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アルジキミヒト  作者: ユッキング加賀


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1/4

第1巻、時に彼の者、道往くもの

※初回のためやや文章量多めです。

初回拡大スペシャルのようなものとして生暖かい目で読んでいただけましたら幸いです。

それでは、ご覧ください。

「ちょろっとハッキング仕掛けただけじゃねーかよおおおおおお」


夜中に酔った勢いで社内の秘密に触れてしまい、現在警備員らと社屋の高層ビル内で追いかけっこ状態。

何故、こうなってしまったのかというと…。



弊社こと『エネルジオプティマス』での小型タイプの光子変換(フォトナイズ)型生物転送装置の開発プロジェクト成功を祝い、ちょっとした祝勝パーティーをプロジェクトメンバーであるマシンオーガ族らと楽しんでいた最中のことが発端だった。

「う~い、ちょっとトイレ行ってくるわ」

「りょーかいリーダー。ついでに、倉庫に余ってるガソリン酒があったら欲しいっす。はい」

生意気な後輩のゴリブンの希望もあり、用を済ませた後に会場代わりの商品開発室の隣りにある倉庫室に立ち寄った。

「相変わらず埃被ってるじゃん…、アゼルバイジャン…」

薄暗い中、酒を探しながら半年前に外れで拾った何処ともとれない場所のガイドブックの国名を思い出していた。

他所の世界の本では一度も描写を見たことがないので恐らくだが、この『ブックワールド』でのみ見られる現象の一つとして()()()()()()()()のである。

昔かららしいが理由は不明。ラブコメ本のシリアスシーンの導入でたまに記載されている雨という現象ほどではないものの、時々上空から小説・雑誌・漫画・辞書などなど…とにかく本が落ちてくるのだ。しかも内容はどれも異世界の言語なせいで満足に読むことも出来ず、仕方がないので積み上げて住居にしたり、ページを数枚千切っては燃料その他うんぬんかんぬんに利用されていた。

十数年前に異次元から生えてきた当時のエネオプの社員らは雨でも豚でもないのかよと、マジかよと困惑していたらしいが、持ち込み技術である光子変換シールドが町中の降り注ぐ本をシャットアウト。変換後の書籍は自動的に電子データ化され、住民には安価で販売されるようになった。

金取るのかよクソッタレと最初は感じるチェンジノイドも多かったが、それまでは不幸にもゴッツい辞書とかが頭に直撃したヤツの意識の行方などは言うまでもないだろうといった調子だったこともあり、現在では快適な生活が送れるならと肯定派の意見が多い。オレらのブック語に一字一句修正された書籍のお陰で民衆の知識レベルも大幅に向上したこともポイントが高いし。衣食住のあらゆる生活必需品どころか食品なんかも既に、弊社が昔開発したデータの光子実体化技術により進化。住居は今まで落ちていた本を豆腐状に組み上げていたものが持ち歩き可能なサイズに縮小できるカプセルハウス、食品やら洋服もハウス内のタブレットから希望の品を生成することができる。

「これか。今の時代わざわざ生成した酒を倉庫に放置しとくとか、何考えてんだか…」

開発途中の商品を普段から乱雑に突っ込んでいたためか見つけるのに少々掛かってしまった。

出せばすぐにでも冷え冷えが呑めるというのにと呆れていたこの男『アルジ・キミヒト』だったが、偶然にも酒の近くの棚に写真立てが飾られているのを見つけた。古くなった蜘蛛の巣まで付着しており、正直小汚さすら感じている。だが、そんなことよりも写っているソレに興味を持っていかれてしまっていた。

「マシンオーガじゃない。豆腐本時代のブックワールドだし、チェンジノイドの若い男女…、まさか」

オレはある日から孤児だった。両親は昔共働きでここの社章がある名刺を物心が出てきた頃にチラ見していたのを憶えている。突然急に帰ってこなくなったんだ。いつもの泊りがけかとあの日は思ったが、一週間も帰宅しておらず怪しいと感じてBWP(ブックワールドポリス)の交番に訪れるも、子どもの悪戯だろうと相手にされず、帰ろうとしたところ所有者である父親の屋内認証スキャンが一週間以上行われていないとのアナウンスとともにカプセルハウスは強制縮小。当時はまだ多かった積み本ハウスの街中。身寄りがもういないオレはカプセルトイの容器みたいな元ハウスを形見代わりに握りながら、毎日街角で相手にされないスクラップ売りをしつつその辺の草を食うという、漫画で知ったような埼〇県民的時代を過ごしていた。

家ごととなると何かあったのだろうとは疑うまでもないと今では思うものの、当時はやはり『棄てられた』などと内心淋しさと恨めしさを抱えながら極貧生活を送っていたのだが、満足に働ける歳になってからは日中ゴミ処理業をこなしつつ夜中に趣味の廃材や電化製品のジャンクパーツを用いたメカ作りに励んでいた。

その趣味が高じた結果、ジャンク由来のアームロボットを出品したエネオプの発明コンクールで優勝。それを此処の上層部に目を付けられ、結果としてゴミ処理場を後にして今日の職場に至るわけだ。

入社したは良いものの、今もなお両親の社内での働きを聞かない。そんな中での発見だったものだから正直寝耳に水でも差されたような衝撃だった。だが、社内で何も聞かなかったことが実は故意だったら…との考えもよぎった結果、一旦何事もなく会場に戻りつつ残業がてら再度確認してみることに決めた。


「今日はありがとうございましたー!!ところで、リーダーはこの後の二次会行きますよねぇ~?www」

「あぁ~悪い悪い、実はこの後開発データの整理と社員のシフト調整せんとだから皆で行ってきなよ」

(全部嘘である)

「ウッス。全く、部長もいつも大変すね。んじゃお前ら!今から近くのオイッキング行くぞおおお」

ゴリブンら4~5名のグループで会社近くのオイルパブに向かうらしい。明日は定休日なもんだから呑む気満々だなあと見送った後、早速先ほどの写真をデスクに持ち込み開発内容のコピー作業を行いながら観察がてら眺めていた。


「オレが創作でよくある親なら、導入として写真の裏にメモか何か残すよなっと」

()()のつもりだった。


『HK1EM1LH9PT』


アルファベットとアラビア数字。

何かのパスコードか?と思い、若干ビクついてしまう。

デスクの脇に置いていた発泡酒の残りで()()()()()()でエンジンを掛け、PCで真っ白な意識高い系の社内用データベースにアクセスしてみる。過去の研究内容を漁ることが大抵の使い道だったが、今回は違う。

「こんなオープンなとこにわざわざパス要求するわけないか…。なら」

早速このページ内に仕掛けるべく隅にバックドアプログラムをサクッと作成し、更なる内部情報を回収目的でパーティー中の記念写真とも言えないような飲み食い中の適当な写真に自作のトロイの木馬を用意。プライベート用のモバイルPCに情報を送り込むように仕込んでおいたので、あとはそれを読み取りつつ入力画面が検知されるのを待つだけ。

こんなことバレたらしょっ引かれるどころじゃ済まないなと、その間私物と個人の開発品を光子変換してキャリーカプセルに仕舞っていく。

「こいつは…、手荷物の方がいいか」

まっさらな表面の六角形、手のひらサイズの銀色パネルが取り付けられた腰に巻けるベルト。そして如何にもスマートな通話機器風の端末。今回開発の転送装置だが、実はこのベルトにも仕込んである。

「見つけたか」

ピーと小さく検出通知を知らせる音が鳴ったのでデスクへ駆け寄ると、そこには不安を煽るような真っ黒な背景、中央に赤い入力フォームが映っていた。

通知音を切ってデータ抽出の完了したモバイルPCを繋いでいたコードを外し、社内PCのその画面に『HK1EM1LH9PT』を入力してみた。しかしログインは失敗。

「(このまま入れても効かないなら並び替えか…ん?_)」

交互に文字を入れているのか、と少しずつ抜き出してみると。

『HELP KMHT 119』

「助けて、キミヒト、119…?」

オレの名前?それと、119は以前読んだ救命系の小説で読んだことがある。エマージェンシーコールに使われる緊急連絡先の電話番号だったか。

せっかくなので先ほどの順番に並べ替えた文字列のまま入力してみる。


…開いた。開いたが。


『ブックワールド掌握計画』


開口一番に表示されたファイル名に衝撃を受けてしまった。

動揺のあまり目をかっぴらいたまま言葉も出ず、かといって手は止まらず。

恐る恐るファイルを開く。ポツンと無題のPDFデータが一つ入っていた。

ダブルクリックするとパス設定も無いのかそのまま開いてしまい、


『ブックワールド掌握計画書


記載事項          内      容

作業概要       場所、ブックワールド全域。

           作業内容、光子技術の定着化及び自動化の推進による住民の思考等与奪。

           開始年月日…                           』


「何だよこれ…」

想定よりもヤバい文書が発掘されてしまった。端的にエネルジオプティマスは今後、この世界中の住民を洗脳して資源化するつもりでいる。こんなもの出てくるぐらいならモバイルPCの接続はまだ外さなきゃよかった。


「不正アクセスを検知、直ちに警備員は68フロアの商品開発室に向かってください」

プオオオオオオンとやかましいアラート音がフロア中に鳴り響いた。

「やっべ」



「ちょろっとハッキング仕掛けただけじゃねーかよおおおおおお」

「逃がすな!追え!殺せー!」



エレベーターは停止しているのでフロア中央の機能していないエスカレーターを全力で駆け上がっている。そしてその後ろを図体のでかいマシンオーガ族の警備員が大体8名ほど棍棒片手にドテドテと追いかけてくる。

「75階の非常口から上に行けば屋上へ出られるが、行き止まりな上にバリケードも組めないな…。そうだ、会議室なら」

72階まで登ったところでエスカレーター横のカフェスペースを抜け、その向こうの会議室に向かうことに決め、実行に移した!

天板の丸いハイテーブルの上を跳び箱のように飛び越えると、先頭の警備員にクッションの丸くて赤いカウンターチェアを投げつける。

「野蛮なチェンジノイドめ」

「マシンオーガも大して変わらねえだろが、よお!」

吹き抜け沿いのガラス周りにあった植木鉢を牙剝き出しの顔面に投げつけたり、回し蹴りで近くのウォーターサーバーやらを薙ぎ倒して後続の足止めを図り、急いで目の前の会議室のドアに飛び込む。

灯りのない中、大急ぎでキャスター付きオフィスチェアの背もたれをドアのレバーハンドルに挟み、チェアの下ハンドルをガンガン押して上に伸ばす。次に会議用テーブルをドアハンドルと椅子の座る部分に挟み込んだ。そしてそれを囲うようにひたすらテーブル、椅子、観葉植物、ホワイトボードに横倒しにしたキャスター付き液晶モニターまで押し付け、一息入れてから()()を腰に巻いた。


「変身キャストドライバー!!」

ベルトから鳴る電子音声と、警備員がドアをガンガン殴る音、そして例のアラート音がドア側以外がすっからかんな会議室内に響く。

選択肢も、時間の猶予も残されていない。


一抹の不安と迷いを、何かを飲み込むようにして振り切った。覚悟は決まった。

オレはドライバー右側にあるチェンジスロットから、如何にもスマートな通話機器風の端末ことキャストパスを取り出すと画面内のブラックホール風に模したアイコンに触れた。

「ディメンションゲート!!」


僅か後、空の薄緑色のシールドもよく拝める部屋奥のガラス張りの前、何もない場所に穴が開いた。紛れもなく、その空間に対して捲れ上がるようにして障子に拳でも突っ込んだかのような穴がそこに現れた。

「社員番号077-164931、開発部部長アルジ・キミヒトォ!最高機密に触れた罰を受けてもらうぞ!」

背後から備品をぶちまける大きな音と共に、機械的なのに感情のこもった野太い声が隔てなく聞こえた。

「うるせえ!黙ってろコーポの犬どもが!」

キレながらチェンジスロットへにキャストパスを差し込む。

「座標不明、ランダムディメンション!!」

「おい、アイツ別次元へ逃げる気だぞ!さっさと首を刎ねちまえ!」

このまま飛び込んでも状況は変わらないだろうが、

「そういやお前のデスクにこんなモノが…」

「〇uck!」

急ぎでモバイルPCを置いてきてしまっていたか!

(アレを失うのは流石に不味い。しかし、幸いにも無傷のまま奴らの手中にある。なら…)

「ちょっくら雑魚狩りと行きますか」

チェンジスロットからパスを抜き取ると、上半身と顔部分に?と表示された青いアイコンをタッチする。

「キャストサーチ…」

警備員の一人が此方に向けて匕首(あいくち)を投げようとし始めた。

「……牛若丸」

窓ガラスから入る月明かりが端末を(かざ)される六角形の銀パネルを曇りなく照らした。

「キャストチェンジ!!」

鋭利な短刀が飛ん「――変身」できた瞬間、チェンジスロットに迷わず挿入。

体を捻じるように右回転を掛けながら回避しつつソレを横目に前進。『胸元で銀色の開いた本型ペンダントが揺れ、無地の白シャツを覗かせる黒の縦ストライプ柄のジャケット、上と模様を合わせている黒のチノパンにシンプルな黒い革のローカットスニーカーといったオフィスカジュアル』でキメていたが、それが『下げ髪で眉細めの中性的な顔立ちが(かづ)いた衣からちらりと見え、緑の水干(すいかん)括袴(くぐりはかま)に一本歯の下駄といった童子姿』に瞬間的に切り替わる。

刹那、飛んできた匕首の(つか)を掴み取ると急激に加速。

鞍馬流(くらまりゅう)――八艘剣飛(はっそうけんび)

右手に持ち替えて柄の底に掌を当て、下駄の歯が片足カーペット床に着地した瞬間――――――――、

音が置いて行かれた。


一陣の風が過ぎていくような影の動きを感じた気がしたのも束の間、視界が急に斜めを向き、やがて床に到着すると自分の身体と仲間の転がる首が7つ見え、駄目だ世界が暗くなってゆく…。


「よーし、回収したっと」

ゲートの前に着地すると切り取ったマシンオーガの腕からモバイルPCを抜き取り、腕を会議室内に適当に放り投げる。

キャストパスを抜き取り変身を解除、オフィスカジュアルで黒とライトブラウンが混ざったマッシュショートの175cm自称細マッチョ体型に元通り。実験は成功だと興奮気味だったが、未だ響く警報音のせいであっさり現実に引き戻される。

追手が追いつけないよう、すぐさま空間の穴に飛びこんだ。


「行っけえええええええぇぇあああぁぁあああーーーー」


通過した時空の穴から元の世界を覗こうと一瞬背後を見るも、既に穴は黒いモヤに飲み込まれ、やがてそれは跡形もなく消え去った。


何処でもいい。

兎にも角にも、飛びこめる世界さえあれば。

むかーしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんが川辺の家に住んでおりました。

ある時、お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。


お婆さんは手持ちの大きな桶に川の水を汲み、中で洗濯板で着物を洗濯していた時でした。


ドンブラこ、ドンブラこと川上から大きな桃が流れてくるではありませんか。


幸いにも川底は足首ほどに深さは無く、俵を横向きにしたような大きさで流れていたことで幅的にはスッポリ気味、何より緩やかな流れだったことも相まってお婆さんからは容易に手が届きました。


お婆さんは洗濯に使っていた桶に洗濯物、その上にはみ出してしまうほどの巨大な桃を乗せて帰りました。

見かけよりは軽い、ただ、それにしては変に重いと妙な感覚に襲われていました。


「ただいま帰りましたよ。おや、お爺さん丁度帰ってきていたのねえ」

「おかえり婆さん。いや、婆さん、何じゃその大きな桃は!」

いつの間にかまな板に移動されていた例の桃に触れる。

「さっき洗濯しておったら川で流れていたのよ」

「美味そうじゃのう、早く切り分けとくれや婆さん」

「はいはい」


大きな桃に包丁を入れた瞬間、元気な産声とともに桃の中から1人の赤ん坊が姿を現した。

お爺さんとお婆さんは腰を抜かして驚くも、桃から生まれたのでこの男児に『桃太郎』と名付け、2人で大切に育てていく決心を固めるのだった。

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― 新着の感想 ―
「おおおおお」で終わるセリフの時は最後の方の2文字を小文字にするか「!!」をつけると良いかな?と思います。 アゼルバイジャンの部分はダジャレかな?と思いましたがいい意味で裏切られました。 仮面ライダー…
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