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奇妙な短編

パラレルワールド

作者: ショッピー


 東風翔太ひがしかぜしょうたは教室で小説を読んでいた。

パラレルワールドを題材にしたホラー小説。

パラレルワールドとは自分が生きている現実のほかに無数に存在する別の世界。生きている住人は全く同じ。しかし何かが違う。

別の世界の自分は何かのきっかけで死んでいるかもしれない。彼女がいるかもしれない。偏差値の高い高校へ通っているかもしれない。


 翔太は本を閉じた。パラレルワールドについては興味があったので図書館で借りてきた。

もっと読みたかったが夏休み前の注意点を述べるために担任がやってきたので急いで隠した。


 「えー。夏休みだからといってはめをはずしすぎないように。宿題もしっかりやるように」担任の長い話が終わった。

 解散になると生徒達から歓喜の声が上がった。

これからは学校のしがらみから解放される。しかし翔太はあまりうれしくなかった。

あの人に会えないからだ。


 「翔太!やっと夏休み始まったな。今からトラヤ行こうぜ」翔太の親友の山崎秦やまざきしんが話しかけてきた。その隣には同じく親友の加賀桐吾かがとうごもいた。

「おう。いいな」


 三人は自転車に乗り、暑い坂を下った。

「トラヤ」は町のはずれにあった。

明らかに築何十年もたったような古い建物だ。色々なお菓子やカードが売っている駄菓子屋だが客は殆どいない。


 翔太と秦と桐吾は暖簾を潜り抜け中に入った。

いつものように笑顔の素敵なおばあさんが出迎えてくれる。

「おばちゃん。アイスちょーだい」秦は早速言った。

「はいよ」おばあさんはにこやかに頷いてアイスを取り出した。


 ふたりの目はアイスクリームに奪われているが翔太は店の奥にいる人物に目が釘付けになった。

そこには翔太が片思いしている黒崎陽子くろさきようこがいた。

髪を掻き分けながら駄菓子を見ていた。

自分が通っている店にいるなんて。翔太はなぜか優越感を感じた。


 「く、黒崎さん」思わずつぶやいていた。

それに気づいた秦と桐吾はにやりとした。

「これは邪魔しちゃいけないな。桐吾」

「そうだね。お熱いとこを申し訳ない」

そう言うと二人はアイスを受け取り、自転車で行ってしまった。


 (余計気まずいじゃないか!)翔太は真っ赤になっていた。

「あっ。東風君」陽子が微笑んだ。

「黒崎さんも来るんだね。ここ」翔太は目を合わせれなかった。

「うん。東風君もよく来るの?」

「うん」


 しばらく沈黙が続いたが、翔太が切り出した。

「ア、アイスを買っていかない?」必死に声を出した。

「いいね」陽子は了承してくれた。

これまでは遠くから見ているしかなかったのにいっしょにアイスが食べられるなんて天にも昇る気持ちだ。


 翔太は陽子と同じソーダ味のスティックアイスを買い、並んで歩いた。

体の熱でアイスが溶けていきそうだ。


「おいしいね」翔太が言う。

「うん」

塀が立ち並ぶ住宅街を歩く。蝉の音が耳の中でスパークしていた。


「夏休み、ど、どこか行かない?」前から言いたかったことを言った。

「うん。行こう」陽子は笑った。

その言葉で一気に緊張が解けた。

多分今までで一番幸せだと思う。


 交差点を曲がった瞬間、一台の車が翔太に向かってきた。

すごいスピードだ。


 ドンッという音が響き渡り、翔太の体が吹っ飛ばされた。そして陽子の悲鳴が聞こえる。

ああ、死ぬってこういう事なんだ。



 目覚めると保健室の中にいた。

何故だ。オレは車に引かれたんじゃないのか?

なんで保健室にいる?


様々な疑問が頭を駆け巡る。


「翔太君、目が覚めたのね」横から声がする。見ると陽子が丸椅子に座っていた。

「黒崎さん。オレは死んだんじゃ・・・」

陽子は訳が分からないというように首をかしげた。

「何言ってんの?翔太君が終業式の途中におなかが痛いって言うから保健室に来たんだよ」陽子は笑った。


 それこそ意味が解らなかった。どういう事なんだ。

オレは車に引かれたんだぞ。


 「もうおなか痛くない?」陽子が聞いてくる。

「うん」


「じゃあ。もう行きましょうか。夕方だし」


 帰る途中、翔太は驚愕した。

街並みががらりと変わっているからだった。

(どうしてだ?ここは田舎町だったはずだぞ)

丘の上にある学校から見渡すと山や田んぼにあふれているはずだった。

しかし、今翔太が見ているのはビルが立ち並ぶまるで東京のような風景だった。大きなタワーまで建っていた。


 ここで翔太は気が付いた。

自分はパラレルワールドに迷い込んでしまったんだと。

ここは前翔太が住んでいたところとは違う世界。文明が少し発達した世界だったのだ。

死んだことによってここへきてしまったのだ。


 世界の変貌に驚いている翔太に陽子が話しかけた。

「どうしたの。何かあった?」

「ううん。何でもない。」

「それならいいけど」

「この後、少しよりたいところがあるんだけど」翔太は真剣な表情で言った。

「わかった」


二人は目的の場所に向かった。

以前とは全く違う街並みに戸惑いながらも道筋は同じだったので何とか進めた。

途中、入ったこともないコンビニに入り、新聞を買った。


 日付は前の世界の時と同じ七月二十日。

新聞の記事にでてくる議員も同じだ。

前の世界で起こっていた事件が殆どだったが、この町で事件が起こっているという記事は見覚えがなかった。

何でもこの町に殺人鬼が潜んでいるようだ。目的はないようで愉快犯らしい。

いままで十人の人が被害にあっている。

すこし寒気がした。こんな穏やかな町で、いままで事件など起こったことがなかったのに。


 思った通り、トラヤは跡形もなかった。

その代り蔵杉公園というさびれた公園があった。

この世界にはトラヤという店は初めから存在しなかったんだろう。


「ここに、トラヤっていう店がなかった?」翔太は恐る恐る聞いてみた。

「そんな店なかったわよ」

あなたはさっきまでその店にいたのに・・・。

何もかも変わってしまったのかと思うと涙がでてきた。


 「どうしたの?」

「何でもない。ちょっと勘違いしてたみたい」


空を見上げると月が出てきた。


「今日は付き合ってくれてありがとう」翔太は陽子に言った。

「いいよ。私も楽しかった」

「じゃあ、また」


「待って」

行こうとする翔太を陽子が呼び止めた。


「話があるの」

「何?」翔太はどきりとした。今までに見たことが無い表情だったからだ。


 「私」そう言うと決心を固めたように頷いた。

「翔太君の事が好きなの」

「今なんて・・・」自分の耳が信じられなかった。

「付き合ってください」陽子は真っ赤になって言った。


 オレが今までずっと好きだった陽子ちゃんに告白されるなんて。

夢にも思っていなかった。


パラレルワールドに来て、初めて良いことが起きた。


 「オレも、実は好きだったんだ」パラレルワールドの陽子ちゃんでもいい。今まで好きだった陽子ちゃんでもいい。陽子ちゃんと付き合いたい。


 「本当に?」陽子は興奮したように言った。そして万歳のポーズをした。

「大好きだ」


二人は抱き合った。

陽子は涙を流しているようだった。

翔太の胸が濡れた。でも心地よかった。


 「また明日」翔太が言った。

「ごめん。明日はちょっと用事があるんだ」

「うん。じゃあまた電話するよ」



 翔太は家に帰った。

家の形は変わっていなく、元の場所に会った。

母も前の世界と同じだった。


 翔太は嬉しくてしょうがなかった。前の世界に戻りたいという気持ちが気持ちはあるが、ここでの生活も楽しそうだ。陽子ちゃんと付き合うことができた。



 次の日の夜、翔太は夜中に外を歩いた。コンビニで夜食を買いたかったのだ。

陽子ちゃんに会えなかったのが残念だった。


 暗い住宅街に人が立っていた。

翔太は目を見開いた。

見間違いでなければその人物はナイフのようなものを持っている。


 しかもその横には人が倒れている。

大量の血を流して。


 だんだんとナイフを持っている人物の正体が見えてきた。

ショックで気を失いそうだった。

ナイフを持っていたのは陽子だった。


「何をやっているんだ」翔太は声を荒げた。


「あーあ。ばれちゃったか」陽子はナイフを拭いた。

月明かりに照らされたその顔は怪物そのものだった。


 このパラレルワールドで翔太に告白をした陽子は殺人鬼だった。


(オレはこんな女と付き合うことになっていたのか)翔太の額から大量に汗が流れた。


「見られちゃったら仕方ないね。私、刑務所入りたくないもん」ナイフを持った陽子がこちらへ近づいてくる。

翔太の本能が逃げろと言っていた。

だが、体が動かない。


 陽子は笑っている。

「これで十二人目だ。」

「翔太君とはうまくやっていけそうだったのにな」

血の色のワンピースを着た悪魔が翔太の前に来た。


「ばいばい」

翔太はまた別の世界に旅立つのだった。




 お待たせしました。最近忙しくて小説書けませんでした。

自分はパラレルワールドが大好きで、今回はそれを題材にして書いてみました。あまりパラレルワールドらしさが出ていないかもしれませんが満足しています。

書いていて楽しかったのでまたSFテイストの話を書きたいです。

感想、アドバイスお待ちしています。

ではでは

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― 新着の感想 ―
[一言]  どうも、水霧です。  パラレルワールドとホラーを混ぜてきましたか。先を越されちゃいましたね…。しかも面白くて悔しいです。  個人的に、惜しいなと思いました。二つの要素を組み合わせたのなら…
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