になりえた。それが木を削るか、人の命を削るかの違いであるだけで」


 理奈は、その小刀を両手で持ち、しっかりと構えると、腰だめで紗世に向かって突っ込んできた。


「……え?」


 突然のことに、紗世はなんの反応もできず、ただ悲鳴にもならない気の抜けた声を出す。そうしているうちに、理奈の小刀が吸い込まれるように紗世の腹へと突き刺さった。


 理奈の体重と走る速度がエネルギーとして与えられた小刀は、しかし、紗世の腹に穴を開けるに至らず、紗世の制服に確かに突き刺さって、そこで止まっていた。


 紗世が目を丸くしていると、理奈は唄うような朗らかさで語った。


「この世界で、私たちに保証されている『生存権』がなければ、私たちはなんの障害もなく、相手に傷害を負わせることができる。それができないのは、ひとえにあの塔、〈エーテルタワー〉がそうやって世界を定義しているから……」


 理奈の言葉につられて、紗世は遠く東にそびえる塔を見上げた。この〈街〉のシンボルであり、〈街〉そのものである塔を。


「私はね、退屈だなって思ったんだ。この世界には、人間のすべての感覚が実際に味わえる訳じゃない。苦痛、それが、この世界から失われたもの。気が狂ってしまいそうな痛みは、私たちには存在しない」


 言いながら、理奈は小刀を紗世に見せつけるようにしてねじり込む。紗世は傷こそ負わないけれど、小刀は容赦なく紗世の制服に小さな穴を開けた。


「理奈……」


 理奈が何をしたいのか、わからなかった。紗世はただただ、驚きでおろおろすることしかできなかった。


 そんな紗世の反応に、理奈はいたずらをして怒られた子供のようにぺろっと舌をだし、逃げるようにその場を走り去った。まさにいたずらが成功した子供のような、うれしそうな背中だった。


 帰り際にクラスメイトを小刀で刺した女の子の背中を呆然と見つめながら、紗世は不意に、この十字路が自分の家と理奈の家への分かれ道であることを思い至った。







 理奈はいったい、何をしたかったのだろう。


 紗世は自分の部屋で穴の開いてしまった制服を市販のコードによる修復プログラムで直しながら、脈理も曖昧に考えていた。


 そういえば、理奈はどうしてクラスメイトに「自分がスキャンされている」というような感覚を与えてしまうのだろう。このセカイでは、虐待とか、暴行事件の類はあまり意味をなさない。あのとき理奈が紗世を刺しても紗世には傷一つつかなかったように、『生存権』は人への暴力が人を傷つけることを許さない。紗世が学校で習った限りでは、人を傷つけるようなほどのエネルギーが人体に進入した場合、〈エーテルタワー〉がそのエネルギーをコード化し、消し去ってしまうのだから。


 そう、コードだ。


 理奈が言っていたのは、コードに対する嫌悪そのものなのではないか。


 紗世は繕い終わった制服をベッドに放って、勉強机に向かう。紗世が宙に手をかざすと、そこに文字と枠だけが浮かぶモニターのようなものが現れた。紗世はいくつかある項目から『パソコン』を選び、決定ボタンを押す。


 すると、机の上に文字列の形をした光が溢れ、瞬きをする間にノート型のコンピュータが現れる。




――こーどぎじゅつ【コード技術】

 物質やエネルギーを、質量と体積がゼロ、そして時間の影響を受けない情報媒体『コード』に変換することによって、運搬、保有、制御を効率化するために二十二世紀末に発展した技術。




 それこそ、紗世たちが毎日お世話になっている技術だった。これも学校で教わった受け売りだけれど。


 紗世が行ったのは、机に付いているコード保有装置からコード化されたパソコンを元に戻しただけ。日常的に行っていることだった。


 紗世はすでに起動状態になっているそれを操作し、インターネットで「コードに対する嫌悪」と検索した。


 コードを受け入れられないなんて社会のクズだよね。などという心ない発言の行われるスレッドは無視し、紗世は医学的にそのことを紹介するサイトを探した。


 どうやら、人間には他人を、そうでなくても自分を傷つけようとする欲求があるらしい。というか、動物だってそうだ。重度のストレスを感じた動物は、自分の体を噛んでしまう。十代の精神が不安定な時期では、人によっては自分を傷つけることで精神の安定をはかろうとすることがある。しかし、その欲求が満たされないのが、この社会だ。


 紗世が三十分かけて捜し当てたサイトには、おおまかにそのようなことが書いてあった。


 人によって個人差はあるが、重要なのは自分に傷跡が残ることや、血を流すことではなく、痛みを感じることなのだという。しかし、このセカイの『生存権』はそれを許さない。故に、痛みを感じることのできないセカイを憎んでしまうのだ。


 そこまで読み込んで、紗世は首をかしげた。理奈のあの態度は、これとは少し違う気がする。理奈はこのセカイに対して否定に近いことを言っていたけれど、それは苦しみではなかった。彼女は、何かを喜んでいた。


 それから紗世は一時間近く検索ワードを変えて調べてみたけれど、理奈の言動の意味を捜し当てることはできなかった。







 翌朝、紗世は普段通りに学校への通学路を消化していた。その行為自体は本当にいつも通りだったけれど、考えていることだけはそうではなかった。


 理奈はどうしてあんなことをしたのか。


 その問いは枠のないジグソーパズルのように形のない疑問を生み出し続け、どんな答えを望んでいるかすら分からない。帰り際、友人に工作用の小刀で刺されるようなショッキングに過ぎる出来事が自分を混乱させているのかもしれなかった。


「おっはよー。どーしたの? そんなに暗い顔して」


 クラスメイトの女の子がそうやって声をかけてきたのは、紗世が今日どうやって理奈に顔を合わせようかと思い悩み始めた頃だった。


「おはよう、(さつき)。ええと、ちょっとね……」


「あ、あれでしょ。また理奈ちゃんのこと?」


 一発で言い当てられて、紗世は目を丸くした。そんなに分かりやすい表情をしていたのだろうか。


「う、うん。まあ、そう。実はね……」


 さすがに帰り際に刺されたとは言いがたい。紗世はこれまで理奈が自分に話したことの一部と、もしかしたら理奈がコードに対して反感を持っているのかもしれないことを話した。


 このタイミングで彼女が話しかけてきたのは、紗世にとって幸運だった。この少女は、何かと抱え込みやすい紗世から、誘導するでもなくいつの間にか話を聞き出してしまう。


「なるほどねえ。あたしも理奈ちゃんとは話したことはあるけど、正直言って気持ち悪かったし……。ま、でもあたしたちは高校生なのよ? そのぐらい変わった子がいても不思議じゃないでしょ。医者志望の紗世としては、見過ごせないんだろうけどね」


「うん。でもさ、もし本当にコードが嫌いだったら、それってすっごく辛いことだと思う」


 そう言って紗世が俯くと、彼女はその肩をたたいて笑った。


「そう思い詰めるんじゃないの。たとえコードが嫌いになっても、たぶん、理奈ちゃんはいつものようにあなたと接すると思うわよ。あなたから話を聞く限り、あの子はかなりマイペースな人みたいだから。自分の中で折り合いをつけるまで、何を言っても無駄でしょ」


 そう言って彼女はその笑みをいだずらなものに変えて、ちいさくなっている紗世の歩幅をのばすように引っ張っていく。皐の少しくすんだ金色の髪がその勢いで空を舞うのを、紗世はなんだか不思議な気分で見た。


 そういえば、そうだった。皐は将来、カウンセラーとかを目指していたんだっけ。その言動は、経験ではなく、知識的なものに裏打ちされていた。


 G地区の高等学校のカリキュラムは、かなり自由だ。基本的な科目――主に教養や情操教育のためだが――は全員が受講するが、それ以外の職業的なものは、個人で自由に受けることができる。


 紗世だって医師を目指しているから、学生用の教育用端末を使って毎日知識を詰め込んでいる。


 教わるのではなく、「詰め込む」のだ。紗世たちの脳内に形成されているコード受容網、通称『パーソナル・ストレージ』に、ある種のパターンを書き込むことによって。


 そうすることで、紗世は医療に関する「完全な記憶」と、あたかも正式な医学の授業を受け、そしてそれを完全に自分のものとした脳のような神経回路のパターンを得ることができる。


 弁護士である紗世の母親や、医師であった父親だって、そういった教育を受けてきたのだし、この友人が紗世の話を一言も挟まずに熱心に聞くという、おおよそ十六歳の少女らしくない対応ができたのもそのおかげだろう。



「……と。そういえば今日って何日だったっけ?」


 不意に彼女が歩調を緩め、聞いてくる。今日は何か特別な日だっただろうか。彼女がこんな風に聞いてくるのは、今日が特別な日である証拠だった。


「えっと……」


 紗世が考えあぐねていると、彼女は仕方ないとばかりに口を開き、ついでにからかおうとしたところで、しかしそれは無用になった。


「紗世! 誕生日おめでとう!」


 校門で待ちかまえていた少女、理奈が人目を引くのも構わず、甲高い声で紗世を祝福する。思わず紗世が絶句するほどの、大胆な誕生日宣言だった。


 七月七日。この日は星川(ほしかわ)紗世(さよ)という人間にとって、十七回目の誕生日だった。





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