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聖子と辰巳

7話


 思ったより、入ってるわね。


 劇場の真ん中あたりの席の一番、はしっこに席を指定した。

 もう隣は座ってる。


 若い男性だわ。


 パンフを見てる。映画マニアかしら?


「失礼します」

「あ、はい。どーぞ」


 まだ、少し始まるまで時間あるわね。

 私もパンフを買ったので、ちょい見るか。

 いつもは観てから買うのだけれど、このまえ売り切れちゃて買えなかったから今回は先に。


「あの、プログラムって、言ったら売店の人にパンフですねと、言われてイヤ、プログラムですと言ったらコレ渡されて買ったんですけど、コレ、プログラムですよね。あなたのは?」

「パンフです、パンフレットですけど」

「ボクのと同じですよね、プログラムじゃないんですか?」

「ああ……。同じですプログラムもパンフレットも同じ物ですよ」

「そうなんだ、じゃ店員は、プログラムですねと渡してくれれば……」

「そうね、劇場により、パンフレットとかプログラムって書いてあるから、ココはパンフレットなんで店員さんは確認したんじゃ」

「同じ物なんですかプログラムとパンフレットは……」

 

   ☆ ☆


「クククッ……。ナニ、その男」


「でね、その人ね、上映中に……」


『すみません、あの漢字はなんと読むんですか』


「って聞かれたわ。そんなコト、はじめてよ」


「なんですかね、その男。バカ?」


「ん……。たしかに読めないかもな漢字だったけど。パンフの件で、頼りにされたのかしら……。でね彼ね、上映中に迷惑かけたって食事をごちそうしてくれたの」


「え、会長。食事したんですか。そのバカと」


「ええ、でもマックだったけど……。まあそれはいいのよ。でね、彼とメールアドレスも交換しちゃてね」


「マックって……。しかもメールも。で、そのバカ男は、そんなにイイ男だったんですか?」


「まあ、並だけど……」


「並なの」


「そー。ん、その人、木根間ちゃんと目が似てるわね……」


「あの、わたしは並の顔ですからね……。美人じゃありませんし」


「たしかに。木根間ちゃんは美人じゃないわ。あぁごめんなさい。そういうコトじゃ。ちょっと気になるのが木根間ちゃんみたいに若いの、十九歳なの」


「十才違うじゃないですか、会長と。でも、いいんじゃないですか会長! 若い子で」 


「そうかしら、私は同じくらいが……」

「贅沢言わないで、わたしなら……。でも、わたしと十違った子供だ。十才じゃ小学生だよ」


   ☆ ☆


 なんだかんだと言っていた会長、日比谷聖子さんは、彼と付き合いはじめて、映画にも。

 彼は映画通ではないが観るのは好きだと一緒に観るそう。


 おそいわね、ソロソロ始まる。


「すみません、聖子さん」


 あ、来たわ。


「金券ショップに行ってチケットを……。少しは安く観れます。ボク、ボンビーでしょ、少しでも安くと思ってハハッ」

「辰巳くん、ビンボーは気にしないけど……。今日はね映画の日で安いのよ、そのチケットより」


   ☆ ☆


「と、言うわけでチケット、使わなかったの木根間ちゃんいる?」


「いただきます! それ、観に行こうと思ってたんです。しかし、面白い男ですね。まえは13時と3時間違えたと」


「ええ、そうだったわね。午後3時を13時と間違えたから良かったわね。でも待ってるの映画一本観れちゃうわ。逆なら大遅刻でしたわね」


「それから、彼。シネコンで劇場間違えて、ずーっと観てて、終わってから違うのに気づいたとか、やっぱりバカですね」


「え、木根間ちゃん、なんでそんなコトまで知ってるの。私の彼のコト?」


「あれ、会長が……」


「言ったかしら?」


   ☆ ☆


「ホントにコレが最後かなあ。会長は今年、映画は何本くらい観ました?」

「そうね月に二作くらいかしら。二十作以上ね、コレでも増えた方のよ」

「普通に観たらそのくらいですよね。有楽さんみたいに三百以上は……。そんなに暇なんですかねぇあの人」

「あの人はハシゴして1日に三作観るとか、それに数は自宅で配信で観てるのも入れてるそうよ」 


「あ、聖子さん!」


「あら、辰巳くん」


「こんにちはです。聖子さんも映画ですか……。あ、姉さん!」


「姉さん?!」


「あの、会長。実はね月島辰巳(つきしまたつみ)は、わたしの実弟なの。親が離婚して弟は母の方に。で、姓が違うの」


「いつから知ってたの?」

「多分、初めて会った日のコト聞いた夜かな。その夜、電話でね弟にシネコンでの話を聞いて。もしやと」

「早く言ってくれれば……」

「ちょっと面白かったから、成り行きを……」


「姉さん、ボクの好きな人と知り合いだったんですか!」


               つづく

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