今年の終わりに
8話
クリスマスの飲み会の前にわたしは髪型を変えて金髪に染めた。
そしたら、その夜に。
「おい、キタロー!」
と、父さんが似てないモノマネをした。
☆ ☆
クリスマスの飲み会の時に集合時間に少し遅れたら。
「おや、珍しいですね。木根間さんが、まだですよ」
「遅れてゴメンネ」
「はい、まだ大丈夫よ。遅れてる人が居るから」
「遅いですね。いつもは一番に来てるのに」
「そうね、遅れたことないのに……。ドコかで事故にでも」
「あれ、みんな居るよね。あと、誰が来るの?」
「うん、あんた。ダレだ初めて見る顔だな」
「誰かしら……」
「わかるわよ、遅れてきたから、みんなでイジワルね」
「だれか、このキタロー。知ってる人!?」
☆ ☆
「ハリウッド女優参考に……」
「会長ぉ似合わないですか? 茶髪にすれば良かったかな……」
「キネマちゃん、私は良いと思うよ。カワイイよ」
「ありがとう。カワイイと言ってくれたのマリオンだけだよ」
「そうなの。あ、マリーと呼んで」
でも、マリオンって。
「ほら、あっちのヒゲオヤジカワイイ! 向こうのハゲたオヤジもカワイイよね」
彼女のカワイイの基準がわからない。
☆ ☆
房総のとある書店。
「アミがね、冬に暖かい部屋でホラーがイイとか言ったからオススメの『リング』見たわよ」
「え、みずほさん『リング』観たんですかぁ〜。大変です、一週間後に死んじゃいますよ!」
「そんなわけ、ないじゃない! あれは映画の中のはなしでしょ」
「ホントです、ホラみずほさんの後に、長い髪の人が」
「夕方だけど、おはよう。今日は夕方から私が」
「なんだパートの島さんじゃないですか……」
「え? どうかした」
「いや、なんでもないわ。アミちゃんってば!」
「今、みずほさんマジぃビビりましたよね……。実は、私もシネマディクトの会の有楽さんにヤラレました。やはり冬の暖かい部屋ではホラーよりアイスですよねぇ」
☆ ☆
仕事終わりに池袋で、マリオンと遭遇した。
「スキヤキ、わんばんこ。私とオールナイト観に行来ません?」
「スキヤキ……。ダレのコトだ、それは」
「あなたよ。スッキーの方がイイ?」
「あ……。スキヤキ以外ならなんでもいい。あんた、一人で行くのか。池袋の夜は気をつけろよ。で、オールナイトって何見るんだ?」
「名画座でやるクロサワ時代劇特集を観に行くの『七人の侍』『用心棒』『椿三十郎』『隠し砦の三悪人』よ」
「そんなのオールナイトでやるのか、終わったら夜が明けてないのか」
時代劇好きなのかこの金髪ハーフは。
「良かったら『猫犬大戦争』とか観ないか? まだ最終まにあう。行かねぇ?」
「ゴメンネ、一人で行って。猫、ダメなの」
「美人だが、アレとは付き合えね……」
☆ ☆
「あぁ面白かったね。クリスマスは、やっぱり感動作よりコメディよね」
クリスマス本番とか、いっても相手が居ないわたしは、会長と映画。
本当は会長は弟の辰巳と。
でも、急な仕事で行けないという辰巳の代わりに、わたしが会長とクリスマスデートに。
「ごめんなさい。辰巳は人が良いから、クリスマスの日に仕事を同僚と代わったばかりに……」
「なんで木根間ちゃんが、あやまるの。いいのよ、人が良いトコも気に入ってるのだから。それと木根間ちゃんと似た目かしら」
「そうなの、わたし父似で辰巳は母似よ。目って父似なのかしら……。でも、こんな高い店で、わたしで良かったんですか?」
「仕方ないわよ予定聞くより先に私が予約しちゃたから」
「あぁクリスマスは混みますもんね。早めに予約しないと」
「そうね……。クリスマス終わるとすぐ年末ね。今年は木根間ちゃんのおかげで沢山、映画観たわ」
「べつにわたしは……」
「いつも、レンタルでも配信でも、いいか。と劇場行かない映画も木根間ちゃんと観に行ったからよ。迷惑だった?」
「いや、わたしも、ナニ観るか迷うたちなんで会長が決めてくれるから」
「木根間ちゃん、シネマディクトの会、作って良かった。正直半年サークル活動なんてできないかもと。今はネット内で映画の話が出来る時代だしね。サークルとかはダメかなぁとも思ったの。でも、木根間ちゃんからメール来て……」
「わたしは、ちゃんと目の前の人間と話すのが好きだから、こういうサークルの方が好きです」
「ありがとう。木根間ちゃん、あの雑誌の募集で木根間ちゃんが来てくれなかったら、あきらめるつもりだったの」
「そうなんですか、でもあとになって何人も。おかしな連中だけどね……」
食事を終え、日比谷の地下道で。
「それじゃ木根間ちゃん。良いお年を」
「ん……。まだ三十日くらいに、もう一度観ませんか。その後に良いお年をで。で、すぐおめでとうですけどね」
「いいわよ」
そう言うと会長がわたしの手をにぎり。
「あらためて、本当にありがとう木根間ちゃん。あのとき、あなたが来てくれたから。私、すごく嬉しかったの」
会長の頬を涙が流れた。
「日比谷会長、もらい泣きです……。また映画、観ましょ」
わたしも泣いちゃた。
つづく




