【読み切り*2】お掃除は妖怪退治専門課にお任せ下さい。
前置き・こちらの作品はシリーズとして稼働させていく予定ですので、「【読み切り*1】お掃除は妖怪退治専門課にお任せ下さい。」をまだお読みでない方はそちらから閲覧お願いします。
また、1と2を含めたこちらの話は全て“お試し用”の「読み切り版」となっていますので、これからのシリーズ作品は話の内容が大幅に変わる可能性がありますことをご了承いただけますと幸いです。
以下より本編です。
壱.複雑な関係
私は巻坂 楓、15歳。今年から花の高校生…なんだけど…学校に行くまでの通学途中、やっぱり電車とかバスとかにすればよかった…なんてことを思っている。その理由は……
楓「危ない!!」
トラックが走ってることに気が付かない男の子を庇おうとすると、その子が振り返って私の手を掴んで「アリがとォ…お姉チゃん…ボく、と、一緒ニ遊ボぉ…!?」と言った
楓「?!ひっ…!!」
怖くて目を瞑ると、後ろから「遊ばねェよ」という声がして振り返る。その人の姿を見ると、心から安堵する。
楓「も、杜圸さん!」
杜圸「どーしても遊びてェってんなら…テメェが姿も存在そのものも消滅した後に考えてやんよ。」
そう言った瞬間に、手先に力を込めると白い光を手に纏わせ、“禍憑”を消滅させる杜圸さん。
杜圸「…大丈夫か?」
楓「!あっ、はいっ!」
あ、相変わらずスイッチのオンオフとか、切り替えとかよく分かんない人だなぁ…とか、そんなことを思っていると…
杜圸「バス停まで行くなら、俺も一緒に行くよ」
楓「え!そんなの悪いですよ…!」
杜圸「気にしなくていい。
俺も、今後は会社に行くために使うバス停だから。」
楓「会社、ですか?」
杜圸「楓ちゃんの高校の近くに就職したんだ」
楓「え!?い、いつの間にッ…?」
杜圸「…まあ、ちょっと色々とコネを使いまくっただけだよ」
楓「え」
…今の間はなんだ…
そういうのは怖いから聞かないでおくか…
楓「そういえば、旭日さんは大丈夫そうですか?」
杜圸「あ〜、彼奴も体力お化けだから…治って2日後に仕事行ったよ」
楓「え、すご、凄いですねっ…!?」
杜圸「体力が化け物みたいにあるのが取り柄みたいなもんだからね
ま、俺達は化け物だからなんとも言えないところなんだけど」
楓「は、ははは…」
なんてコメントしたらいいか分からないから、そういうジョークはやめて欲しいなぁ〜…なるべくなら…。というか、そういう冗談言う人だったんだ…。
杜圸「ん、バス来た。じゃ、俺は楓ちゃんとは離れてるから。」
楓「え、どうしてですか?」
杜圸「おじさん、まだ捕まりたくないんだよね。
特に旭日と同じような罪でなんてそれこそ嫌だからね。」
楓「つ、捕まるって…」
杜圸「ま、そういうことだから…でも大丈夫だよ。
…君の事は、ちゃんと護るから。」
楓「!…ど、どうも…」
なんか、そういうイケメン顔で言われると、なんかな〜…
調子が狂う…。
――――入学式が終わって、自分のクラスを確認しに行く。
掲示板に貼られてある紙を凝視する他の生徒達と一緒に、私も自分の名前を確認する。えーと…巻坂…巻坂…
楓「……ぁ」
あった、と声を出そうとすると、背後から急に腕が伸びてきて誰かにガバッと覆われてしまい、かなり驚く。まさか、また禍憑ッ…!?
楓「!?えっ、ちょっ…!?」
?「お前は俺と同じクラスだ」
楓「!その声…零……」
零烙「お前なァ、場所考えろよ。
人が多いところは避けようぜ。教室に行くぞ」
楓「えっ、ちょっ…ちょっとっ?れっ、零烙さんっ……!」
?「あ〜、もう、そうやって乱暴だから女の子に嫌われちゃうのよ?」
楓「?!えっ、白葉さんまでっ?」
な、何故お二人が学校に!?
――――楓「…どういう事ですか、どうして同じクラスに…ってか!学校にいるんですか…!?一体どういう事でっ…」
零烙「俺達の任務はお前の護衛だ。」
楓「へ、あ、はい。それは知ってますけど…」
百葉「まぁ、要は学校までの徹底した護衛ってことよね♪」
楓「……」
零烙「楓?どうした…」
楓「私の青春ライフがあああ…!!!」
百葉「あ、心配するところはそこなのね。
ま、何だかんだ会うのは半年ぶりくらいだものね。
元気そうで良かったわ、あれから調子はどう?変わりない?」
楓「…まぁ…。って言っても、受験と試験期間中に居られなかったってだけですけどね…。でも、今年から晴れて一人暮らしなんで、これから勉強も生活も慣らして行きます!」
零烙「はっ…お前に一人暮らしなんてできるかよ」
楓「はぁ…!?何それ、どういう意味ですか…!!」
零烙「そのままの意味だよ。ただでさえ怪異に憑かれやすいくせに、生身の人間にまで襲われる気か?
お前、少しは自覚しろよな。」
楓「ちょっとっ…!失礼じゃないですか…?」
百葉「いえ、これは私も思っていたことなのよねぇ…それにカエデちゃん、凄く可愛いものね♪男なら誰でも惚れちゃうわよ♡」
楓「かっ、かわっ…!?///」
いやっ、てか今惚れるって!!///
零烙「お前…どう考えても世辞に決まってんだろ…
何、本気で顔赤くしてんだ…」
楓「はあっ?!ちょっと!?」
百葉「まぁ、そういうことだから、私達もカエデちゃんと同じマンション借りて住むことになったから♪宜しくね♡」
楓「……はいィ!?」
キーンコーン…
零烙「!おっと…。ほら、早く行くぞ。」
楓「…私の…孤独ライフ…」
百葉「そんな寂しいライフ送らなくてもいいわよ…!それに、カエデちゃんは女の子なのよ?これでも心配してるんだから!
ね?心配くらいさせて頂戴な?」
楓「うぅ…」
零烙「うだうだ言ったってしゃーねーだろ。
上が決めたことなんだから。」
楓「この体質が憎らしいッ…!!」
零烙「何を今更…。」
――――自己紹介のコーナーが終わると、ホームルームを長く取って、これからの学校生活での話が始まるので聞こうとしたのだが…如何せん、学校絡みではないことの情報が多すぎて頭の中がパンクしかけている。
今日はホームルームだけで終わったが、これから勉強と一緒に付いて回るのが、零烙さんと百葉さんとの同じ学校ライフが始まるってことだ。
ただでさえ友達ができにくい性格をしてる私なのに、あんな顔の整ったイケメン二人組が私みたいな地味子ちゃんを取り囲うようにすれば、私は学校の先輩からとかにも目をつけられないだろうか。あの整い立ちだ。学校で人気にならないわけない。
ホームルームが終わったあと、どこからともなく現れたのか別クラスの女の子達がうちのクラスのホームルームが終わるのを今か今かと待っており、終わった瞬間に零烙さんと百葉さんの二人を囲った。
楓(うお…。やっぱイケメンだもんなー…)
そりゃそうなる…
渡された教科書を鞄の中に突っ込んで、先に帰ろうと廊下に足を踏み出した瞬間に、誰かに肩を掴まれて一歩逆戻り。
楓「!おっ…とっ…!」
突然のことに対処ができなくなり、一瞬だけ転び掛けるがその肩を掴んだ人が体重を支えてくれる。
楓「……零烙さ…(あ、じゃなかった)壱川くん…?」
零烙「…何一人で帰ろうとしてんだ」
楓「…え?」
女子生徒「壱川くん、その人は…」
零烙「あ?あ〜…俺の大切な人。」
楓「!?!?」
教室中が響めき立って、女子生徒の悲鳴が響き渡る。
「「ええええ?!!」」
零烙「あ?ンだよ、なんか変な事言ったか?」
百葉「間違いじゃないけどね…ホンット…!この零烙ッ…!!言葉くらい選びなさいよねっ…!!
あ、みんな、誤解しないでね〜?彼女と壱川はそんな関係じゃないから〜」
そう言って百葉さんは私達の腕を力強く掴んで、教室から逃げるように出て行くと、零烙さんはイマイチ状況が掴めていないのか、百葉さんに「おい!何すんだよ!」と執拗に言っていた。
楓「…信ッ…じらんないッ…!!幾ら上手い言い訳が見つからなかったとしても、あんな言い訳の仕方がある!?フツー!!
もっとなんかあるでしょ?!どうするんですか!?明日から私達、交際してるって噂が流れますよ!?絶対!!」
零烙「は?別に交際してるのは事実なんだから良いだろ」
楓「それは友人としてですけどね?!私が言ってるのは恋愛交際の方!!」
零烙「うるせェなあ、キャンキャン吠えるなよ。耳が痛くなってきた…」
楓「誰の所為だと思ってんですかッ!!!」
百葉「…まぁ、そこはみんなの想像力に任せるしかないわね〜。
一応、私が「みんなが思ってるような関係じゃない」とはぼかして誤魔化してはおいたけど…明日にならないと分からないわ。」
楓「そこはぼかさずにちゃんと言って欲しかった…」
零烙「お前、さっきからうるせェし、何の問題があるって言うんだよ?」
楓「私!!花の15歳!!女子高校生!!恋愛して彼氏作りたかったのに!!友達だって欲しかったのに、さっきので沢山敵ができたんですけど!?」
零烙「敵って、何の話だよ」
百葉「アンタもう口閉じなさい…ややこしくなるだけだわ…」
――――?「公共の場でお喋りとは余裕だな…
…特例課の退治課」
楓「!!」
その声に背筋がゾワリと震える。
…何で、彼がここに…
零烙「あ゛……?何だよ、作業班が何の用だ」
百葉「……童子…」
楓「……」
童子「険悪なムードだったようだからな…。
その女をこちらに引き渡せば、全て解決すると思わないか?」
百葉「は…?どういう意味よ…」
零烙「巫山戯んな、作業班の出る幕なんざねぇーんだよ…
とっとと帰りやがれッ…!!」
童子「やれやれ、完全に目の敵にされてるな…」
零烙「ッたりめェだろ!!テメェ、自分が仕出かした事、覚えてないじゃ済まさねえからなッ…!!」
童子「…何の事だかな…」
零烙「あ゛ぁ゛……?おちょくってんのか、この野郎…!!」
百葉「零烙!!作業班には手を出したらダメよ!!
それで前に罰則を受けたの知ってるでしょ?!
次に手を出したら今度こそ謹慎だけじゃ済まないわよ!!」
楓「!えっ…!?」
なにそれ…!?そんな事があったの…!?
零烙「知るかよ!!
このムカつく顔、一発殴らねえと気が済まねェ…!!」
楓「ッ…!!零烙さん!!彼を殴ってはダメです!!」
零烙「!楓ッ…」
百葉「そうよ!一旦、冷静になりましょう…?ねっ…?」
零烙「っ……!!……ぁあ…あぁ…すまねぇ…。取り乱しちまった…。」
零烙さんのその言葉にホッとしていると、童子が「お仲間に諭されねェと自分の感情も抑制できないのか?とんだ迷惑野郎だな…」と放つ。
零烙「!……ンだと、クソ野郎…!!」
百葉「零烙!」
楓「やめてくださいッ!!」
私は零烙さんと童子の前に立ちはだかり、両手を広げる。このまま喧嘩させてはダメだ…!!あの時みたいにっ…あの時のようなことはさせないッ…絶対に……!!
童子「!…何だ…」
楓「零烙さんの事、貶すのはやめてください!!
貴方に零烙さんを貶して良い権利も理由もありません!!」
零烙「楓…!お前っ…」
童子「お前の話じゃないだろ…何故、お前が飛び出してまで止める」
楓「…大切な人を貶されたら、誰だってそうなります。」
零烙「!楓…お前…」
童子「…大切?ははっ、おめでたい奴らだな…!さっきまで喧嘩し合ってたのに、都合が悪くなると仲間ヅラするのか」
楓「!な、仲間ヅラなんかじゃ…!本当にッ…」
童子「そして、都合が悪くなると、他人の振りをするのか。」
楓「?!…な、何を…」
童子「…とんだ茶番だな。そんな茶番を見せられるこっちの気も考えて欲しいな。…そういうのは、ウンザリだ…!!
じゃ、俺はこれで。」
零烙「っ…何しにきやがったんだ、彼奴…!」
百葉「…カエデちゃん、大丈夫…?」
楓「!…あ、はい…大、丈夫、です…」
百葉「本当に…?顔色が悪いわ…」
楓「大丈夫、ですよ…!」
童子『ウンザリだ…!!』
楓「……」
あの人は、どうして…
零烙「…んじゃ、まぁ…帰ろうぜ。」
百葉「あぁ、私は一度組織に戻って報告してくるわ。先に帰っていてちょうだい。零烙、カエデちゃんの護衛よろしくね」
そう言って、百葉さんは零烙さんの方をポンッと軽く叩いて、私達とは逆方向に走っていく。私はそんな百葉さんを見て、暫く思考が停止する。
楓(…え、零烙さんと一緒に帰るの?
この荒んだ状態を維持したまま?)
流石に鬼畜過ぎやしないだろうか…?
そう思ってると、「そんな怯えんなよ」と言われる。
零烙「取って食いやしねぇよ」
楓「…零烙さ」
零烙「さっきは悪かった…」
楓「…早く帰ろ!…零烙!」
零烙「!…おう。」
――――楓「そういえば、百葉さんと一緒に住んでるの?」
零烙「あぁ、一応バディだし、同じ任務に付いてる時とかは特に一緒になることが多いからな。プライバシーってもんが無くなるぜ。」
楓「うわぁ〜…大変だね…」
零烙「他人事だと思いやがって…
そう言えば、お前の部屋の隣に住むことになってるから、なんか困ったこととかあったらすぐこっちの部屋に来いよ」
楓「!ありがとう。零烙達が居てくれれば少し安心かな…
さっきはごめんね、邪魔者みたいな言い方でキツくなって…」
零烙「あぁ、まぁ…顔見知りがすぐ隣に住んでるとか思いたくないもんな〜…別に大丈夫だって。」
そう言って各々、自分の部屋に入ろうとすると零烙が固まる。
楓「ん?どうしたの?部屋に入らないの…」
と言うと、零烙が部屋のドアをバタンと閉める。
…何故閉めた
楓「れ、零烙…?」
零烙「…お前の部屋の番号、なんて書いてある?」
楓「え?何言ってんの?
…208号室だけど。」
一応表札を見てから確認して、そう伝えると零烙は「だよな…」と言葉を溜めるように零す。…?一体、なんだって言うんだ…
零烙は表札を確認する。
零烙「…207号室…」
楓「私の部屋の隣だもんね?」
零烙「……部屋に、知らないおっさんがいる…」
楓「…はぁ…?」
どういう意味、と言おうとすると、管理人さんが箒と塵取りを持って、「あ」と言ってこちらへ近付いてくる。
楓「丁度いいじゃん。話聞いてみたら?」
零烙「あぁ…なぁ、管理人さん。
俺達の部屋に、知らない人が居るんだが…」
管理人「あぁ、ちゃんと連絡行ってなかったんだね…
ごめんね、君らが契約した後に二重契約してしまったみたいで…」
零烙「え゛…」
楓(そんな事あるんだ…)
管理人「一応、空き室がないか確認したんだけど無いみたいだから…
悪いんだけど、暫くどこかに泊まっていてくれないかな?」
零烙「え、え、ちょ…」
管理人「じゃ、そういうことで。」
零烙「いやっ、ちょっと…!?」
楓(なんて杜撰な管理なんだ…)
零烙「…取り敢えず、俺はどうしたらいいと思う…?怒るべきか?」
楓「感情に任されないでよ…百葉さんに連絡すれば?
寝床なくなったって。」
零烙「他人事だと思いやがって薄情だな、お前?」
楓「じゃあ、どうしたらいいの?
私の部屋に泊まるの?」
零烙「……」
楓「…あ、うそうそ、ごめんごめん。冗談だか…」
零烙「いいな!そうしよう!!」
楓「……嘘でしょ…(冗談で言ったのに…!!)
ちょっと待って、本気!?感情に任されてないよね!?」
零烙「この際、無一文で寝られるなら何処だっていい!!」
楓「いや巫山戯んな!?家賃代位は貰うぞ!!」
――――数時間後…
別任務に駆り出されてしまった百葉さんは、暫く遅くなって帰ってきたが、零烙のど真ん中で仁王立ちになって腕を組んで零烙を見下ろした。
百葉「で、どうしたって?もう一回聞かせてくれない?」
零烙「えーっと、俺達の部屋が二重契約になってたらしく、既に知らないおっさんがいるので、暫く楓の部屋で居候って形になった
って、メールでも送ったはずだけど?」
百葉「理由を聞いてんじゃないの!!
どうしてそういう経緯に至ったのって聞いてんのよ、私は?!アンタ、男と女が一つ屋根の下で暮らすってどういう事か分かってんの?!」
零烙「ちょ、待てよ!これに関しては楓の意見も取り入れた結果だからな!?一方的に俺ばっか責められるのはおかしいだろ!!」
楓「やめて巻き込まないで頼むから」
百葉「…空き室が出るまでここに居るしかないのかしら…」
零烙「護衛対象から離れられないんだから、そういう事になるだろ…」
百葉「…明日、管理人に直談判してくるわ。
って事でごめんね、私達のことは空気と思ってくれていいから」
楓「え!?いやいやっ、流石にこの状況は誰も想定してませんって…!
空気と思ってなんて、そんなこと言わないでくださいッ…!!」
零烙「そうだぞ。つか、百葉がちゃんと契約書確認してなかったから二重契約とかになったんだろ?」
楓「零烙、ちょっと黙って貰える?
あと火に油を注ぐのやめてくれないかな…!?」
百葉「確かに半分は私のせいかもしれないけど、勝手なことしたことに関しては完全にアンタが悪いじゃない?
自分の落ち度を正当化しようとしないでよね」
零烙「はあっ?ンだとォ!?」
楓「えっ、ちょちょちょっ…!!ちょおっ!!
こんなところで喧嘩しないでください!!
貴方々がここで暴れたらアパート全壊しますよ!?」
何とか険悪なムードではあるものの、喧嘩しそうな雰囲気だったのを全力で止めに入ると、百葉さんが殴る構えを解いて私に謝ってくる。
楓(ん…!?待てよ…!?)
まさか空き室があっても、この2人が相部屋とかしてたら今みたいな喧嘩になっちゃうってこと…?!
もし、私がその場に居なかったらアパート全壊しちゃうんじゃ…?!
楓「百葉さん!!空き部屋、二部屋は見つけましょう!!それでお二人は別々の部屋に住みましょう!!いえ、そうしてください!!そうした方が絶対に良いです!!」
百葉「えっ?急にどうしたの…どうしてそんなこと…」
楓「だって、今みたいに私が喧嘩を止めなかったら本当に殴る体制に入ってましたよねッ?誰も止める人がいなかったら、私の帰る家の方がなくなっちゃいます!!頼むからそれだけはやめてください!!」
零烙「おい、落ち着けよ、なんだって急にそんな吠え…」
「貴方は黙ってて!!このバーサーカーッ!!」
零烙「?!え…あ…ごめん、なさい…?
……バーサーカー……」
百葉「え、あ…うん、分かったわ…
それでカエデちゃんが安心してくれるなら…だけどね…」
「というかアパートに住んでるのが私みたいに事情を知ってる人だったら、皆さんそう言ってると思います
もう、お二人共…もう少し自分達が人間の身体能力より遥かに超越した者だって自覚して下さいよ…
鬱憤とか憂さ晴らししたいなら、すぐそこの山の麓で殴り合いでもしてください。そうじゃないと人間の一部が消えます」
零烙「いや、幾らなんでもそれは言い過ぎだろうよ…」
楓「黙らっしゃいッ!!
アンタが一番血気盛んだから言ってんだよ!!」
零烙「?!えっ、はいっ… ……えぇ…」
百葉「か、カエデちゃん……?貴女、そんなキャラだっけ……?」
――――
弍.抉れた過去の記憶
学校に着いて自分の席に着席すると、スクールカバンの上に顔面を突っ伏して項垂れること数分。どうしてこんなに疲れてしまうものか。
元はと言えば私の所為でもある。
冗談で物を言うのも大概にしないと、いつか自分自身が破滅しそう…
楓(朝から疲れた…)
まさか施設から愛用していたトースターが暴発するとは思いもしなかった…。それどころか冷蔵庫も真夏の気温みたいに熱くなっていて、故障までしていた。うちに運んだ電化製品は尽く壊れてしまったようで、今日、また買い替えに行かなくてはならなくなった。
?「…おはよう、巻坂さん。」
そう言って話しかけてくるのは、この高校で初めて友達になった葉月 美海ちゃんだった。
楓「おはよう、葉月ちゃん。」
海優「なんか、元気ないね?どうしたの?」
楓「あぁ…ごめん、朝からこんな姿見せて…
実は、うちに引っ越してからまだ一週間もしてないのに、トースターとか電化製品諸々が壊れちゃってさぁ…。今日買いに行かなきゃで…」
海優「えぇ〜…!災難だったね…
あ、じゃあ、うちのトースターとか電化製品あげるよ!」
楓「…えっ?」
海優「あ、心配しなくても新品未使用だから!」
楓「え、いや、そういうことじゃっ…!」
海優「うち、電化製品ばっか買うのはいいんだけど、結局まだ使えるやつばっかり買ってきちゃうから、処分に困ってたんだよね…!
貰ってくれないかな…?」
楓「えぇ、いやいや…幾らなんでもそんな…」
海優「!あ、そっか、そうだよね…!
友達にゴミを押し付けるようなものだよねっ…!
ごめん、気が利かなくて…!」
楓「ええっ?いやいやっ、新品で未使用ならゴミではないと思うよ…!んー…今日、葉月ちゃんのお家にお邪魔してもいいかな?」
海優「!うんっ!来て来て!…あ、でも…
うち、ちょっとお金いっぱいあるところでさ…家がデカイんだよね…ちょっと驚くかもしれないけど、大丈夫…?」
楓「!あ、そうなんだ?(なるほど、お金持ちだから電化製品あげるとか言えるんだ…)うん。分かった。じゃあ、放課後お邪魔するね?」
海優「うん!わー、何年ぶりだろー…!
友達を家に誘うのって、小学生以来かも…!」
楓「そうなんだ〜…!」
放課後、零烙と百葉さんに「ということで、友達の家に行ってくるから護衛はしなくていいからね」と伝える。
零烙「いや、何が“ということで”ッ?
俺達はお前を護衛しなきゃなんねーの!
国がそう定めてるの!言ってる意味分かるか?」
楓「でも私、友達と一緒に居る時はあんまり巻き込まれたりしないから平気だよ〜?ていうか、心配し過ぎだよ〜」
百葉「…仮にもしそれが本当だったとしても、私達は貴女の護衛をやめる訳には行かないわ。それに、禍憑の奴らもどんどん力をつけて行ってる。友達と居る間に襲われないとも限らないわ」
楓「え〜?心配し過ぎだよ〜…
ていうかもう行かないといけないんだけど…!
取り敢えず、そういうことだから今回は護衛しないで!頼むよッ?」
零烙「あっ、おい!楓!!
…ったく、話を聞けっての…!!」
百葉「…しょうがない…」
零烙「おい、まさか護衛しないなんて選択するんじゃないだろうな?」
百葉「ンなわけないでしょ。カエデちゃん達、追い掛けるわよ。」
零烙「…え、追うのか……?」
――――海優「そう言えば、巻坂さんって呼び方もあれだし、楓って呼んでもいいかなぁ?あ、嫌ならやめるからねっ…!」
楓「え?嫌なわけないよ!寧ろもっと呼んでよ。私、友達居ないからさ〜…。私も、葉月ちゃんって呼んでるけど大丈夫?」
海優「うん!滅多に呼ばれない呼ばれ方だから、何か凄く新鮮!」
楓「そう?なら良かった〜…!」
海優「あ、あとね…なんか、クラスの女子達と、先輩の人達から聞いて来いって頼まれたんだけど…
壱川くんと百瀬くんって、友達なの?」
楓「えっ?あっ…あ〜っ…!
う、うんっ、そーねっ…!中学の頃からの知り合い的な…」
海優「あ、やっぱりそうなんだ?なんか噂になってたけど、どっちかと付き合ってるって聞いたんだけど…」
楓「えっ?それはない!絶対にない!」
そもそも妖怪と人間だし!!あと年の差も凄いし!!
海優「そ、そうなの…?ふぅ〜ん…?
じゃあ、みんなの思い違いかぁ〜…」
楓「そ、そうだよ〜…!」
…やっぱり、整ってる顔立ちだもんね〜…そりゃ目立つよね〜…
特に私みたいな地味子ちゃんと一緒にいれば、必然的に私も目立つよな…。学校に居る時はあんまり二人に話しかけないようにしよう…
変な噂まで立ってるし…。
楓(…あれ?ていうか…)
あの二人と一緒に住んでることバレたら、私ヤバくない?
…確実に刺される!!何としてでも隠し通さなきゃ…!!
海優「楓ってば!」
楓「!えっ?あっ、えっ?」
海優「も〜、どうしたの?ぼーっとして…
着いたよ!ここが私の家!」
楓「あ、そうなんだ?わ〜、お邪魔しま〜……」
……予想の10倍以上大きい家だった…
楓「…極道…?」
海優「私、極道の娘なの!」
楓「えっ、へぇ〜っ…!そう、なんだ…」
…葉月ちゃんのこと、怒らせないようにしなきゃ…。本物のヤ●ザじゃん…。こんなふわふわしていて、可愛らしい子が…武術習ってんの…?
海優「お父さん!ただいま。」
海優父「おう、海優か。」
楓(厳つッ…?!こっわッ…?!)
海優父「ん?その子は?」
海優「あ、紹介するね〜!高校から友達になった巻坂楓ちゃん!」
楓「まっ…巻坂楓ですっ…!!」
海優父「ほぉ〜ん?」
楓(こっわぁああッ…?!!)
その瞬間、電柱に隠れていた人陰二つが私の前に飛び出してくる。
楓「?!えっ?」
な…なんでこの二人が…?まさか、尾けてきたッ…!?
海優「!百瀬くんに、壱川くんっ?」
零烙「おっさん、女相手に凄むなよ」
百葉「そうよ、可愛らしいレディに」
海優父「…何だァ?どっちかと付き合ってんのか?海優。」
楓「えっ(そこは私じゃないの?)」
あぁ、でも、まぁ…変な勘違いされるよりマシかな…。
海優「ええっ?ただの学校のクラスメイトだよ!
って言うかどうして二人ともいるの?」
零烙「えっ?あ〜っ…」
百葉「ぐ、偶然通り掛かったんだよ…!」
海優「あ、そうなんだ〜?ん〜、じゃあ、二人も一緒にどうぞ!」
楓「えっ?はっ、葉月ちゃん!?」
葉月「それに、お友達になってくれたら嬉しいなって思ってたの!」
零烙「お友達って…」
海優父「ほぉ?良いじゃねえか。
この俺相手に怯まねェなら海優のダチになってやってくれよ。」
零烙「ええ〜…」
百葉「零烙…!(ボソッ…)
ぜ、是非!わた、あ、俺も友達になりたいと思ってたし!」
零烙「…ンじゃ、まァ…よろしく…。」
楓(…な〜んか、面倒な展開になってきた…)
海優「お父さん!友達一気に増えた〜!」
海優父「…そうか。良かったじゃねえか。」
楓「!(あれ…)」
…優しげな表情…そりゃそっか…
楓(良いなぁ…。)
親って、子供にとったらどんな存在なんだろ…。
――――お菓子等を出されて、暫く談笑していると本題の電化製品のことを思い出して、使わないものを収納しているという蔵に案内された。
楓(蔵って言うより、家一つ分の大きさ!!)
中に入らせて貰うと、埃ひとつ被ってない電化製品がチラホラあった。
へぇ、ちゃんと手入れしてるんだ…。
海優「こっちがオーブントースターでー…これがトースター!
あとこれは電子レンジで、こっちのが冷蔵庫!」
楓「…もっと小さい冷蔵庫を想像してた…」
零烙「俺も…」
百葉「私も…」
海優「零くんと葉くんも、電化製品欲しいの?」
零烙「いや、俺らはちょっと覗くだけでいいよ…」
百葉「そうだね…それに、こんな大きい電化製品…カエデちゃんの家に入るの?トースターは別としても。」
楓「そーだね…」
海優「え?葉くん、楓の家知ってるの?」
楓「!?あ、ちょっと遊びに来てもらったことあるから!ねっ?」
百葉「えっ?あ、うんっ!そうっ!」
海優「へぇ〜…!そうなんだァ〜、仲良いんだねえ〜!」
私達は渇き笑いでそれとなく返すと、零烙がバカにしたような表情をしながら、鼻で笑っていた。ムカついたので靴を踏み潰してやる。
痛みで声にならない声を出して、私の事を睨んでくる零烙に鼻で笑ってやる。ムカついたのか、膝で太もも辺りを軽く蹴られる。
百葉「…何してんの、アンタ達…!子供みたいな喧嘩しないの!」
零烙「だってコイツがっ……!」
楓「はぁ〜っ?人のせいにしないでよ!
元はと言えばアンタが笑うから悪いんでしょうが!
変態っぽくほくそ笑むからッ!」
零烙「変態でもねぇし、ほくそ笑んでもねぇし!」
楓「ほくそ笑んでたじゃん!それとも何?ただの変態?
マゾヒスト?いやァ〜、変態の行動はわからんわぁ〜…!」
零烙「あ゛あ゛ッ?!ンだとテメェ!」
楓「何よ!!」
百葉「こーらっ!人様の家で喧嘩しないの!!」
百葉さんにそう宥められて、漸くここが葉月ちゃんの家だと気付いて、私は慌てて葉月ちゃんに謝ると葉月ちゃんは笑っていた。
楓「は、葉月ちゃん…?」
どうしたんだろう…?
海優「三人共、仲良いねェ〜…!
どうして中学時代からの知り合いだなんて嘘ついたの?
知り合いじゃなくて、それもう家族並みの仲の良さじゃん。
友達じゃん…!」
楓「!ご、ごめんっ…騙すつもりはなかったんだけど…
その…二人と知り合い以上の関係だって知られると、私が女子達の目の敵にされるかもしれないと思って…」
海優「あ〜、二人共カッコイイもんね!分かるな〜…その気持ち!
私も男の子の幼馴染がいるんだけどさ〜…っと、この話は忘れてくれないかな?あの子にも悪いし。」
楓「そ、そっか…うん、分かった。内緒、だね…!あ、じゃあ〜…このトースター貰ってもいいかな?」
海優「うん!どうぞどうぞ!
二人も、遠慮しなくていいからね!零くん、葉くん!」
そう言うと、零烙は「お〜…」と言い、百葉さんは「お構いなく〜」と言って返した。冷蔵庫は流石に大きすぎるために後から入れて貰えることになった。因みに業者さんの代金も海優ちゃんのお小遣いらしい。
流石にそこまでしてもらう訳には行かないと、一度断ったのだが「友達になってくれたから」と言った。
私はそんな彼女の思いも無碍に出来ず、今度は私から出掛けにでも誘って、その借りはその時に返そうと思った。
零烙「良いのか?代金まで出してもらって…」
百葉「というか、高校生の出せる額じゃないわよ…?
実家が極道なのも気になるけど、あの子…ミウちゃん、だったっけ?
あの子も相当強いわね。手練かも…?」
零烙「だな、雰囲気で分かる」
楓「え?(そんな雰囲気、醸し出してなかったと思うけど…)
どうしてそんなことが分かるの?」
零烙「あぁ、お前は武道とか習ってねえのか…
分かりやすいくらいに殺気出てたぞ」
百葉「女の子だと思って、ちょっかい掛けようものなら手首ごとイッちゃうかもね♪良いお友達できてよかったわね、カエデちゃん!」
楓「えぇ…別に私は護衛してもらうつもりはないですよ?
それに、どっちも危険な目に遭ったら彼女の手を引っ張って逃げます」
零烙「例えばそういう状況になったとしても、それはいい判断とは言えないかもしれない。慎重に行動を考えないと、お前…死ぬぞ」
楓「そんな…生と死の狭間に生きてきたわけじゃないもの…
分かるわけないじゃん…!」
百葉「でも今は貴女が生贄だってこと、忘れてるわけじゃないでしょ?
もう貴女はいつ死んでも可笑しくない境界線にいる」
楓「ッ……!」
そんな、そんなこと言われたって…。
だけど、本当に……?
生まれてから、物心が着いた時には既に妙なものに好かれて、付き纏われて、挙句の果てには殺されそうになって…
だったら…私、元から…
楓「昔から、死んでも可笑しくない狭間に住んでたの…?」
そういえば、“あの時”だってそうだった――――…
楓『杜圸さん!!旭日さん!!』
童子という人が現れて、旭日さんと杜圸さんが表情を変えてその人と交戦していた。私は訳が分からず、一度は撤退しようとした時に、杜圸さんの左腕を斬り付けてきた童子。
その瞬間を目の当たりにした私は取り乱してしまう。
それを見兼ねた杜圸さんが私を宥めてくれるが、あやかしでも人間と同じ血の色を流した杜圸さんに、戸惑いを隠せない。
赤、赤、鮮血の赤。
見慣れない、見覚えのある、赤色。
旭日『ッ…ハァ…!失せろよ、童子ッ…!!』
そう言った旭日さんの言葉に、一瞬で意識が戻った。
楓『……』
私、二人に挟まれるように守られてる…?
旭日さんなんて、頭から流血してるのに…
童子『そこの人間を引き渡せば失せるさ』
杜圸『誰の事言ってんだ?彼女は“人間”なんて名前じゃねえぞ…!!』
布で腕の流血を堰き止めているが、それでも溢れ出る出血に、頭が回らなくなる。そもそも四肢の一部が欠損なんて、常人じゃ考えられないはずなのに、それなのに真面に取り合っている杜圸さん。転がってる左腕に蟻が寄ってくる。
杜圸さんは私にアイコンタクトを取って、切り取られた腕の一部を拾い上げる。寄ってきた蟻を払い除けてそれを担いだ。
童子『ボロボロの姿で凄まれても、痛くも何ともない。
納得ができないって言うんだったら、掛かってこいよ。
実力でその人間を助けて見せろ』
未だに煽ってくる童子に心底、腸が煮えくり返る。
…何なんだ、この男は…!!
旭日『ッ…くそっ…!!
本当に、お前は…クソッタレだなッ…!!』
童子『それは負け犬の遠吠えってやつか?
どちらにせよ、話してる方の時間が勿体無い。
力尽くでその人間を貰うぞッ…!!』
刀を構えて持ち出した童子のその構えを見逃さなかった私は思わず、「やめてッ!!」と声を出した。
気が付くと二人の前に立っていた私は、怖くて、恐ろしくて、今にも逃げ出してしまいたくなった。だけど、それ以前に――――
旭日『楓ちゃんっ……!?』
杜圸『楓!!そこ退け!!』
楓『嫌です!!絶対に退きません!!』
旭日『かえでっ…』
楓『この人達を、傷付けないでっ!!』
守りたいと思った。
例え、私に適う訳のない相手だとしても
守られるばかりの私じゃ嫌だったから……
童子『……馬鹿馬鹿しい…
守られるだけのひ弱で軟弱な人間に、俺に勝てるとでも?』
怖い、怖い、恐い…!!恐ろしくて、今すぐ逃げたい…!!
でもっ……!!
楓『ッ、勝ち負けでこんなところに立つわけないじゃない!!
本当は怖い!!本当は逃げ出したい!!
だけど、それ以前にッ……助けて貰った人たちだからッ……!!
助けてくれるって、約束してくれたからッ…!!
守ってくれるって言ったから!!!
だからッ、この人達を傷付けるのは許さない!!とても大切な人達だからッ…!!大事だから!!』
そう、大切だから…大事だから。そんな在り来りな理由だけど、それだけで目の前を立ち塞がらない訳には行かなかった。
旭日『楓…!!』
――――?『童子ィイイイ!!!』
童子『!?…零烙…?』
丘の上から声が聞こえてきて、振り返ると任務に向かったはずの零烙が居たが、私達は目を丸くさせて驚くだけだった。
楓『!?零烙さんッ…?』
零烙『テメェ、今何してやがった…!?童子!!』
童子『…クソ、分が悪いか…
おい、喜べ。今日のところは帰ってやる。
…今日のところは、な…?』
童子が立ち去ると言った事にも驚いたが、一番驚いたのは“また来る”と言っているような気もして、恐怖に震える日々があるのだと思った。
零烙『待ちやがれ!!』
旭日『よせ零烙!追うな!!』
零烙『!旭日さんっ、何でだよ!!』
旭日『バカヤロー…!!目先の事ばかりに気を取られんじゃねェって、教えただろうがッ…!?まず状況確認、そっから無事の帰還ッ…!!
そう教えたはずだ…出来ねェなんて事は言わせねえぞ…?』
零烙『…すんません…!!』
その日、私は不測の事態により実家に帰省することが出来なくなり、また暫くしてから今度は四人が護衛を務めてくれ、詳しい理由は話せなかったが先生達は何も言わずに高校受験まで力を貸してくれた。
高校に入学するというその初日、また童子と会った事であの日の記憶を鮮明に思い出してしまって、恐怖に震えていると百葉さんの手が私の目の前に現れたのに気が付くと、百葉さんが恐ろしい顔で童子を睨んで話していた。
零烙「――――今更かよ」
その言葉を聞いた瞬間に、言葉を詰まらせる。
喉に引っかかって、上手く言葉が見つからない…
何か言いたいのに、何も言えなくて制服スカートの裾をぎゅっと握り締めると、百葉さんがその手を取って「そんなに力を込めたらダメよ」と言って、優しく力を込めた拳を解いてくれる。
百葉「大丈夫よ。護るから。」
楓「…」
その言葉だけで、どれほど救われたか。
それだけで、言葉も出ないほどに涙が出た。
楓「ありがとう…ございますッ……!!
っ…!ひっ、ぅ……!!うぅっ…!!」
――――百葉「そういえば、なんて言ったっけかしら…カエデちゃんのお友達って言ってた子。名前…」
楓「葉月海優ちゃん?」
百葉「あぁ、そうそう。彼女、割と強い子だから私達が居ない時は彼女に用心棒でも頼もうかしら。」
楓「えっ?えぇ、いくら武術の心得があると言っても女の子ですよ?
それに、禍憑に触れるかどうかも分からないのに、そんな危険なことさせられないですよっ…!」
零烙「…冗談でも言って良い事と悪い事があるぞ…」
百葉「な〜によ、からかっただけよ。
私がそんなこと本気で言うわけないじゃない?」
楓「えぇ……」
この人の倫理観念、どうなってんだろ…。
零烙「この場にいたのが楓だけだったら、本気にしていたところだっつってんだよ…アンタは特に平然と嘘をつける性格だから余計にタチ悪い」
百葉「あら、重要事項に対してだけよ?
必要な時だけ。それに、嘘吐いて心が痛まないなんてこともないわ
…ま、人柄と、時と場合によるけどね…?」
百葉さんはそんな事を恐ろしく良い笑顔で言ってのけるので、背筋がゾッとして暫く百葉さんの顔を見られなかった。
言い知れない恐怖感って、実は身内から来るものだったりもする。
楓(百葉さんを怒らせるのだけはやめておこう…。)
心底そう思った瞬間だった。
はぁ、と一息ついて、瓶の蓋を開けようとするがどうやら最後に締めた時に固く締めすぎたようで簡単には開かなくなる。
終いには力んでも開かず、手がビリビリしてきて赤くなる。
百葉「貸して。」
楓「えっ?」
ひょいと奪い取られて、次の瞬間に少し力を入れただけでバコッと開いた瓶の蓋。…なんでオネエのフリなんてしてるんだろ…この人…
楓「あ、ありがとうございます…」
百葉「どう致しまして。…ねェ、カエデちゃん…」
楓「はい?なんですか?」
百葉「零烙のこと、いつから敬称無しで呼んでるの?
どうして私は百葉って、呼び捨てで呼んでくれないの?」
楓「…へ?」
零烙「なにウザ絡みしてんだよ…」
百葉「だって、同じ任務に就いてて未だに護衛対象とは敬語で話されてるなんて、周りから仲良くないのかなって思われない?」
零烙「ねーよ。少なくともそんなこと思う奴は退治課には居ない」
百葉「分かんないわよ〜?旭日さんとか、柳さんとか…
そういった人達は置いといても、案外杜圸さんとか圭乃さんには思われてるかもしれないじゃない?」
零烙「それこそないだろ。杜圸さんも圭乃も、そこまで暇な人じゃない。そんなこと考えてる暇があったら仕事でもしてるような人らだろ」
楓「あー…まぁ…圭乃さんとかはそういうのありそう…」
百葉「でしょでしょっ?ほらぁ、カエデちゃんもそう思ってるって」
零烙「俺には誘導尋問にしか見えんのだが…?
…まぁ、百歩譲っても圭乃はありそう、か…
あの人、人の不幸は蜜の味とかいうタイプだし。」
楓「ちょ…やだ、そんな事ないよ!絶対ない!圭乃さんは優しい人だよ、そんな腹黒い人じゃない!…零烙じゃないんだから…?」
零烙「はあ〜?お前、あの人にどんな幻想抱いてんだよ…」
楓「年上の女性ってなんか威厳あるよね〜!
ああいう女性になりたいって思っちゃう!」
百葉「まあ、分からなくもないわ…」
零烙「うげぇ〜…やめろよなぁ〜、圭乃みたいな性格の女が増えるとかマジで勘弁してくれよ。俺の心労が増える。」
百葉「アンタ、そんな歳じゃないでしょ」
零烙「うっせ!これからどんどん年取ってくだろ!」
楓「なんか嫌に現実味が増す…。」
?「ふぅ〜ん?零烙、アンタ私の事そんなふうに思ってたんだぁ?」
楓「!圭乃さぁん!」
圭乃さんの声が聞こえたと同時に振り返ると、いつもより奇抜な服装と女優しか被ってなさそうな鍔の長い帽子を被っていた。
色白な肌だから、真っ赤なリップがよく似合う。
楓「圭乃さん!綺麗!どうしたんですかっ?」
百葉「圭乃さん、あれ、今日が任務の日だっけ…?」
圭乃「そうよ。それでぇ?零烙、どういうつもりィ?
アンタ、私が苦手なのはいいけど、私に憧れてるって女の子の夢を簡単に潰すんじゃないわよ。それでも退治課?」
心の中で“そうだ、そうだ!もっと言ってくれ!”と思うが、零烙は悪びれる様子もなくて鼻くそをほじる始末。
百葉さんに止められていたが。
零烙「退治課かどうかなんてそこ、関係ねえだろ…
っつか、今から任務だっつーんなら今頃、青森だったかにいるはずだろ?なんでこんなところまで来る必要が…」
圭乃「後輩の仕事ぶりを見に来たんじゃない。何よ、その言い方?
アンタ、旭日の教育から抜け出せたと思ってやりたい放題してるって報告書に書いてあったけど?これ、どういう事?」
零烙「どーもこーもねえよ。ありのままの報告書だろ?」
圭乃「はぁ…よぉく分かったわ…。
明日から旭日がアンタ達の働きぶりを見に来るって。」
零烙&百葉「はあっ?!」百葉「私まで?!」
圭乃「トーゼンじゃない?あ、でも明日来るのは抜き打ちらしいわよ。今回だけは教えたげる。その他の訪問日は私でも分からないから…
まぁ、精々頑張りなさいよ?♪」
そう言って、圭乃さんは「じゃ、バーイ♪」とひらひら手を振ってその場を後にした。抜け出すことの出来ない絶望に陥った零烙と、百葉さんの醜い争いという名のただの大喧嘩が始まる。
口喧嘩で収まらず手が出たら流石に止めるかー…。
百葉「こッ…のッ、バカチン!!!」
言った瞬間に手が出る百葉さん。ゴンッという鈍い音が部屋中に響き渡る。
い、痛そう…
零烙「ッ!!ッてぇな!!この馬鹿力!!」
百葉「痛くしてんのよ!!この馬鹿頭!!」
楓「ちょっとちょっと!!二人共、アパート内で喧嘩はしないって約束してっ、っ…!!きゃあっ?!」
止めに入ったらどっちかの手によって襟首を引っ張られ、足が縺れて二人に覆い被さるようになってしまう。
二人がクッションになったおかげでそこまで痛くなかったが、慌てた管理人さんが私の部屋の扉を開ける。
管理人「ちょっと!何か凄い音がしたけど、大丈夫でッ…アッ」
楓「ったたた…!!も、何してるんですかっ…!!
あ、え?管理人さん?」
管理人さんが震えてるのを見て首を傾げる。
管理人さんは指を出して私の下を指さすので、その指先を見つめると下敷きになった百葉さんと零烙の服が開けていた。
一瞬で目を取られる
零烙「いってぇ…!!」百葉「いったぁ…!!」
楓「……はっ?!」
慌てて二人の上から退いた瞬間に、生唾を飲む音。
まるで錆び付いたロボットのように振り返って見てみると、管理人さんが真っ赤な顔をしているではないか。
…は?(二回目)
管理人「…だっ、誰にも言わない!!健全なお付き合いを!!」
と、何故か親指を立ててグッドサインする管理人さん。
楓「えっ?!いや、ちょっと?!違う違う違うッ!!!
違うんですーーーーーーーーーーーーッ!!!」
今更何を言っても無駄か、管理人さんには誤解された状態で「3人が過ごしやすいようにその部屋に住んでて!家賃は一人分でいいから!」と言われてしまう始末。…違うのに…事情を説明しようとしに来ただけなのに…泣
何でこうなるのよォ…??
零烙「なんかよく分かんねェけど、普通の値段より五千円も安くして貰えたんだろっ?良かったな!」
快活に言った零烙をギロッと睨みつける。
零烙「?!おっ…!?な、なんだよっ…!?
なんで睨むんだよッ…!?」
楓「…ちっとも、良くないッ!!!」
参.早まった儀式
――――……
?「ええ…時期が早まりまして…
“生贄”の存在ですが……
どうやら、退治課の連中に上手く匿われているようです。」
異形の者は誰かと会話をしているのか、鏡の中に話し掛けていた。
鏡は裏から見れば普通なのだが、鏡面を見ると真紫色の絵の具が塗られていた。鏡で異形の者の形は捉えられないが、代わりに鏡の奥に別の異形の者が「直ちに“生贄”を回収せよ!!」と大声を張り上げる。
続けてその者は「我の“復活”には、“生け贄”が必要である…!!」と言葉を焦らせて言った。会話相手の異形者は、胸元に手を当てて跪き…
?「御意に…。」
そう言って、会話を終わらせる。
暫くすると“それ”はぎょろりと目を開いて、跪いていた足を元に戻して歩き出す。“それ”は異形の者。数々の禍憑を束ねる長的存在のあやかし。
名は、赤鬼。
赤鬼「予定が変わった。“生贄”である女…巻坂楓を即刻回収せよ。
決して殺すな、必ず生かしたままで回収しろ。
回収してきた者には、階級を三つ繰り上げることと、好きなだけ報酬をくれてやる。さぁ……行け!!!
“悪鬼様”を復活させる刻が来た…!!」
その言葉を皮切りに異形の者達は咆哮を上げて、次々に“人間界”に降り立って行く。その赤鬼も例外ではなかった……。
赤鬼「…もうすぐです、悪鬼様…!」
一体、物思いに耽って姿を消す。
――――楓「!!」
脳裏にチリッ…といった嫌な感覚。
鼻の奥に焦げ付くような匂いにも、嫌に覚えがある。
楓「……(なんだ…?)」
これ、前にも覚えが…
ガシッと何かに足首を掴まれる。
黒く靄がかかった化け物の手らしきもの。
その先は異様に伸びているモノが、私を転ばせて引き摺っていく。
楓「っ…ぁ…!!ぃ、やっ…!!嫌だっ…!!」
絞り出した声を聞いて駆け付けた百葉が、私の足を掴んだ手を斬り離す。どうやら私を引っ張ったのは禍憑だったようだ。
禍憑は、およそこの世のものとは思えない叫び声を叫んで、そのもの毎が消滅すると百葉が私の顔を覗き込んで私の肩を掴んだ。
百葉「大丈夫ッ?どこも怪我してないっ?」
楓「っ…はぁっ…!だい、じょうぶ…です…」
百葉「…本当にっ…?」
楓「はあ…。はい…」
あれ、なんだろう、体に力が入らない…
さっき、足を強く掴まれたせい…?
零烙「…今の、何だったか分かるか?」
百葉「ええっ…そんな、急に言われたって…!」
零烙「じゃあ強さ!そんくらいなら分かるだろ!」
百葉「…恐らく使われてる式神は低級霊…でも、侮ったら痛い目見るわよ…!何せ、相手は式神を操る相手……!」
零烙「…見りゃ分かるわ……」
楓「な、何?どういう…」
?「おやおや、これは…皆様…お揃いで。」
楓「?!(えっ、地面から人が出てきた?!)…人?」
いや、人、か…?額に角みたいなのが見えるが…
…まさか、鬼…?
?「彼女が件の…ふむ…。妖怪退治専門課、でしたかね…。
私と交渉しませんか?少しばかり…そこの“生贄”の彼女のことで。」
零烙「…だとよ。どうする?」
百葉「どうって…」
?「私は赤鬼。悪鬼様の下部が一人です。
どうでしょう?素直に交渉に応じて頂ければもう彼女の周りを付き纏うのはやめますし、貴方々も彼女も喜ぶ交渉をしたいと思います。
…さ、どうなされますか?」
零烙「…詳しいことは俺らみたいな退治を専門にしてる奴らは無理なんだよ。ただ、まぁ…話を聞いてやらねぇこともねえ。」
楓「!?ちょっと、零烙ッ…」
そう言って止めようとすると、百葉さんから止められて「しっ…!」と口止めをされてしまう。不安になっていると、赤鬼とか言う奴は「成程、ここで全滅することは防ぎましたか。」と言った。
赤鬼「いやはや、頭が回りましたね。
取り敢えず私の話を聞く…と、そんな所でしょうか。」
零烙「解析とかいいから。話すのか、話せねえのか決めろや。」
赤鬼「…ふふ…。それでは、“黄泉の国”へとご案内致しましょう。」
百葉「?!カエデちゃん!!危ないッ!!」
楓「えっ…」
百葉さんに思い切り突き飛ばされたかと思えば、二人は大穴が空いた地面に引きずり込まれるように落ちて行く。
楓「?!百葉さん!!零烙ッ!!」
赤鬼「チッ…外したか…。まぁいい…。」
一気に大穴が空いたと思いきや、その穴は跡形もなく消えてしまう。
赤鬼「…まぁ、邪魔者は居なくなったことだし、このまま悪鬼様の元へお渡しすれば私も役得というところだろう…。」
そう言うと浮いていた彼は地面に降りてきて迫ってくるように歩き始める。…逃げなきゃ…わかってるのに、足が動かない…!!
赤鬼「逃げないんですね…あぁ、それとも…恐怖で逃げられない…とか?どちらにせよ叫ばず動かずにいてくれるのは此方としても有難い…
こうして連れ去られてくれるという訳ですから…!」
楓「っ…嫌っ…!(嫌だ、こんなのッ…!)
ふ、2人はどこっ?2人を返して!!」
赤鬼「…えぇ、返しますとも。貴女がこのまま私から連れ去られる時、大人しくしてくれると言うならば、ですけどね…?」
そう言った赤鬼の言葉に「嘘じゃないでしょうね…!」と聞き返す。
赤鬼は気味悪くニタニタと笑って、本当ですともと答える。
その瞬間に肩の力が抜けてしまい、そのまま連れ去られることを考えたが、次の瞬間に誰かが私の前に立って赤鬼の顔面を蹴り飛ばした。
楓「っ…!?えっ…」
今、何が起こって…!?
?「何が“返す”だよ…お前が人の物返したことなんて一度もないだろ?」
楓「……よ、圭乃さん…!」
圭乃「すまん、待たせちまった。」
背後から柳さんも来てくれた。
楓「柳さん…!」
柳「あとは大丈夫、圭乃さんに任せてっ…!」
私が「でも…」と呟こうとした瞬間、圭乃さんは「よう、久しぶりだなぁ…。赤鬼。」と言って呑気に赤鬼に話しかけた。
…え、何、知り合いなの…?
そういえば、ここ来る前は普通に人間を驚かしてた妖怪だったって前に言ってたような…え、本当に知り合い?
赤鬼「ぐうッ…!!くそっ…圭乃ッ、お前何でここに…!!」
楓(あ、口調が崩れた…)
圭乃「あ?何でもクソもねーよ。
私の後輩、何処にやった?言えよ。
どうせ黄泉の国じゃねえだろ…?」
赤鬼「…現在、あの2人には悪鬼様直々に制裁を受けて貰っている…」
楓「!?制裁…!?」
柳「悪趣味な…。」
圭乃「…ハァ…?」
えっ、今の何っ?圭乃さんの声っ?
低すぎて一瞬誰かと思ったッ…!!
圭乃「お前らみてーな奴が制裁を受けられるような2人じゃねえよ…
甘く見やがったな…?赤鬼…。
お前、死ぬぞ…?」
赤鬼「?!…な、何を馬鹿なっ…!!
悪鬼様は私を信用しておられるのだ!!
お前らのような腰抜けで軟弱な妖怪とは違う!!そうっ、我らが悪鬼様はこの国を束ねて誇られて当然の御方!!大妖怪の悪鬼様なのである!!」
圭乃「盲目的だな…。全体的に…。」
柳「…あんな姿が、私にも一瞬あったと思うとゾッとしますね…」
楓(え、あったの…。)
ギョッとしてしまうと、赤鬼とやらは狂ったように高笑いしてくるくると円を描くように舞って、これでもかと言う程に圭乃さんを“褒める”。
赤鬼「アンタが居なくなったせいで妖界は楽しくなくなったっ…!!
貴女さえ居れば良かったのにッ…!!
…でも、規則規則と煩かった貴女が居なくなって清々していた者も少なからずいたことにはいた…。ねぇ、何故です…?
貴方は悪鬼様にその身を拾ってもらった恩もあるでしょうに…どうして居なくなられたりなどしたのですか…」
圭乃「……飽きたからだよ。お前らが言う“人間を恐怖の底へ脅かす”なんてことも、人を貶めて辱めるなんて行為も…全てに辟易したんだ。」
赤鬼「ならばそれが本末転倒というものっ!!アンタらが守ろうとしたもの全てがひっくり返ることを、後悔させてやるッ…!!
その生贄も、アンタも!!後悔させてやる…!!」
楓「…ビックリした…」
柳「え…?」
楓「どうして圭乃さんの褒め言葉ばかり言うのかと思ったら…」
赤鬼「は……?ほ、褒め言葉……?」
楓「え?だって褒めてるでしょ?
柳さんが圭乃さんを崇拝してるのも何だか分かる気がする。
圭乃さん、カッコイイもんね!」
圭乃「…クッ…!!あはは!なんかズレてるけど面白ぇ!」
腹を抱えて笑い転げる圭乃さんに続くように赤鬼が「…ふっ、巫山戯るな!!誰がこんな女を崇拝などするか!!」と言った。
その直後に「あ…?今、圭乃さんを“こんな女”呼ばわりしやがったか…?」と、どこが沸点になったのかキレまくる柳さん。
その後は柳さんの目にも止まらぬ速さで仕事を終わらせ、赤鬼が吐いた場所に零烙と百葉さんが居ることを聞き出し、旭日さんと杜圸さんが到着して、2人(というか主に杜圸さん)は「余計な仕事増やしがって…!!」と怒りが頂点に届く勢いでキレまくっていた。
杜圸「俺達の仕事は報告やその報告を受けた後に調査書を届けたり、任務を遂行するように通達する仕事だぞ…!?」
旭日「まぁまぁ、良いじゃないの?久し振りに身体を動かせるってンなら、その機会を無駄にはしないよ」
杜圸「お前がそんなだから後輩の零烙も無鉄砲に飛び込むバカに育つんだっ!!もっとちゃんと教育しろって俺前にも言ってっ…」
旭日「ンじゃ!2人を連れ戻してくるな!!」
そう言って、こことは違う異空間に飛び込む旭日さんだったが、杜圸さんの「聞きやがれ!!」という声が空に響く。
…不思議な感覚だ…。
楓「…ていうか、動けたんですね、圭乃さん…」
圭乃「んん〜?なぁに?私が動けないただの医者だと思った〜?」
楓「いや…なんというか、その…下手したら旭日さんや零烙が居ない時に活躍してたのは、圭乃さんだったのかな…みたいな…」
圭乃「…勘が鋭い子ね…」
楓「…えっ?まさか、本当にっ?」
圭乃「…ふふっ、なぁ〜んてね!
乙女のヒミツよ♪教えるわけないじゃない?」
楓「…ぇ…あ…(そういう…)」
柳「それにしても良かったんでしょうか。
旭日と杜圸の2人だけで行かせてしまって…」
圭乃「大丈夫よ。あの子達は引き際を見極める子達だわ。
例え旭日が使い物にならなくなったとしても、杜圸が何とかしてくれるわよ。さっ!てことだから帰りましょ?楓ちゃんも怪我してる事だしね!」
楓(他力本願…ていうか、敢えて自分達が乗り込まないことで、圭乃さんや柳さんの強さを自覚させようとした…?いや、でも…。)
そんなことするような人達には見えないんだけどなぁ…。
圭乃「あ、言っとくけど、私達が居たらあの二人の戦闘に巻き込まれるから帰るだけよ?私だってまだまだ長生きしたいもの♪」
楓「…んっ??」
…前言撤回…。やっぱあの二人が異常なのかも…。
楓「あれっ?!でもそういう事だと、零烙と百葉さんも危なくないですか?!それで大丈夫なんですか?!!」
圭乃「平気よ〜♪じゃなかったらあの二人が戦闘系に配属されてないでしょ?だから心配しなくても大丈夫!ねっ?」
楓「退治って戦闘系でしたか…?」
柳「まぁ、強ち戦闘だけに属す系統ではないので、そうですとも違いますとも言いきれませんが…。」
よ、圭乃さんって……案外ズボラ…?
圭乃「!…やぁね、アンタはお呼びじゃないわよ…童子。」
楓「?!(童子…!?)」
童子「…奇遇だな。俺もだ。」
圭乃「とっとと帰んなさい。そうすりゃ、まだ見逃してあげるわ。」
童子「はっ…!腑抜けた事を…知っているぞ、お前が退治専門課から医療班に移動したこと…という事は、今のお前は俺より弱いか互角かだ。」
圭乃「…で?だから何だっての」
楓(こ、言葉が強いッ……!そんな挑発して大丈夫なのッ?!)
童子「…零烙と百葉の2人が居ないようだな。やはり護衛はしっかりしてる者でないと任せていられないな…。
どうせ今し方まであやかし共に狙われていたんだろう?」
楓「!(今回は“禍憑”って言わなかった…)…圭乃さん…」
圭乃「そりゃ私がアンタ以上に上に必要とされてるってことよ。私とアンタの決定的な違いね。それに、舐めてかからない方がいいわよ。
どうせアンタは今も、私に勝てない。」
楓「えっ…いやっ、ちょっ…!」
そんな挑発しちゃっていいんですか?!!圭乃さん!!!!!!!!
童子「調子づいていられるのも今の内だぞ…」
圭乃「調子づく、ね…。アンタと私がどうしてこんなにも差のついた任務を任せられるか、教えてあげましょうか?」
童子「下らん…。そんな戯言を聞きに来たのではない。
良いからとっとと、そこの女を引き渡せ。
天と地がひっくり返るぞ」
楓「!(驚いた…そんな言葉使うんだ…)ん?天と地がひっくり返る?」
…なんのことだ…?
そう思って圭乃さんに聞こうとすると、圭乃さんは「そういう所よ、童子」と言って、童子の様子を伺う。
…うっわぁ〜…不機嫌そうな顔〜…。
よっぽど圭乃さんと話したくないのね…
何でだろ、彼女…ドライな性格の男の人からよく嫌われてるような…?カッコイイ女性なのになぁ〜…?
とか思っていると、童子は「実に下らないな」と反論した。
圭乃「物事の善し悪しを頭で考えて決めるから、いつまでたっても行動に移せない。今でも、こうして私が話している間に楓ちゃんを奪うなりなんなりしてもいいはずなのに、罠だったらどうしようと考えているんでしょ?どーせ。そんなんだから判断が鈍くなるんじゃなくて?」
童子「貴様に説教される筋合いはない。何故わざわざ俺がここに来てると思ってる?他の奴らは仕事が出来ないからだ、その俺が判断が鈍いだと?
寝言ってのは寝て言うもんだ。分かるか?」
圭乃「ほぉら、すぐ挑発に引っかかる。アンタって単純な性格なんだから、まずはそこから直しなさいよ…ま、数百年前にも同じようなこと言われておいて無視してるんだけどね〜…?アンタ…いい加減に、ガキ臭いのよ」
楓(圭乃さん、何歳。)
とか思った言葉はグッと飲み込んだ。
確かに…彼が私を連れ去ろうとしないのは、彼からまだ見受けられる優しさが見えているような気がしてならない…
ならなんで何回も来ては戻る…?
童子「……下らん…。俺が嫌いなものを教えてやる。最も非効率で下らんものだ。今、貴様に付き合ってやっている小言も全て茶番だと…やはり分からせる必要があるようだな…?……圭乃ッ…!」
楓「?!だっ…ダメ!!やめてっ!!」
圭乃「楓ちゃん…?!」
童子「…二度ならず三度も…どうやら本気で死にたいようだな…
俺は貴様など殺せれば最も効率的だと思ってるのだが…?」
楓「…そんな事言ったって、脅しだって分かってるから効きませんよ…!
私を殺さないって、分かってますから…!!」
童子「何故そんな下らんことを思いつく。」
楓「下らなくなんかないっ!!
別に、私っ…!!貴方に殺されると思ってないもん!!」
童子「だから何故そんな考えに行き着く」
楓「……勘。」
童子「……は?」
圭乃「え、ちょ、か、楓ちゃん?」
柳「…あの人間の女子、言いますねえ…」
楓「だって、悪い人じゃないもの。貴方。」
童子「…正気か?お前の護衛を2人も使い物にならなくしてやったんだぞ。それを真面に見ていただろ?」
楓「寧ろ手緩い方だと思ってませんでしたか?
だって頭以外を失わなきゃ本当の死じゃないって、教えて貰いましたから。それを敢えて急所じゃない場所を狙った。
それって、実は貴方が優しい人だからで、じゃなかったらあんな意味のないことなんてしないでしょっ!?」
一息で言い終わると後ろで聞いていた圭乃さんが豪快に笑って、しかも柳さんまで失笑気味に肩を揺らして笑っていた。
何事?と思っていると、童子は「はぁ…」と深い溜息を吐いて、額に手を当てて項垂れるような雰囲気を醸し出した。
圭乃「あははは!やぁ〜っぱ楓ちゃんサイコーだわッ!!」
楓「え…?え?」
柳「ふっ…くくっ…!やば、腹捩れるっ…!」
楓「え、そんな?」
童子「……はあ…気が削がれた。
こうなれば意地でもお前の護衛に着くことを懇願してくるとしよう。」
楓「え?え??」
童子「…名前はなんと言ったか」
楓「え?あ…巻坂楓です…」
童子「楓か。覚えた。面白い人間だったと記憶しておこう。
あぁ、それから…あやかし類の者に簡単に真名を下げ渡すな
命が幾らあっても足りなくなるぞ」
楓「え…?あ、はい…分かりました…」
次に瞬きをすると、先程まで対面で話していた童子は居なくなっており、あぁ、あの人も妖怪なのかぁ…と思っていると、未だに笑ってるお二人に冷や汗を流しているとそこへ丁度よく帰ってきた零烙達4人が「何これ、どういう状況?」と頭を抱えた。
零烙「童子が来たあッ?!おまっ…何で言わなかったんだよ?!」
楓「結果的に何もされなかったし、言わなくてもいいかなあって。
それに、誰かから聞くだろうなと思って、何も言わなかったよ。
当たり前じゃん?」
学校にて、先日の圭乃さんと柳さんの爆笑案件を掘り返されたので、その時に童子と会ったことを話した。
百葉「重要事項よ…それこそ。」
ペシ、とノートで頭を軽く叩かれてしまう。
大して痛くもないのに「いて」と言うと、零烙が「ていうか当たり前じゃねえし!当たり前とかねえし!!」と謎に煩いので膝カックンしてやる。零烙がピーピー喚いていると、葉月ちゃんが「ねえねぇ!!聞いたッ?」といつも以上に元気に会話に入ってくる。
零烙「葉月、悪ぃけど今大事な話してて…」
海優「何と!このクラスに転校生が来るらしいよ〜!!」
零烙「おい。聞けよ(怒)」
百葉「転校生?珍しいわね…」
海優「なんか〜、噂によるとめちゃくちゃイケメンらしいよ!!」
楓「へえ…イケメン…。」
海優「壱川くんや百瀬くんとはまた違ったタイプのイケメンだって!!」
百葉「うん、それ本人の前で言わない方がいいよ?」
そんな話をして、例の転校生を呼んだ先生の後に、私と百葉さん、零烙の3人でその転校生を見た瞬間に「あーーー!!?」と声を揃わす。
担任は「何っ?知り合い?」と言った。
みんなの注目の的になってるとも知らずに、零烙が転校生に掴みかかろうとするが、隣の席の百葉さんが何とか止めてくれる。
楓「なんで…ここに居んのッ…?!」
3人(童子ッ…!!)
童子「…初めまして。転校してきた“児玉 椎菜”です。……よろしくお願いします!」
恐らく私が思ってるならあの二人も思っているであろう、「はあああ〜〜〜〜ッ…?!!」という言葉は胸の奥にぐっとしまい込んだ。
波乱万丈の学校生活になりそうだ…。
【登場人物紹介】
巻坂 楓
15歳。高校一年生。本作の主人公で、前作より一年経った後の話である。幼い頃から霊媒体質であり、連れ去られかけたところを零烙に助けられるというのが前作で一年前の話。
高校で初めてできた友達の海優ちゃんが武術の達人と聞いてビビってる。零烙と百葉は護衛という形で同じ高校に通っているが、実はそれを聞かされたのは入学式の前日だった。
しかも零烙達の部屋が契約ミスにより一緒に同居することになってしまう。私の青春ライフ返して(切実)
詳しい内容は前作をご参照下さい!
割と怖いもの知らず。童子にお気に入り認定されてしまう。こんな驚きは求めてない。お帰りはあちらです。
零烙 > 壱川 零十
日本国政府の直結である妖怪退治を専門とした「妖怪退治専門課」の「戦闘タイプ」。戦うとなるとバーサーカー化する。
何気に楓の呼び捨てが嬉しい。
偽名は適当でいいと百葉に頼んだ名前である為に、苗字で呼ばれても名前で呼ばれてもなかなか返事出来ずにいる(本末転倒)。
武器は基本刀、己の身体で倒すことがモットーである。
昔から童子を敵対視しており、それは現在まで続く。
百葉 > 百瀬 葉
日本国政府の直結、「妖怪退治専門課」の「戦闘タイプ」。零烙ほどではないが、こちらもかなりの戦闘狂であるが、零烙がいつも自分以上に暴れるので意図せずストッパー役に回っていることがしばしばある。
楓の零烙の呼び捨ての件については「何それ!?いつの間に!?私も呼ばれたい!!」である。次回作では呼ぶかも。多分。
旭日 > あさひ
日本国政府の直結、「妖怪特定課」に勤務しておりこう見えて退治もするし、報告もするし、下の奴らにも仕事振ってる。
遊び呆けているように見えて実は真面目。今日で五徹目。帰れるかなー。偽名は適当に名乗ってたらそうなってた。花屋さんで働いている。
謎の花屋のお兄さんの正体である。
杜圸とバディを組んでいる。見境なく女にナンパする。
杜圸 > 森山 延久
日本国政府の直結、「妖怪特定課」に勤務。近くの会社などで噂が流れこんでないかなどの特定及び調査により、現在サラリーマンとして潜入中。旭日の自由奔放さと見境ない女へのナンパは正直に言って俺の仕事が増えるからやめて欲しい。偽名は適当。社会人は基本上の名前で呼ばれるから違和感などはない。
日本語は同音異義語だし。
圭乃 >染谷 圭乃
日本国政府の直結、妖怪専門医療班。現在は楓、零烙、百葉のすぐ近くにある大学病院に院長として勤めている。歴の長い人達はある程度、院長以外の仕事をしていることを伝えている。
医師免許は持っているので妖怪以外の普通の治療もできる。
偽名は必要だったので適当に付けた。(今回の話では偽名が出なかったのでここで消化しようと思います)
柳 > 柳沢 戒人
日本国政府の直結、妖怪専門医療班。現在は圭乃と一緒に大学病院に潜入中。階級はどこにあるのか分からない。ただ、圭乃と行動することが多いので院長の付き添いみたいになっている。
うっかり下の名前で呼ぶので周りからは恋人同士と囁かれてることに気づいている。圭乃も気づいてるが、毎度訂正してもキリがないと判断。
偽名は必要だったので適当に付けた。(圭乃同様、今回は出なかったのでここで消化します)
童子 > 児玉椎菜
日本国政府の直結、妖怪退治作業課。
今まで楓を力尽くで奪おうとしたが、楓の顧みずな台詞に圧倒されて面白くなった為に楓と同じ学校に入学することに決めた。
現在、上と掛け合って作業課に楓を引き渡すように“脅している”。
かなりのイケメンなので隠れファンクラブがある。零烙と百葉に敵視されてるのもガン無視で楓にアプローチする。
葉月 美海
楓のクラスメートで友達。ふわふわしていそうに見えてこう見えて武術の達人。空手黒帯、剣道上段、居合準範士、などの数々の賞を受賞している。因みに高校では一つの部活にしか入れないのでどこでも助っ人に入っている。
しかも極道の娘というギャップが凄すぎるところのお嬢様。中学の頃は自分の実家が分かっていたので、同学年の子達からは遠巻きにされて腫れ物扱いされてきた過去がある。
楓のことが大好き。壱川くんと百瀬くんの関係をしつこく責めてくるが、ここで新たな勢力の児玉くんが転入してくる。
実はこの子も後から巻き込まれてしまう不運な子。
【続・お掃除は妖怪退治専門課にお任せ下さい。】
【読み切り*1】は如何でしたでしょうか?作者の◇カラノ△と申します。
今回は、前作の続編ということで「続・お掃除は妖怪退治専門課にお任せ下さい。」と題して、前作「お掃除は妖怪退治専門課にお任せ下さい。」その後の話を執筆致しました。
改めましてまだまだ“小説家になろう”に不慣れな若輩者の作者ではありますが、こちらの話は“pixiv”様、“エブリスタ”様にも公開させていただいている作品です。その為、使い勝手があまりにも違いすぎて粗相など犯していませんことを切に願って…
こちらの“小説家になろう”では、有名なラノベ作家様が多数いらっしゃる…との事でしたので、そんな偉大なる先輩作家の皆様を見習って、こんな作品をぜひぜひ支持していただけますと幸いですm(*_ _)m




