【読み切り*1】お掃除は妖怪退治専門課にお任せ下さい。
初めまして、この度は、「お掃除は妖怪退治専門課にお任せ下さい。」をご覧くださりありがとうございます。作者の◇カラノ△と申します。
今回はお試しとして、読み切り版を1、2と投稿させていただきます。行く行くはシリーズとして本格的に始動させたいと思っております。また、今しばらくお待ちくださいませ。
以下より本編となります。
壱.不思議な彼らとの出会い
いつもの学校の帰り道、私はふと、禍々しいものに惹き付けられるように…覚束無い足取りでその場所へと誘われる。
巻坂 楓
来年の春から花の高校一年生…その筈が…
楓(ああ、まただ…また、体が言うことを聞いてくれない…
私、この歳で死んじゃうのかな…?そんなの、嫌だよっ…!!)
強く、そう、強く願ったのだ。
その瞬間、辺りが眩くなる。
同時に体の抵抗感が戻って来て、肩の力が抜けていくのが分かった。
そして息切れや動悸がして、視界が畝る。
楓(た、助かった………?)
だけど、何で――――――…
?「おい、お前一人か」
楓「……ぇ…あ、貴方は…」
?「喋れるみたいだな。何があったのか聞いてもいいか?」
その男の人は、私の手を掴んで引き寄せた。
そして、後ろに居る“得体の知れない何か”を日本刀のようなもので斬り裂くと、耳につけている無線イヤホンに話し掛けていた。
その斬り伏せ方が、まるで…この世の者ではない“何か”を見ているようで…けれど、いつもの嫌な感じと気配ではなく、まるでそれは…
“神様”のように似た気配もしたし、同時に違うような気もした。
?「もしもし、あぁ、今の一体で最後だったようだ。
少し想定外の事があったが、大丈夫だ。
…あぁ、マル秘を保護した。…いいや、先天性のものと思われる。現に、アイツら見ても叫びもしなかったし、俺を見ても動揺しなかった。」
楓(…私の事を言ってる…?)
それにしても、いつまで私を肩に抱いてるつもりなのだろうか。
割とこの格好も恥ずかしいのだが…ってまぁ、こんな人気の無い路地裏じゃ、人目を気にしなくてもいいか…。
そう思っていると、その男の人は「おい、自分の名前言えるか」と聞いてきた。私はその男の人の艶のある漆黒の瞳の色に目を奪われた。
男の人は一度首を傾げて、もう一度「おい!」と言った。
楓「わっ…!?ま、巻坂…楓、です…」
?「…聞こえたか。あぁ、調査を頼んだ。
ああ。分かってる。あぁ。」
そう言って、無線イヤホンから手を離して、私の目をじっと見つめた。
?「お前、何者だ?」
楓「えっ?」
?「何故こんな所に居る。普通の人間なら、そう易々と辿り着けない場所なんだぞ、ここは…。」
楓「え、えっと…な、何を言って…」
本気で混乱しかけたその時、私を助けてくれた男の人よりも幾分か身長の高い白い長髪の男の人が、その男の人目掛けて脳天チョップをした。
?「なーにやってんの!!女の子怖がらせてッ!!」
?「いっだァ?!……〜〜〜っ…!!
ってェな!!何しやがる!!この馬鹿力!!」
?「それはこっちのセリフよ!女の子怖がらせて、挙句の果てにはガンまで飛ばして!!ごめんね、貴女。怖かったでしょう?」
楓「(お、オネエ…?)い、いえ…あの、貴方々は、一体…」
“誰ですか”、そう言おうとしたその時、背後から禍々しくて嫌な気配を感じ取ると即座に振り返った。
その“得体の知れないモノ”は、私を見つけると「ミィイツケタアアアァ…」と言いながら、口を大きく開いた。
原型の分からないソレは、デロデロで…真っ黒で…異臭を放っていた。
?「零烙!!」
「言われなくても分かってる!!波アアアアアッ!!!」
先程まで彼が持っていた日本刀は大きな鎌に変わって、“得体の知れない何か”を脳天から振り下ろし、かと思えば、さっきの長髪の男性を彼が「百葉!!」と呼び、その“何か”を胴体ごと斬った。
目にも止まらない速さとコンビネーションで、その“何か”を圧倒して行った。何なんだ、この人たちは…。
「まだ残ってやがったのか…」
「いや、それにしては弱すぎるのが引っ掛かるわ。
低級霊じゃない?」
楓(“低級霊”?あれが、霊?)
そう言えば、この男の人はレイラクって呼ばれてたし、この長髪の男性に関してはビャクヨウとも呼ばれていた。不思議な名前だなぁ…と思っていると…不意に、零烙と呼ばれたその人は私を見つめて「まさか、此奴を狙って…?」と言った。
あれ、そう言えばさっきも…私の事を誘ったのはいつもの何かだった…
けれど、今日だけは何故か…
“おいで”…“おいで”…と呼ばれているような気もした。
百葉「調べてみる価値はありそうね…。
ねぇ、貴女…私は百葉。貴女の名前を、教えてちょうだい?」
楓「…巻坂楓です…あの、今の言葉って一体どういう意味で…」
零烙「お前、彼奴らの何を知ってる?」
楓「え?…それはどういう意味で…」
百葉「ほら、零烙。そんな言い方じゃカエデちゃんも怖がっちゃうでしょうが。兎に角、場所を変えましょう。
このままこの人通りの少ない場所に居たら、また奴らに見つかってしまうわ…。悪いんだけど、人通りの多い道まで行かない?」
そう言って零烙さんを一括した百葉さんの言葉に、私は頷いて二人の後を着いて行くことにした。しかし私はそこで気づく。
楓「ここ…さっきまで入り組んでた道だったのに…ここは行き止まりだったのに…どうして急に道ができたの…?」
零烙「急になんかじゃねえ。お前、謀られてたんだよ」
楓「謀られる…?それって、一体誰に…」
零烙「俺達は奴らのことを、“禍憑”と呼んでいる
其奴らに、お前は謀られてたんだ」
楓「禍憑…そんなものが、どうして私を狙ったりしたんだろう…?」
零烙「それが分からねえから、お前にこうして直接聞こうとしてんだろうが。ちょっと考えれば分かることだろうがよ」
そう言われて、私は何も言い返せなくなってしまう。
が、百葉さんは零烙さんに「そんな乱暴な言葉でカエデちゃんを威圧しないでよ」と言って、零烙さんを叱っていた。
私は、一体…そんなモノにどうして命を狙われてしまっているのだろう…?そんな事を頭の中で考えていると、百葉さんが「通りに出るわよ」と言った。一気に差し込んでくる夏の陽の暑さに、喉の乾きを覚える。
不思議だ…さっきまであんなに寒くて湿っぽいところに居たはずなのに…今では夏の暑さが戻ってきたようだった。
しかし、寒くて湿っぽい場所なんてのはまず日本にはないはずだと思い直し、私はおかしな場所に迷い込んだのだと思い直した。
零烙「あんな所に人間が居るなんて…俺は聞いちゃいねえぞ。
だから気分良く奴らを相手してたんじゃねえか、違ェのかよ、百葉。」
百葉「ちょっと…待ってよ。私だって、こんなの初めての事例すぎて分かんない事だらけなのよ。そんなに急かさないでちょうだい。」
零烙「アンタが出て行ってもいいっつったから、こっちは気持ち良く相手してたんだろうが…!!
それなのに、何だって“あんな場所”に人間の女が迷い込むんだ…!?
つか、見れば見るほど普通の人間の女じゃねえかッ…!
何でこの女が、奴らに狙われるんだよ…!?」
百葉「お願いだからちょっと黙ってよ。
私も今、上と掛け合ってる状態なんだから。
あぁ、ごめんね。カエデちゃん。
疲れただろうから、そこのベンチでゆっくりしていて、ね?」
百葉さんのその言葉に、私は「あぁ…はい…」と言って言われた通りにベンチに座って休んでいると、尚も捲し立てる零烙さん。
そしてそれを何の気なしに躱す百葉さんという構図。
…不謹慎だけど、こういうのに慣れてるのかな、とか思いつつ。
百葉「はぁ…今、応援で駆け付けてくれる子に連絡取ったから…その前に、少しお話しましょ。まぁ、私達から聞きたい事は山程あるのだけど…
貴女は、きっと私達が何者かも知らずに居る訳だし、貴女から私達に質問してみて?私達も、何か知れるかもしれないし。」
零烙「ハッ…下らねぇ…馬鹿馬鹿しい…。」
百葉「零烙。そういう事言わないの。
あ、このバカは気にしなくてもいいからね♪」
零烙「おいッそりゃ誰の事だ!?」
百葉「あーら嫌だ、気付いてなかったのね。おバカさんでニブチン♪」
零烙「この野郎ッ…!!!」
楓「あ、あのっ…!私、もう、家に帰らないと…何ですけど…」
何故か分からんが、私は挙手してしまって百葉さんと零烙さんが見合わせてから、私の方に視線を戻した。
百葉「悪いけど、それは出来兼ねるわね」
楓「えっ…?な、何でですか…!?
また、さっきの禍憑って奴が襲ってくるからですか…!?」
百葉「いや、それもあるんだけど…」
零烙「お前自身が危険材料になってるかもしれねえ。
そう易々と簡単に帰せるわけねえだろうが。」
楓「そ、それって…遠回しに、私が奴らと知り合いかもしれないってことですよね…?わ、私はあんな奴ら知りませんからねっ…!?
寧ろ、昔っからああいう奴らに絡まれてきて迷惑してるんですから…!」
そう言うと二人は気付いたような表情をして、百葉さんが屈んで座ってる私と目線を合わせてから、私の肩に片手を置いた。
百葉「それって、どのくらい昔から?」
楓「え?えっと…物心着いた時から、もう、当たり前に居る存在でしたし…当たり前に襲ってくる存在でもありました、かね…?」
零烙「なんだよ、かねって。
そんな曖昧な返答じゃ、判断材料にもならねーじゃねえか。
お前、本当に教える気あんのか?」
楓「そ、そんな事言われても…」
百葉「ん〜…じゃあ、やっぱり無線で言ってた零烙の、「先天性のもの」って仮説にも辻褄が合うわね…。
それに、あんな気持ち悪いものを見て、動揺も叫びもしないし、何よりも嘘ついてるって目じゃないわね。」
そう言って、百葉さんは私の額を軽めにデコピンした。
軽くとは言っても、割と良い音はしたし痛かった。
てか何でデコピンされたし。
それからありとあらゆる事を二人に話した。
今まで、人に話せば気味悪がるだけか笑われるか、信じてくれないかの三択しかなかったのに、この二人はそれを真っ向から信じてくれてるのだ。いや、まぁ、私がいつも見てる奴を斬ったって事で信じてくれるのかもしれないけど。
でも、きっと…この人達は…
楓「あの、それで…結局貴方々って何なんですか…?
さっきの霊?だって、簡単に斬っちゃうし…
どう見ても普通の人、じゃ…ないですよね…?」
零烙「お前はあのゲテモノを斬りまくった俺達を見て、普通の人間だと思えるのか?だとしたらその感性がヤベーな。」
そう言われて、私は少しだけムッとする。
この人の言ってることは多分真っ当なんだろうけど、言い方が凄く気になる。もう少し優しく言ってくれてもいいだろうに……。
百葉「ほら、そういう事言わないの。
私達はね…ちょっと特殊なところで働いてる人達なの。
あと、私達は“人”じゃないわ。」
そう言われて、脳裏を過ぎる零烙さんの剣捌きの姿を思い出す。
『“神様”のように似た気配もしたし、同時に違うような気もした』
楓「人じゃないって言うなら、じゃあ……」
二人「……」
楓「…“神様”……?」
そう言ったあと、暫くの沈黙時間が流れる。
あれ、何か私…変な事言ってしまったんだろうか。
そんな事を思っていると、百葉さんを筆頭に大笑いするお二人に目が点になってしまう。零烙さんは口許を手で抑えて笑う始末だ。
何だろう、言い知れない怒りが沸々と腹の底から込み上げてくる。
百葉「アハハハ!私達が神様?ははっ、面白いこと言う子ねぇ
惜しいけどちょっと違うわ。
私達は神なんかじゃない」
楓「え」
違うの…じゃあ…
楓「じゃあ…あれは一体――――」
そこまで言いかけると、この二人の助っ人だという人が駆け付けた。
何やらPCを持ってゼェゼェハァハァと大分酷い息切れを起こしている。
だ、大丈夫かな…この人に説明して貰うので…?
百葉「ごめんなさいねぇ〜、急に呼び立てて…」
零烙「おい…何でよりにもよってこの人なんだよ?
杜圸さんとか居ただろっ!」
楓(また知らない名前…。)
?「よりにもよってとはどういう意味だ。
俺じゃ不満かよ?
釣れないなぁ、一緒に行動してた時期もあったじゃねえか」
零烙「いいいッ?!気色悪ィ言い方すんな!!
ただ単に俺の教育係だったってだけだろうが!?」
楓「教育係…って、もしかして普通に働いてる人達…?てか、大鎌とか日本刀とか振り回してるからただのイタい集団だと思ってた…
違ったんだ…」
百葉「ハハッ…随分直球なことを言う子なのね…。まァ、傍から見てしまえばそう見えるのも不思議ではないかもしれないわね…
それで、何か分かったのかしら、旭日くん。」
あさひ…この人の名前か…。
旭日「あぁ、何とか分かった…が、これは人混みの中で話せる内容じゃない。なので、この子にはウチまで来てもらうことになった。」
零烙「はっ?ウチって…ウチのことかよ!?
そこまでしなくたって、近くにあるカフェとかでッ…!!」
旭日「駄目だ。こればかりは最高機密事情だ。
分かってくれないか…。それに、この子はどうやら禍憑に…ある意味本当に狙われてるらしいからな…」
零烙「そりゃあ、俺と百葉さんで退治したから分かってっけどよ…」
百葉「だけど、あの狙い方は尋常じゃなかった…」
旭日「それも合わせて説明したいと思っている」
そう言って、旭日さんは私達を車の中に案内して、私と零烙さんが後部座席に座る。運転手は旭日さんで、助手席には百葉さん。
五人乗りの車か…まぁ、自動車だと割と広い方なんだけど…
楓(この人達が屈強な体格すぎるせいで、凄く狭く感じる。)
自動車ってもうちょっと広いものだとばかり思ってた…。…さっきみたいな、退治?みたいな事をしているから、体格が良くなってるのかな…。
チラッと零烙さんを一瞥すると、ムスッとした表情で腕を組んで座っていた。ついでに横柄な態度で足まで組んでいた。
零烙「それで?最高機密事情ってのは何なんだよ…」
旭日「零烙と百葉には既に通達してあるから分かってると思うが、
一年後に行われると言われている“百鬼夜行”の生贄が見つかった。」
そう言った旭日さんの言葉の後に、零烙さんと百葉さんのお二人が目を開いて、旭日さんの言葉に続いた。
百鬼夜行…?って、あれか…
昔の妖怪達の大群だったか…
あれ、でもそれって最早現代になってからは見間違いの可能性の方があったって…まぁ、昔の事だから分からない事だらけだけど…
それがどうして…
零烙「まさか、その生贄ってのが…此奴か?」
そう言って指差してくる零烙さんに、私は一瞬、何の事だか分からなくてぽかんとするが、それ以前に“生贄”という単語が気になる。
……え
楓「えっ…わっ、私ッ?」
百葉「成程…だから奴らは執拗に狙ってきたのね…」
え、ちょ、えっ
楓「な、何で私が狙われるんですか…!?
それに、百鬼夜行の生贄って、何の話ですか…!?」
零烙「…旭日さん。説明してもいいか?」
旭日「ああ、この際、巻き込まれて困ってるのは彼女本人だ。
包み隠さず話した方がいいだろう。」
そう言うと、私に話をしてくれる百葉さん。
百葉「先ず、私達はあの禍憑って奴を倒す仕事をしている。
奴らは負の塊で、人間の生気を奪い取る事をしているから…人々を護る為の仕事をしているのね。それは日本という政府から直々に頼まれている。選りすぐりのエキスパート達が奴らを倒すことに日々奮闘しているわ。
けれど、この組織自体は歴史を遡るとずっと昔から居てね…
今から三百年ほど前、江戸時代の終わり頃から大正や明治まで活躍していたの。禍憑は負の塊だけど、それを形成しているのが“あやかし”…
要は、妖怪ってことね」
楓「よ、妖怪、ですか…?」
百葉「そう。その妖怪は、元々は人々の負の感情から生まれたもので、それを派生させているのが禍憑という存在なの。」
零烙「そして禍憑は、人々の負の感情を取り込み力を付けて行った。
それだけだったならまだ良かったんだが…大正辺りから、負の感情だけでは禍憑の真の力が発揮できなくなってしまい、人々の生きる気力を吸い込んで、人々を襲うようになった。
その前から、組織は禍憑とあやかしの退治をして来たが、江戸時代に入るとあやかし達は膨大な霊力を身に付け、後に“百鬼夜行”と呼ばれる歴史的事実まで作り上げてしまった。これが今でも続く百鬼夜行の所以だが…
近年、その禍憑が再び百鬼夜行を行うとされていることを上層部から聞いた組織は、その百鬼夜行に利用されるであろう“生贄”の存在を知らされた。生贄は禍憑やあやかしにとって格好の獲物…何故かと言うと…」
旭日「生贄は、現代において稀に生まれる“霊力量”が多い者が選ばれる。手っ取り早く強くなれるっていう、その力を付けたいからな。
だから、生贄は国全体で護る事になったんだ
その情報が知らされたのはもう三十年も前だけどな」
百葉「一向に現れない生贄を、本当は居ないのではないかと思っていたんだけど…今回、貴女が禍憑共に狙われているので確信したわ…。
彼奴らの狙いは貴女で、その理由は百鬼夜行に利用する生贄だから」
楓「私が…生贄……。」
零烙「つか、そんなに霊力があるようには…全然見えねえけどな…?」
零烙さんから上から下を見回して、一瞬引いたがそれよりも背筋が凍ったのは、さっきの得体の知れない輩に狙われているって言うことだ。
そんな化け物に、どう対処したらいいって言うのよ…!?
旭日「彼女の霊力量はそんなものじゃない…
恐らく、無意識に自分の力を抑制しているのだろうが…普通の人間と違って身体から溢れ出る霊力に惹き付けられたのだろう…
だから彼女が狙われた…」
百葉「成程ね、じゃあ納得だわ…。
でも、この話をするなら車の中でも良かったんじゃない?
何もこの子をウチまで連れていく必要は…」
旭日「それが大いにあるんだよ…」
百葉「え?それって…」
旭日「彼女が百鬼夜行の生贄だと分かった以上、彼女を一人きりにするのは危険だ。監視と護衛が必要って意味だな。」
百葉「…あぁ…成程ね…。んー…
ねェ、楓ちゃん?貴方のお家って、門限とかある?」
楓「え?あ、はい…平日は六時ですけど、休日は六時半…とかですね。」
旭日「今日、平日だったか?」
零烙「…8月3日、木曜日、現在5時50分。悪いな、諦めろ。
家には連絡でも入れておけ」
楓「ちょ、こ、困りますっ…!
うち、施設だから…門限を破ったりすると学校以外に外に出して貰えなくなったりするからっ…!」
零烙「じゃあ、不測の事態が起きたって、俺が連絡してやるよ」
楓「はっ、はあっ?!何勝手なこと言ってるんですか!
やめてください!」
零烙「じゃあお前、このまま殺されてもいいってのかッ?!」
そう言われて吃驚して肩が上下する。
そりゃあ、出来ることなら…
楓「殺されるのも、死ぬのもごめんです…だけどっ…!
先生達に、心配掛けたくない…!」
百葉「…スマホ貸してちょうだい。私が連絡入れるわ。
どうせ零烙の事だから喧嘩腰になっちゃうでしょ?
楓ちゃんが非行に走ったと思われたらこっちとしても困るわ。
貴女を護る手立てがなくなるもの」
楓「……家に、帰りたい……」
百葉「……ごめんね、こっちの都合で振り回しちゃって…。でも安心して、貴女の事は絶対に護るから。」
私はそう言われて、何故か緊張の糸が切れたように体がふっと軽くなった。不思議な人だな…さっきから百葉さんは、私の目をちゃんと見てくれる。昔っから霊媒体質な私は、周りの子達からも大人からも変な子を見る目で見られていた。
実際、見えも聞こえもしないものに怯えていたのは本当だけど。
それでも、信じてくれる人は誰一人としていなかった。
今まで……。だけど、今は――――…
施設にいる年下の子供達を思い出して、胸が張り裂けそうな思いになる。きっとあの子達も心配してるはずだ…
年上のお姉ちゃんお兄ちゃんも…。
理解のある人が、電話に出てくれたら良いんだけど…
そう思いながら、百葉さんにスマホを渡した。
電話を掛けて事情を話すこと約数分。
意外に淡々と話すところを見て、あぁ、百葉さんは大人なんだと思ったし、零烙さんの心ない言葉も裏を返せば、心配してくれてるようにも思えた。少しずつ、自分はこの先、どうして行ったらいいのかとかが分かってくる。
零烙「正直、根を上げたら護衛なんてする気なかったんだが…
何でだろうな、あの女だけは護りたいとか思ってる」
旭日「……零烙くん、それは恋じゃないかね?」
零烙「……アンタは何を言ってんだ」
旭日「あれ、割と真剣に言ったつもりだったんだけど、あれぇ…?
これ俺が怒られる系…?」
零烙「本当に何を言ってるんだ。」
旭日「!……(何でぇ…顔、めちゃくちゃに真っ赤でやんの…)……いやぁ、お兄さんは応援するよォ〜?」
零烙「はっ?って、肩に手を掛けるな!やめろ!年上ヅラするな!」
旭日「いや、実際君より年上だし。」
――――弐.不思議な彼らの正体]
零烙さんと百葉さんに助け出されてから数日が経ち、やっと慣れてきた頃に旭日さんが組織のことを粗方教えてくれた。
案内、説明…そのどれもがいまいちピンと来ないが、頑張って覚えようと思い、脳みそをフル回転させていると、旭日さんが振り返った。
旭日「取り敢えず、一通りの案内と説明はしたから…後で夕飯が出るから食堂に来てね。その時に諸々のことを教えるから。」
楓「はい。何から何まで、ありがとうございます…」
旭日「いいえ〜。あぁ、あとね、それから…この中に好きな奴が出来ても手出しちゃダメだからね?」
楓「……えっ?!」
旭日「ありゃま。顔真っ赤になっちゃった。まぁ、頭の片隅に置いておくだけでいいから。それ以上でも以下でもないから。
覚えておいて欲しいってだけ。」
楓「なっ、そっ…!!そんな事しませんよッ!!どんな野蛮人だと思ってるんですか!?心外です!!」
旭日「あっはっはっ!!そのくらい元気があったら大丈夫そうだねェ〜。まぁ、ここは男だらけだから。とって食われないように気を付けてね♪」
楓「っ…そっちの心配されるんだったらまだしもッ…
私はそんなに肉食じゃないですからっ…!!
っていうか、何の話ですか?これ…!?」
旭日「あれ、割と重要よ?」
楓「どこがですか…!?」
旭日「いやぁ、別に食われてもいいってんなら、また話は別だけどね?ほら、例えば俺とかに?」
楓「!…じょ、冗談ですよね…?」
旭日「…どうかな…?」
楓「ッ…」
?「おい、何やってんだ」
旭日「!……ありゃあ〜…来ちゃったか〜…」
楓「…ど、どちら様で…?」
?「うん?…あぁ、アンタが例の…生贄」
楓「えっ(よ、呼び方!!)」
そうかもしれないけどッ!!
旭日「ほらほら、女の子にそういう言い方はナンセンスだよ?
杜圸ちゃあ〜ん♪」
もりやま…って、あ、零烙さんが言ってた…
まだマシな方…って、私も大概か…。
杜圸「呼び方なんぞどうでもいいだろう。
というか、旭日。また書類を溜め込んだだろ!
いつも誰が片付けてると思ってるんだ!
今日こそは自分で片付けてもらうからな!」
旭日「えぇ〜?またまたァ〜!
いつも杜圸が片付けてくれるじゃ〜ん?」
杜圸「尚更自分で片付けろ!!
お前が仕事しないせいで、後輩に示しが付かないだろ!!
それに女を口説く暇があったら書類の片付けやらなんやらやることやってからにしろ!!いやていうか寧ろ口説くな!!」
旭日「え〜?俺に口説かれて靡かない女の子いる?」
そう言ってじっとこっちを見つめる旭日さん。
楓「……私ですか?!」
杜圸「幼気な子供を困らせんな!!
ってかお前の見た目で女子中学生を口説いてると色々と通報されかねないんだよ!!守備範囲広いのも大概にしろ!!」
旭日「杜圸ちゃん、いっぱい怒って疲れない?」
杜圸「大概お前のせいだよ!!自覚しろ!!」
楓(な、なんか凄いとこ来ちゃったな〜…。)
杜圸「!あぁ、悪い。
もう色々と終わったあとならこのバカ、貰ってくぞ。良いか?」
楓「!あ、は、はいっ!」
ってか何気にバカって言った…。
政府で働いてる人だし、偉い人、なんだよね…?
う〜ん…何だかよく分かんないなぁ…。
百葉「あ、ここに居たのね。カエデちゃん。」
楓「!百葉さん。どうしてここに…」
百葉「どうしてって、ここ一般通路よ?私だって通るわ。」
楓「あ、そう言えばそうでしたね…
あれ?そう言えば、零烙さんは…?」
百葉「あぁ、零烙なら単独任務があるからそれに行ってきたのよ。
三十分もすれば帰ってくるわ。」
楓「へえ…。なんか、大変そうですね…色々と…
それなのに、私の事まで護衛して頂いて…なんか…」
百葉「…居た堪れない?」
楓「!…だって、私はついさっきまで普通に生きてた一般人だし…。」
百葉さんにそう言うと、彼も少しだけ懸念していたのか、私の目を見て「それもそうよねぇ…」と言った。
私はそれに返すことも出来ないでいると、百葉さんはでもね、と言う。
百葉「それに長年悩まされてきたのは、紛れもないカエデちゃんじゃない?だったら、その悩みを払拭するのも丁度いい機会じゃない?
それに、私達は人の命を守る為に集められた組織の一員なのよ?
人々の心を救う事だって出来るのよ。
ね?だから、そんなに暗い顔してちゃダメよ。
折角の可愛いお顔が可愛くなくなるわ」
楓「…やっぱり、百葉さんは不思議な方です…」
百葉「!私が不思議って…どういう事?」
楓「…なんか、優しいお姉さんみたい。
私、ずっと施設育ちだから…そういう優しいお姉ちゃんとか、いっぱい居たから…って、ご…ごめんなさい、急に…。」
百葉「…私は、優しくなんてないわよ…」
不意に顔を俯かせて表情に曇りがかった時、私が「え?」と聞き返したら、百葉さんはさっきまでの表情が嘘のように消える。
百葉「なぁんて!嬉しいこと言ってくれるじゃないの!
ま、何か分からないことがあったらこの“お兄さん”に任せなさいって!なんでも言ってね。教えられることは教えるから。」
楓「!…はい」
心做しか“お兄さん”という言葉を強く言ったのが引っ掛かったが、私はそれを気にする素振りも見せずに当たり障りのないように返した。
――――三十分も経たないかだったか、部屋に押し入ってきた男性が息を切らして、暫くドアの前で立ち塞がるように立ち止まる。
楓「えっ…?」
あれ、この気配…
楓「…零烙さん?」
呼び掛けると、男性はふっと私の顔を見る。
やっぱり、零烙さんだ。
どうしてこんなに傷だらけで…
楓「け、怪我してるじゃないですかっ…!は、早く手当てをッ…!」
そう言って近付いて零烙さんに手を伸ばすが、その手を掴まれて立ち止まる。零烙さんは息を切らしながら目を閉じる。
零烙「…いい…間違えた…悪かった」
その言葉だけで、退室していく。
暫く彼が居なくなって、心配になった私は部屋を出ていくと、血だらけで壁伝いに歩いていく零烙さんを見つける。
楓「零烙さん!!」
零烙「はぁ…はぁ…なんでお前…部屋戻ってろよ…」
楓「こんな怪我だらけで、放ってなんておけません!」
零烙「ちっ…余計なお節介だっつーんだよ…」
楓「零烙さんッ…!!」
?「零烙!!」
聞き慣れない女性の声が聞こえてきて、私は振り返ってその声の主を見つめる。白衣を着たその女性は、零烙さんが「よし、の…」と呼んで壁に寄りかかったその瞬間にずり落ちる。
よしのさんという女性が零烙さんの身体を支えると、後ろから若い男性が駆け寄ってきて「圭乃さん!」と言った。
圭乃「ったく…!こんなんなるまで無茶して…!!
零烙を運ぶわ、柳!担架を持ってきて!」
やなぎと呼ばれた男性が「分かりました!」と言って、一旦はこの場を去る。そして壁際に零烙さんを座らせると、服のボタンを一個ずつ外していく。腹部には大きな傷跡があって、見るだけで吐き気を催してしまう。
…切疵と呼ぶには余りに大きな刃物で切られたようだった。
楓「れ、零烙さ…!!」
圭乃「…貴女、例の百鬼夜行の生贄の子ね?
名前は?」
楓「!ま、巻坂…楓です…」
圭乃「そう。私は圭乃、楓。
今から私の言う通りに動いて欲しいのだけれど。」
そう言われ、私は思考が停止しかけるも、圭乃さんから「手伝ってくれるの?くれないの?手伝わないなら部屋に戻って」と言われてしまい、
このままここで何もしなかったら、一生後悔するかもしれない…そう思い、私はやります、と返事をしていた。
圭乃「良い返事。そこに水道水があるから、バケツに水を多めに入れてきて。あとコップも持ってきて!」
そう言われて私は返事をして、彼女の指示に従う。
――――色々としていたら、いつの間にか零烙さんは救護室に運ばれて横に寝かせられていた。ほう、と息を吐く。
圭乃「…よくやったわ。初めての事だらけで、よく発狂せずに私の指示に従ってくれたわね。ありがとう。」
そう言われて、私は圭乃さんの横で涙を流してしまう。
圭乃「……ごめんね、こんな事…出血だって初めて見る子にやらせるべきじゃなかったわ…。だけど、私は後悔してない。
…貴女は?楓。」
楓「っ…わ、私も…!!後悔はしてませんッ…!!
零烙さん、助かりますよねっ?」
圭乃「処置が早かったから大丈夫。絶対に助かるわ。
それよりも、私はあの子に灸を据えてやらないとね。」
楓「え、灸って…」
柳「あ、ここに居らっしゃいましたか。圭乃さん…と…
巻坂さん、でしたよね?」
楓「!あ、はい。巻坂楓です。貴方は…えっと…」
柳「柳です。この組織では医療班を担当しています。
圭乃さんは私の先輩です。」
楓「あ、ということは、圭乃さんも医療班なんですね…!」
圭乃「あぁ。それより、零烙の任務は単独での簡単な仕事だったはずよ。どうしてあの子があんなに大怪我を…」
柳「それに関して、想定外の事があったらしく…零烙さんが、応援を呼ばなかったことで大怪我を負ったらしいです。」
楓「えっ…!?」
圭乃「はぁ〜…!そんな事だろうと思った…
やっぱり灸を据えてやらないと……。」
楓「…どうして、零烙さんは…そんなにも死に急ぐようなことをしてしまうんでしょうか…?私と初めて会った時もそうでした…。
彼は、何かに追い詰められているみたいです…」
圭乃「…そうね、普段の零烙ならしないミスだわ。
恐らくだけど、無意識に頼るということをしなかったのではないかしら…。それもこれも…私達の特異体質の所為かしら。」
楓「!特異体質…ですか…?」
柳「圭乃さん、それって教えていいことなんですか?」
圭乃「どうせ、遅かれ早かれ知る事になるわ。
それに、この子が何も知らないのは公平じゃない。
何より…零烙の事を心配してくれるみたいだしね。」
楓「……私は……」
圭乃「あのね、私達…人じゃないのよ。」
楓「…えっ?」
急に何を言い出すんだと思うと、柳さんは眉間に皺を寄せて「どうなっても知りませんよ…」と言った。
…どういう意味だ…?
圭乃「楓は百葉とかから聞いたと思うんだけど、江戸時代の百鬼夜行に、妖怪が行列するように闊歩していた時代は、本当にあったの。
現に私達はその百鬼夜行に参加したからね。」
そう言った圭乃さんは、とても嘘をついているような目ではなく…
なんなら、柳さんも「懐かしいですね」と言った。
圭乃「もう三百年も前になるのかしら…。当時、何も面白いことがなかった私達にとって、人々の悲鳴と恐怖は唯一の楽しみだった。
けれど、それを楽しみだと捉えずに、ただ人間を恐怖のどん底に突き落とそうとするあやかしや禍憑の考えに納得が行かなくなって、私はあやかしという部類から退けたくなった。まして、奴らと同じ物だと思われるのも嫌うようにもなったわ…」
楓「……そんな事が…」
圭乃「だからね…今度は、恐怖に追いやる同族から、人間を護りたいと思うようになった。都合の良いことだって分かっていても、私達の存在は居ると思ってくれた人間が居たから、今の私達がある。
その人間を始末しようとすることの利害は一致しなかった。
その事を他のあやかし共に伝えたら、私は同族嫌悪をする者だと言われ、それ以来、同族からは目の敵にされているの…。」
柳「私は、そんな圭乃さんに憧れて着いてきたんです。」
圭乃「今でも柳のことは、馬鹿な事して…とは思っているけどね…」
柳「何とでも仰ってください。
それに、利害が一致したのは私だけではありませんから。」
楓「…あの、じゃあ…零烙さんの正体は…」
――――参.優しくなりたいと願った日
頭がフワフワする…
目の前が陽炎のように揺らめいているようで、目を開けているのですら億劫に感じてきて、思わず視界を閉ざすように目を閉じる。
零烙(くそっ…しくじった…引き際を見誤った…)
こんなの、俺らしくないと分かってる…。
原因を探すのもまた、自分が未熟だと痛感させられる。
数日前、このアジトに転がり込んできた女の事を思い出す。
巻坂楓とかいう、俺の言葉に反論してくる度にモヤつく。
今まで俺を見ると、恐れを成して逃げていくのが大半だった。
今回もそうだと思っていた…だけど、実際はそんなんじゃなくて…
楓『また怪我して帰って来てる…
もう少し、自分を大切にしてください…』
零烙『…任務でおった怪我だ。俺がやってるのは仕事だ…
それを、お前にとやかく言われる筋合いはねェよ』
楓『!でもっ…!』
零烙『いいか、二度は言わねェぞ。
シロウトが首を突っ込むんじゃねえよ
早死したいってんなら、話は別だけどな?』
楓『……ッ…!』
零烙『分かったら、もう何も喋るな』
その時の納得いかないって言いたげな表情と言えば、今思い出すだけでもムシャクシャしてくる。その時は、何とか黙らせることは出来たが…
そんな事じゃヘコたれねェ精神を持ってる楓は、暫く話しかけてきたりはしないだろうと高を括っていると、次の日は普通に話しかけてきた。
圧倒されたし、返す言葉も見つからなくて、楓が「零烙さん、おはようってば。」という言葉にハッとして、思わずおはようと戸惑いながら返したのを覚えている。この数日、時間数を言葉にしてみればなんてことのない日数だけれど、過ごした時間はどんな時間よりも長く感じた。
これは驕りなどではない。あの女に向けている感情は、ただの鬱陶しさでもないことに気がついた。
そうか、俺は――――…
零烙(寂しかったんだ……)
誰にも言えなくて、でもどうしようもなくて、こんな事言ったら誰かに失望されるのが怖くて、そしてまた押し殺した。
自分は大丈夫だって、自分に言い聞かせてきて、そうして楓という女が人のパーソナルスペースに土足でズカズカと上がり込んでくるから、だから、舞い上がってしまったのかもしれない。なんて……
零烙「…何しに来たんだよ、お前…。
“面会謝絶”の文字、読めなかったのか?」
楓「!!…あ、いや、その…」
足音でバレバレだっつの、と言ってやると、楓は表情を暗くさせる。
いつもの楓ならムキになって返すところを、だ。
…割とコイツも、傷心中なのかもしれない。だけど、何に?
まさか、俺に?
零烙「つか、今何時だと思ってんだよ?
緊急の用じゃないなら明日にしろ」
楓「か、加減は…どうかな、って…思って…その…ご、ごめんなさい…」
…ンな訳ないと思いたかったのに…。
色々と予想を裏切ってきやがるな…この女は…
無用に土足で上がり込んでくる割には、こういう顔も見せるのか、と少しだけ舞い上がったのは言わない。
零烙「…お前、このぐるぐる巻きの包帯を見ても、さっきのセリフと同じ事言えるのか?だとしたら眼科に行ってこい。」
楓「零烙さんはタフだって聞いたから…圭乃さんに。」
零烙「……圭乃ォ…!!あの女、余計なこと言いやがって…!!」
楓「わ、私が聞いたんだよ。
だから、そんなふうに圭乃さんを悪く言わないで。
…本当に、体調が悪いなら…また、出直すから…」
そう言って、本当に出て行こうとする楓に、少しだけ引き止めたいという欲が湧いてくる。…割と面倒臭い性格してたんだな、俺って…。
零烙「圭乃に、何か聞いたか」
楓「……何か、とは…何でしょう…?」
零烙「ばっくれんなって…。
俺が意識ない時、なんか聞いたんじゃないのか?」
ほとんどカマかけただけなのに、楓は「実は…」と神妙な面持ちで話し始めたので冗談という間もなく聞きたいことがあると言った楓。
楓「圭乃さんが…零烙さん達は、本当は人間じゃないって…あやかしだって聞いて…本当なのかなって…」
零烙「……彼奴、規律違反もいいとこだぞ…」
頭を抱える。楓は、だから俺がタフなのだと教えて貰ったらしい。
楓「…その、えっと…貴方は、私を助けてくれた訳だし…
だからっ…!無理、して欲しくないって言うか…」
零烙「……人から感謝されたことは山ほどあった。
別にお前が特別って訳ではねえよ」
楓「それは、分かってるけど…!
……誰も信じてくれなかった、居るはずのない人がいるって言うと、周りは気味悪がるか、頭のおかしい子って思われるって…そう言ったでしょう?あれで、私の話を最初から最後まで信じてもらうことが出来て、凄く嬉しかったの…。
だから、特別じゃないとしても…嬉しくて…
こんな私を助けてくれる人が居るって知れて…嬉しくて…!」
そう言った楓の声が震えているのに気がついた。
十五年も抱え続けるのは辛いことだっただろう。
でも、だからと言って特別扱いする気にはなれなかった。
だから、溜息を吐いて勢いをつけて上体を起こす。
動かすとまだ腕は痛いが、他は治療されているのでちょっとやそっとではこのギプスが外れることはないだろうと思い、楓の顔を見る。
零烙「……圭乃から、どこまで聞いてるんだ。」
そう聞いた俺の言葉の後に、楓が上を向いて涙でべっしょべしょになった顔を見せて、少しだけ胸が締め付けられるような感覚を覚える。
楓「え、えっと…零烙さんの種族を聞こうとして、それは本人に聞けって言われました…。圭乃さんと柳さんの種族は聞きました…」
零烙「…この世に存在するあやかしの多くは、大体が力のあるものが現代まで生き残っている。そもそもあやかしに寿命なんてものはないからな。俺は妖狐族の末裔だ。九尾の狐って言った方がしっくりくるか?」
楓「…きゅ、九尾の狐…?」
零烙「ハァ?嘘だろ、現代の人間は九尾の狐も知らねェのかよ?」
楓「い、いや…単純に私が知らなかっただけかと…圭乃さんと柳さんの種族を聞いても、あまりピンと来ませんでしたし…。」
零烙「お前、どんだけ無知なんだ?
あやかしには好かれる体質のくせに。」
楓「それはこっちが聞きたいくらいです…」
零烙「…まぁ、平たく言えば狐のあやかしってことだ。
まぁ、物凄く“馬鹿”でも分かりやすいように言えばなっ」
楓「うっ、言葉の端々に棘を感じる…」
零烙「ま、本来なら知らない方が良いこともあるってもんだな。」
楓「え…?それってどういう…」
そこまで話すと、カーテンを開ける手と同時に「コラッ!!」というよく響く声が聞こえてくる。楓が上下に肩を揺らすと、俺も耳が生えてしまう。やべ、また擬態が上手くいかなかった…。
百葉「やっぱりカエデちゃんと零烙ねっ?
もう消灯時間、とっくに過ぎてるわよ!」
楓「びゃ、百葉さん…」
零烙「アンタ、気配無いからビビんだよッ…!
やめろよなぁ、寿命縮まるかと思ったわッ…!」
百葉「あら、零烙。元気そうじゃない?
自室に戻れるなら戻りなさいよ?」
零烙「…俺、一応怪我人なんだけど…」
百葉「あんだけ大怪我負っといて、今そうやって上体を起こせるなら元気になった何よりの証拠じゃない?
それに、医務室は体調が悪い人や怪我をした人が来るところであって、宿泊するための場所ではないのよ?
分かったならとっとと部屋戻りなさい。ほらほら、シッシッ!」
零烙「今、シッシッて言ったろ!?
虫を追い払うような言い方やめろよ!」
百葉「うるっさいわねぇ〜、今何時だと思ってんの?
夜中の12時半よ!元気ならとっとと戻りなさいよ!全く、ドアに面会謝絶なんて張り紙まで張りつけて!ここは病院じゃないっての!」
楓「あ、あの…それじゃあ、私ももう戻ります…」
零烙「あ〜あ、ったく…!やってらんねぇ〜…!!俺ももう戻るわ…」
百葉「うん、カエデちゃん。おやすみ♪また明日ねん♪」
零烙「俺ん時と、えれぇ対応の違い…」
百葉「ッたり前でしょ!カエデちゃんは女の子で、アンタは男なんだから!まだ追い払うだけ有難いと思いなさいよ?」
零烙「……はぁ…へーへー。どーもさーせんしたー。」
百葉「零烙……?」
零烙「!おやすみ!!(……なんて、馬鹿らしくて…言えねェよ…今はただ、この一時の至福の時が、幸福だなんてことも。)」
楓「!あ、逃げちゃった…
…百葉さん、ちょっと聞きたいことが…」
百葉「ん?なぁに?あ、もしかして私に添い寝して欲しいの?」
楓「え?いえ、違いますけど…」
百葉「そ、即答…傷つくわ…。
…なァんてね、冗談よ。それで?
聞きたいことって何かしら?」
楓「…零烙さんの、知られたくない秘密って、何だと思います?」
百葉「…へ?」
楓「あ、言い方が悪かったかな…えっと…
つまり、零烙さんってぶっきらぼうそうに見えて、実は優しいところとかあるじゃないですか?」
百葉「ま、まぁ…そう、かもしれないわね…え?」
楓「それで、えっと…まぁ、要するに…
私への対応を改めて欲しいので、弱点を握りたいな、と。」
百葉「カエデちゃんて、見かけによらず強かな子なのね…」
楓「え?そ、そうですか…?
自分じゃそんなこと微塵も感じませんけど…」
百葉「本人は感じないものなのよ…。
まぁ、強いて言うなら…儚いものに弱い、かな…」
楓「…儚いもの…ですか?」
百葉「そ。まぁ…自分より弱いもの、ってことかしらね…」
楓「…それは…」
楓「百葉さんの体験談、ですか…?」
百葉「!…え…?」
楓「……あれ、あ、違うか…今は零烙さんの話だもんね…。
ごめんなさい、間違えました。忘れてください…!」
百葉「……“あの人”も、そんな風に色んなことに敏感な人だったわね…。」
楓「え……?」
百葉「……似てるのよ、私の好きな人に、カエデちゃんが」
楓「…私が、似てる…?」
百葉「その人は…身体が弱くってね…。
でも、それ以上に前向きな人だったわ」
楓「…それで、その方は…」
百葉「…死んだわ。もう随分前になるけど。」
楓「!す、すみません…!私、そうとは知らずに…!」
百葉「あぁ、良いのよ。言ったでしょ?
もう随分前なのよ。
私も私で、死人に恋焦がれるなんて、滑稽でしょう?」
楓「……そうでしょうか。」
百葉「え…?」
楓「…少なくとも、百葉さんはその人のことを今でも忘れずに思ってるってことでしょう?だったら、笑ったりしませんよ。」
百葉「!……ホント、よく似てるわ…。」
楓「そんなに似てますか…?」
百葉「えぇ、結構似てるわよ。
でも、あぁ…彼女はもっと血色が悪くって…今にも死にそうな表情をずっとしていたの。カエデちゃんはあの人と違って、健康的な肌の色ね。」
そう言って、百葉は楓の頬をするりと撫でた。
楓「…そうでしょうね。私は、病気を持っていませんから。
…健康的でしょう?」
ニコッと笑った楓に、百葉は一瞬だけ目を奪われる。しかし百葉の手が離れる頃には、「そうね…」とだけ返すことしかできなくなる。
百葉「あ〜あ…。年甲斐もなくはしゃいじゃったわ…。
駄目ね、私ってば…。昔から変わらないよな…君に言われた通りだよ…」
今はもう居ない、彼女のことを思う男が、ただ一人。
ここに佇むだけだった。
肆.因縁の相手
――――預かると言ってこの組織に置かれるようになってもう一ヶ月が過ぎた頃、流石に[[rb:施設>じっか]]から有り得んほどの鬼電がかかってくる。
その内容というのが、私が来春から高校生になるのだから学校に行けという催促であった。いくら義務教育で卒業できるとはいえ、勉強は少しでも遅れたら分からなくなるものなのだと説教された私は、一時帰宅になった。
旭日さんと杜圸さんが護衛に着くという形で。
楓「どうして…旭日さんと杜圸さんが護衛なんですか?
零烙さんは?百葉さんは?他の方じゃダメなんですか?」
旭日「あれ、楓ちゃんは俺が護衛じゃ不満?」
楓「不満というか不穏ですね」
杜圸「…お前、性懲りもなく口説いただろ…
流石に中学生に手を出すなよ。ロリコンだぞ。
援交で捕まるぞ。その内。マジで。」
旭日「あれぇ〜?ここに俺の味方は居ないのかなぁ〜?」
杜圸「日頃の行いを見直せば?」
旭日「正論だけど!」
百葉「なんか言い合いしてると思ったら、またこの人達か…
ごめんね、カエデちゃん。私達、外せない遠征任務があるのよ。
ここも暫く離れないと行けないし、何より零烙は単独行動させちゃダメって上からも言われてるからね。」
旭日「簡単な任務で大怪我負ってくるような奴を推奨する上も上だな。俺だけで十分だとは思わないか?なぁ、杜圸?」
杜圸「…まぁ、実力はお前の方が申し分ないがな…。
零烙の教育と成長の為だ。余り文句言うな。
それに、お前が文句を言える立場もないだろ」
楓「?どういう意味ですか、それ…?」
百葉「あぁ、この人ね。こう見えて昔、狂犬だったのよ。」
楓「…狂犬?」
杜圸「あー、零烙の先代バーサーカー?」
旭日「余計な事言うなよ?お前ら?」
楓(へえ…零烙さんも充分強い方だと思ってたのに…旭日さんの方が狂犬だとか、バーサーカーだとか言われるなんて…
なんか、全然そんなとこ想像できないな…。)
とか、思ってたのに――――…
旭日「チッ…!あ〜、クソ、ミスった…。
はっ、外出るだけでコレかよ…
“出迎え”ご苦労さん、と言っとこうか…それで、去ね…!」
杜圸「あ〜、やっぱ出ちゃったか。まぁ、久し振りの任務だしな。
仕方ないっちゃないか…。」
楓「…あれ、誰ですか?旭日さんじゃないですよね…?」
杜圸「残念ながら同一人物なんだな。これが。」
いや、いやいや…めちゃくちゃ軽々しく飛び跳ねたりしてるけど、普通に跳躍力とか激ヤバすぎでは?
あの高身長でどうやってそんな軽々しさが…
楓(逆に高身長あって故の跳躍力だったりして…)
強ち間違いでもないようで、少しだけゾッとしたが考えるのを止めることにした。すると、旭日さんは何かに気づいたような表情をした。
…え、何…
旭日「杜圸!!」
その瞬間、私は杜圸さんに肩を掴まれて先程の場所よりかなり遠く離れた場所に引き連れられる。杜圸さんの方を見ると、杜圸さんの瞳の中に映る禍々しい靄のような物が気持ち悪く蠢いて、それが私達を襲ってくる。
杜圸「…往生際が悪いな…。やっぱ、禍憑って言葉の通じねェ化物だな…」
楓(…いや、いやいや…)
旭日「ハッ、お前がそれ言うかよ?お前も同じ化物だろ。」
そう言った旭日さんの言葉の後、杜圸さんは仕込んでいた小さなナイフで禍憑に刺していく。え、そんなんで効くの…とか思ってると、禍憑は劈くような、耳の鼓膜が破れてしまうのではないかと思うような悲鳴を上げて、一瞬で泡のように跡形もなく消滅していく。
杜圸「ったく…!出先で禍憑と遭遇とか、本当にこの子の生贄説が濃くなってきたな…!旭日!!」
旭日「ッら…!!……うん、今終わった。」
楓(す、凄い…)
一瞬で制圧しちゃった…凄い…!!
楓(これが、妖怪退治専門課…!!)
百葉『私達は組織で動いてる。でも、その組織でも上からの指示がなけりゃ動けないのよ。前にも話したわよね?
私達の上の存在ってのが、国…つまり、日本の政府ってこと。』
楓『えぇ、はい…聞きました…』
百葉『うちの組織名は「妖怪退治専門課」
…日本に居れば、何処にでも駆けつけるわ。
色んなところに展開してる組織だしね。
あ、でも――――…気を付けて欲しい組織があるの』
楓『気を付ける?』
百葉『えぇ、ウチとは何故か万年敵対してる…』
?「全く…上が上だと、下も下だな。」
旭日「……なんでお前がここにいる?」
?「どうだっていいだろ?」
杜圸「おや、久し振りに見ましたね。
その憎たらしい風貌?」
楓「…?え、何方様…?」
?「成程…その女が“生贄”か…。
悪いが、その女はこちらで引き取って保護させてもらうことになった」
楓「!えっ…?」
杜圸「ハァ…?どういう意味だよ…」
キレかけた杜圸さんの言葉を遮るように前を通る旭日さん。
旭日「…ウチにはそんな話来てない。帰れ。
…“妖怪退治作業課”の童子。」
楓「…どうじ…?」
童子「…随分な言い草だな…」
百葉『それはね、“妖怪退治作業課”よ』
楓『…作業?』
旭日「…覚えがないとは言わせねぇぞ…
その面、もう一度見せたら次はないと思え
…行こっか、楓ちゃん♪」
楓「え、え…?」
杜圸「…旭日、上の確認は」
旭日「楓ちゃんを施設に送ったら連絡する」
杜圸「分かった…」
踵を返して、私の背中をポンと軽く押した杜圸さんの手が、地面に落ちる。
え…?
杜圸「ッ…!!?テメェ…!!何のつもりだ…!?」
旭日「楓ちゃん…!」
楓「…ハッ…ハッ…!も、杜圸さんッ…」
童子「こっちだって仕事だ。手段は選ばない。
生贄は息の根が途切れば、守る必要もなくなる。
…いいから、とっとと…生贄を寄越せ…!!」
楓「杜圸ッ、さんっ…!!」
杜圸「ッ、大丈夫、だから…隠れてて…!」
旭日「杜圸、この手拭い使え」
そう言って手拭いを渡す旭日さん。
杜圸「!すまん…」
旭日「…妖怪退治の全ての課は、如何なる理由があっても“仲間を傷つけてはならない”という規律があるのは、知ってるか?」
童子「知ってるとも。だが――――…
俺は政府に雇われはしたが、その規律に則る必要は無い。
分かるか?お前らとの決定的な違い。
…何しても許されるんだよッ…!!」
杜圸「もっときつく縛ってくれるか…」
楓「ッ、も、杜圸さんっ、これ、病院行かなきゃ…!」
杜圸「はは、俺達は病院行っても治んないって…
…旭日、穏便に事を済ませろよ?」
旭日「だからと言ってみだりに人々を巻き込んでまで傷つけてもいいと?…本気でそう思ってんのか…?だとしたら…
作業課も大分落ちぶれたもんだなッ…?!」
楓「?!(何、この威圧…!?)」
杜圸「旭日!威圧すんなって!」
地鳴りみたいなものが耳の中に聞こえる。
周りにいる鳥が羽を広げて逃げ、猫は威嚇しており、犬は吠えている。何、が…起こってるの…?この人は、本当に…
楓「あ、旭日さん…?」
旭日さんなの…?
【登場人物紹介】
主人公・巻坂 楓15歳
今年から花の女子高生。勉強は中の下、運動神経は昔から良い。
幼い頃から“霊媒体質”で、五歳の頃にあやかしに魅入られてしまい、“妖域”に連れ去られたことがある。
引き寄せ体質であり、そういう事もあってか霊関係には詳しく、危険な事には自ら首を突っ込むことはしない。
あやかし達の“百鬼夜行”、生贄の候補者である為に妖怪退治専門課から徹底して護衛されている状況。
種族:人間
零烙
禍憑に魅了され、身動きの取れなくなった楓を助けてくれた。
口は悪いが、根は優しくて良い奴。ただぶっきらぼうな為、楓とは衝突しやすく口喧嘩が絶えない。
百葉とバディを組んでいる。
独断で単独行動を繰り返す為、毎回絞られては毎回大怪我して帰ってくる。いい加減圭乃からも怒られてる。
所属課:日本国政府直結特例課/妖怪退治専門課
種族:妖狐族の末裔(九尾の狐)
百葉
零烙のバディであり、教育係でもある。
零烙の単独行動に上からお叱りを植え続けており、零烙の自由奔放さ加減にいい加減、頭を悩ませている。
謎のオネエ口調で楓を翻弄させる人物。
楓は昔の想い人に似ている。
所属課:日本国政府直結特例課/妖怪退治専門課
種族:鎌鼬族
旭日
杜圸とバディを組んでいる。前まで零落の教育係をしていたが、二年が経つ前に百葉と教育係を交代し、後にバディとして働いてもらうことになる。楓の事を可愛いねと瞬時に口説いた人。
零烙の前のバーサーカーと呼ばれていた人。戦闘タイプで戦うとなると軟派な正確とは打って変わって何よりも戦闘を楽しむ。
所属課:日本国政府直結特例課/妖怪退治専門課
種族:鴉天狗族
杜圸
旭日とバディを組んでいる苦労人。
女性に手が早く、隙あらば口説き倒す旭日を止める人。以前は零烙が入ってきた期間だけ一人で行動していたが、教育係を離れた旭日が心配なのでバディを組むことを進んで立候補した。(気づいたら逮捕されたりするので洒落にならない、本気で。)
楓によく労ってもらっている。良い子。(主観)
所属課:日本国政府直結特例課/妖怪退治専門課
種族:河童族
圭乃
自由奔放な野郎共を纏める役のナイスバディなお姉さん。色気ムンムンで楓の事を「食べちゃいたい♪」と発言したことがある。
嘗ては退治課に所属していたが、年齢と共に力の衰えを感じたので他の者に迷惑を掛ける前に前線から退いた。こう見えてもキレ者なので野郎共は頭が上がらないらしい。好きな物はチョコレート。楓を妹のように可愛がっている。
所属課:日本国政府直結特例課/妖怪専門医療班
種族:土蜘蛛族
柳
圭乃の直下の後輩。圭乃とは長らくバディを組んでいたが、圭乃と同じ理由で前線から退いた。その前は退治課と特定課の二つを行き来していた凄腕。
楓の治療に当たったのが柳で、細かな事にもよく気づく。
昔、ヘマをした時に圭乃に「最後まで闘うこと」を教えられた。それ以来、圭乃に陶酔してるのかと言うほど尊敬している。
所属課:日本国政府直結特例課/妖怪専門医療班
種族:鵺族
童子
政府の許可無く戦地に逸早く飛び込むことの出来る特例班の作業課。基本的に戦う為に許可が要らない特例班なので、いつでも辞められるように辞表を出してある。楓の護衛が特例課にある事に懸念を示している。
上に直接、特例班・作業課に引き渡すように掛け合っている。
楓の危険時は彼が駆け付ける。
何を考えているか分からず、楓曰く「クールビューティー」らしい。
零烙に目の敵にされている。
所属課:日本国政府直結特例班/妖怪退治作業課
種族:酒呑童子(鬼族)
禍憑
あやかしが作り出す負の塊。
あやかしほどの力は無いが、人の命を喰らうなどの行為が江戸時代辺りから目立ってきた為、妖怪退治専門課などの組織が動く事態になる。
元は人の負の感情を喰らうだけだったが、最近では人間そのものを喰らうことが多くなった。(最近=300年以上前)
あやかし
300年前の江戸時代後期頃、百鬼夜行を行っているという歴史がある。
また、そのあやかしが現代にも復活して何かをしようと目論んでいるのを日本政府がキャッチしている。
復活の為には百鬼夜行を行う必要があり、現代では力が弱まったあやかしには“生贄”が重要。
少なくとも千年以上前には存在していたとされている。真偽は定かでない。
今回、この話を作成するに至った原点と致しまして、「人ならざる者・妖怪」と「有り余る力を持つ人間」との“絆”を描きたいと思ったのが、きっかけとなりました。
このお話で、「人とも似つかぬ人」「過去の大きすぎる代償と戦う者」との絡み合い、交錯していく“絆の物語”をご覧くださると嬉しいです。




