表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジキミヒト  作者: ユッキング加賀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/9

第5巻、走り抜ける、はクロスなユニバース

前回のあらすじ3行。


「座標コードを入力した先の次元は極寒の一言。しかも主人公枠が殺害されたことで世界崩壊のタイムリミットが始まってしまう。ピッキピキだったよねー、色んなとこ」


「ボロ小屋で家系ラーメンを啜っていたら家主の雪女と遭遇し、流れで雪だるま作り対決が始まった。突然始まったからアレびっくりしちゃったよ。しかも自宅無くなっちゃったし。あと、一応わたしが勝ったので、後でアイスキャンディー奢ってもらいま〜す!当然3本ね♪」


「伝説の大妖怪『冬将軍』を雪女改めキネシスとの協力で退治。――そんで、わたしとアルくんは一心同体になって〜、別の世界へハネムーンなのでした!…ここってどう閉じるの?」「おいやめろキネシス!勝手にあらすじをイジるなぁぁぁー!」

(ランダムディメンション機能…。改良の余地、アリだな)

崩壊寸前だった極寒の世界から脱出のため勢いのままに使ったはいいが、相変わらず道中は酔った。

あれか?やはり乗り物なんか欲しいかもしれないな。以前読んだ〇ラえもんのタイムマシン的なアレ。



蒼い海、広い砂浜、白い雲。

ディメンションゲートの出口から転がり落ち、ヤシの木に頭を打ち付けたと思えば今度は上から実まで落ちて追い打ちを食らうも、それでもオフィスカジュアルを崩さない男ことアルジ・キミヒト。

「アルくん何やってんの、ほら。手貸してあげるから」

二回も被害を受けた頭をさすりながら冷たい手を握り、立ち上がる。

――――…ん?何で今触れたんだ。今は一心同体だし、見えたとて触れないハズ…。

「出る前に言ってたじゃん。『必要になったら氷で体作ってそれを操ればいいじゃないか』と…」

あ~、それか。しかも触ると考えていることがバレてしまうのも健在か。

「新技、アイスドールだよ!にしてもここ暑い…、暑くない?あぁ~かき氷とかどっかに無いかなぁ~」

あからさまに目配せして氷菓をおねだりしてくるこの雪女の名はキネシス。

深紅の帯と雪だるまの髪飾り、横から一本垂らしたおさげが個人的にチャームポイントで、雪色の着物を身に纏う銀髪の美少女。イェイイェイ。

(なんか勝手に自己紹介し始めたなおい)

「キネシス。折角だし、あそこの海の家みたいなとこで冷たいものでも見てみるか」

「やった」

アルジが指差すサーフボードと浮き輪が並んだ白い店舗に向かう。


「CLOSE……」

白い掛札の通り。外壁の塗装と同じ色なせいもあり紛らわしく、遠目では気付かなかった。

正直、此処がどの国かも分からんし、分かっていたとして所持金も故郷ブックワールドの通貨(ペジル)しか手元には無いし、営業していたところで詰んでいた。

「え゛っ゛。かき氷、食べられないの…」

この次元に来る前からまだ何も食べてなかった。

いつもなら主食としてあの自宅に出来た氷柱(つらら)を齧ってやり過ごしていたんだけど、あの日は出来が悪く、しかも冬将軍のせいで家屋はぺちゃんこと来た。

「――アイスキャンディーとか、どうよ。お口に召すかは知らんけど」

唐突にアルくんが聞いてくる。

キャストパスで開いていたグルメ召喚アプリ『サモンデリシャス』内のカラフルな棒の写真を見せてきたのだが、これがアイスキャンディーか…。


人のいない岩陰で水平線を眺めながら、生成された長方形の青いアイスキャンディーなるものを舐めてみた。

「うま……」

初めて味わう、ただの氷には無かったスッキリ爽やかな清涼感。感動のあまり、岩に腰掛けながら足をバタつかせてしまう。

「ソーダ味。たまにガリガリ行きたくなるんだよな…。ありゃ、今回もか」

アルくんのアイスの串を見るとハの字が見えていた。

「ほれ」

アタまで出ているアイスを自慢すると、やるな~と感心の声と同時に紙吹雪のホログラムが左手で握っていた端末からパっと飛び出す。

「当たったみたいだけど、もう一本いっとく?」

「いただきます」

一本目の残りを頬張り、二本目に手を伸ばしてきた。無邪気だなぁ。

常夏っぽいが、隣の存在もあってかひんやりとした空気に包まれている、気がする。


初めて食べたけどアイス美味しいし、何だかここ静かでのんびりしてるし。アルくんには変な復讐だかなんて忘れて、このまま一生わたしだけの隣にいて欲しいと我儘を願っている自分が居る。


アルくん一点を見つめる瞳が紫色に濁り始めた、その時だった。

「――カメェーーン……」

突然、静寂が破られた。

視線をやると、海上に緑色のバイクのような何かが浮かんでいる。すると、此方の存在に気が付いたのか先ほど以上の奇声を上げながら激しい水飛沫を上げて接近してくる。

「カメェェーーーーーン!!」

「何じゃこのバケモンは!?あっぶねえな!」

浜辺に到着したそれ。

「ハマヤネーーーーーン!!」

「いちいちリアクションすな!!」

こんなんじゃ意思疎通も何も…、シートカバーと思われる亀の甲羅がだいぶ個性的な()()バイクと意思疎通?

(オレはさっきから何を言っているんだ…)

「カメェ~ン、ハァ~マハマハマ。カーメ、カメ。カメェェーーン!」

「???????????????」

ブック語以外は全自動で翻訳してくれるキャストドライバー内蔵のランゲージチェンジャーが貫通されるとは、先が思いやられるなこれは…。




海中に沈みゆく人影。

「あれはニンゲンかな?むかし絵本で読んだのとだいぶ違うけど…。でも、ニンゲンは海底では死ぬになります。生きるになるには地上へ連れていくをしなくきゃ!」


「おらヤシの実持ってこーい!」

「カメェェーーン!!」

アルくん、すっかりあの亀二輪を手懐けてる…。

浜辺に車輪跡を増産する一人と一台。


バイク亀が器用に前輪でドリブルして拾ってきたところを、行けるだろと思ったのか今度は海へ向けてぶん投げた。

「い゛っっっっっっっっ」

聞こえる筈のない方向から少女のような、だがぶつけたらしく潰したような低い声。

(もしやダイバーとか居たのか…!?)

突然、脳内を駆け巡る()()()()()のワード。

うわぁ、いまは金銭絡みのトラブルは避けたかったんだけどなあ…。

そう思っていると目の前の水面から紫がかった赤毛の頭が飛び出してきた。

「すまん!まさか人が居たなんて知らず…」

「今すっごく頭痛い、になってます!ケジメで小指詰める、になるです!」

――――に、()()

蒼い世界から此方を涙目で睨む、出来立てのたんこぶが痛々しい真っ赤な瞳の怒り心頭人魚娘。

赤紫色のサイドポニーヘア、歳不相応に豊満な胸元の淡く青い貝殻のビキニとイヤリングが可憐さを引き立てているが、真珠のような文字通り真っ白な肌とその先にある深い青から明るい水色へのグラデーションを見せる無数の鱗が異形感を醸し出している。興奮しているせいか、尾びれがペチペチと海面で音を立てている。

…………ていうか、意識が無さそうな男性の脚を細い腕で掴んで引き摺ってきているのだが。

「カメェェーーン!!!」

男を見て何やら亀バイクが興奮している。短時間で感情を読み取れるようになってしまったのが悔しい。

「ソイツ、助けるをしてください」


「ごめん痛かったよね~。はい、犯人が用意してくれたこの防水絆創膏なら海の中でも安心だよ」

「ありがとうお姉ちゃん!優しい、だね!」

夕暮れ。オレンジに染まる海を横目に、岩場に座る人魚はキネシスに応急処置として患部に絆創膏を貼ってもらい、上からそっと撫でて冷やしている。

一方の氷嚢(ひょうのう)を額に載せられた顎髭をうっすら生やしている青年だが、たった今目を覚ました。

「ここは一体……。確か、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

えっ、亀に乗るって……。いや、おいおい。

「お前まさか、浦島太郎かよ!?」

木の幹の色をそのまま衣服に落とし込んだような質素な着物と草履、木の棒から削り出したような生きるための道具として傍らに在る釣竿が男をその昔話の主人公であることに納得感を出している。

「そうだが。ところで何故ボクの名前を知っているんだ?」

穏やか、だがそれでいて影のある眼差しを氷嚢片手に此方へ向けてきた。

「本で読んだからな」

自身を浦島だと認めた同い年のようなその男は、顎鬚を人差し指と親指で挟むように弄る仕草を見せる。

さすがに困惑しているな。最初の桃太郎と似た反応だ。

「だとしたらよ……。浦島太郎ってことは、何で同じ世界に人魚がいるんだ」

以前電子化されていた文献で読んだことはあるが人魚伝説は地球上のあちこちにあるとか。

純に物語として語るなら、アンデルセン著の人魚姫辺りが妥当だろうか。

「海難に遭った王子を助けたことがキッカケで出会う人魚()

「王国マリネリア6番目の王女、デヴィガイオ。興味沸いたになったので、ニンゲンも自己紹介をするになってください」

独特な話し方をしているが、って皇族かよぉ!?

「いいからはやく」

これは従うしかないか……。

「ええと…、オレはチェンジノイドのアルジ・キミヒト。んで、デビ子の隣にいるのが」

「よろしくねデビ子ちゃん!雪女のキネシスです。ピースピース!」

長いからと何の前触れもなくオレ達からデビ子と呼ばれるようになった人魚だが、キネシスの真似をして右手でピースを作っている。

そういえば、4人も居て普通の人間が浦島しか居ないんだなあと今更思ったアルジ。

「ところでニンゲン。海で沈むになっていたのはどうしてか」

デビ子が海から引き上げた浦島……。デビ子が所謂人魚姫なのだとしたら、果たしてどちらの次元なのか。

「改めて、ボクは浦島太郎。事情はまあ、少し長くなる」

「長くても構わんから」

「助かる」

その男は置いていた釣竿の上に手を置くと、静かな覚悟を宿したような面持ちに変わる。

「あれは朝方の出来事だった。私が海釣りに出掛けていた所、悪童らが囲って亀を枝で殴ったりしていたのを見かけて慌てて止めに入ったのだ」

「ひっどい。まさに悪童だね」

デビ子の背中から両手を肩に置きだしたキネシスが反応する。異種族ながら姉妹に見えなくもない。

「助けた亀は何と人語を話せて、『助けていただいたお礼に竜宮城へご案内いたします。どうぞ、背中にお乗り下さい』と勧めてきた」

「んで、先ほどの呟き通りならばその直後にマシンオーガの集団に襲われた、と』

浦島太郎の世界も狙っていたか、エネオプめ。

「あの鬼どものことを指しているのなら、その通りだ。ボクを見るなり、妙な火縄銃のようなもので黒い何かを放ってきたのだが、それは乗っていた亀に命中してしまってな……」

え。

「カメェェーーーーーーン!!!」

思わず二度見してしまう一同。

「いつ声をかけようかと思っていたところだったが、久方振りだな、亀よ!元気にしていたか」

「ハマァァーーーーン!!」

「そうかそうか、浜辺を走れて満足したんだな。よーしよしよし」

繋がった。以前は桃太郎のお供がサイコロ状にされていたが、今回もマシンオーガのせいで竜宮城へ向かう筈だった亀をこんな碌に会話もできないバイクの姿にされたってわけだ。

浦島がさも当たり前のように亀バイクとコミュニケーションを取れていることには最早突っ込みを諦めているまである。

「おっと、話が逸れてしまったな。先ほどの光を受けた亀は正に今の姿に変わってしまい、ボクを乗せたまま海上を走ってしまったんだ。すると不思議なことに、この亀の灯りから強い光の束が飛び出したかと思うと、目の前に割れたような大きい裂け目が現れてしまってな、そのままボクを乗せて中に入ってしまったんだ」

「カメェーン……」

次元移動能力…!?マシンオーガから逃げるためとはいえ、まさかそんなことが。

「そして、それを通過したのだが、この亀自身が驚いてしまったのかボクを海原に振り落として走って逃げてしまったのだ。そこからは記憶が無い」

おい、バイク(B)亀野郎(K)バイク(B)

「ま、まあ…、ワザとでもないだろうし……。それにお陰で事情を知ってそうな君たちにも会えたんだ。寧ろ礼を言っておかないとね」

「カ………、カメェェーーーン!!!」

なんか感激してる風なのは大体わかった。

「となれば、この浦島さんをどうにか自身の世界に戻さないとですね!」

「ああ。亀バイクも、竜宮城に浦島を連れていくって約束したんだろ?」

それに、こうしている間にも浦島の次元は消滅が始まっているはず。

「竜宮城?それはどんなとこ。知る、になりたい。行く、にもなりたい」

まずい、デビ子が興味を持った。

本当に付いて行ってしまった場合、ここが人魚姫の世界だとすれば浦島の世界は守れても今度はこちらが主人公不在となり、崩壊してしまう。

「じゃあさ」

キネシスか、この前のことで主人公絡みの事情は分かっているハ…。

「一緒に、竜宮城行ってみる?」

「やった!やっぱり、お姉ちゃんは優しい、だね!」

(誘いやがったぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?)

好奇心は猫をも殺すと言いたいところだったが、最悪猫一匹どころではなく二つも次元を滅ぼすことになってしまう。

「ほう人魚の嬢ちゃんも行きたいか。こりゃカメーンにも一肌、というより甲羅ぐらい脱いでもらわなければな」

「カメェェーーン!」


そんな訳で、オレら4人とバイク一台は浦島太郎の世界に渡ることになってしまった。

「…もう本当に、どうなっても知らん」

「オレと一心同体になってから、キネシスもカタカナ語使うようになったよな」

「そりゃあ一アルくんと一心同体したことで使える言葉が増えたからね。アイスキャンディーとかソフトクリームとかジェラートとか…」

「全部アイス類じゃねーか!!…そういえば、今回から新たに浦島太郎とバイクのカメーンに人魚のデヴィガイオと新キャラ続々だったな」

「うんうん。特にデビ子ちゃんはかわいかったなぁ!カタコトなのもそそるし、わたしのこと『お姉ちゃん』呼びだし!会って間もないから背中から肩に手置くだけに留めたけど、ワンチャン抱けた……?」

「内心そんなこと考えてたのかよ……。言葉もそうだが、お前は何より変態度が増した気がするな。そんじゃ、次回もよろしくな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ