サークルの名前
42話
某シネコンのロビーで入場待ちの、宝田明と銀間久光。
「ヒカル、イイ男だったんだけどね、彼と映画に行って、ナニ観るかとその場で決めてたのよね、まあわたしもね、なんでも観るんだけど、なぜか彼と観たい映画がぜんぜん合わなくてさ、イヤなの無理やり観ても楽しくないから別々の作品観たのよね」
「まあ、私たちみたいな映画通わね、映画デートは無理よね。やっぱりアキも」
「だからね、映画観たあと、映画話で楽しもうとしたら、違う映画観たんで、まったく盛り上がらずで、ぜんぜん楽しくなかったのよ。映画デートは好みが合わないと、つまんないわよ〜」
☆ ☆
『カフェ・ケム〜ル』にて。
「は〜い、わたしぃ大変なコトを気がついてしまったんですけど!」
「ナ二かしらヨーコ?」
「わたしたちのサークルには、名前がありません」
「そー言えば、メンバー集めることばかり考えてたわ……」
「今夜は会員が、みんな居るから決めようよ、わたしは『シネ・エンジェルス』とか」
「アキ、なんかアメリカの中年暴走族みたいよ」
「言うわね、ヒカルは?」
「シネマフレンズ!」
「ださぁ〜昭和の仲良しサークルみたい」
「シネ・インポシブル!」
「わし、『シネマ・フロンティア』……。なんか、ありそうかな……」
「シネ・ジャンゴ!」
「ん〜どれも、イマイチねぇ。個人的には『シネ帝国ムー』がイイけど、ソレは個人的すぎるからぁ『キネマ乙女』とか……」
「実相寺さん、ボクら男の会員も居るんですよ〜」
「面倒だから『シネマ・サークル』じゃダメなのかしら」
「なんか、鎌田さん。テキトーすぎません」
「あんたは」
「シネマレンジャー!」
「りんちゃん、子どもね」
「『シネ・ゴジラ』は?」
「『死ねゴジラ』みたいですよ東さん。あ〜わたしにいい案が。サークル名は、『キネマの休日』で、どーです? 映画観るのもココに集まるのも休日だし……」
パチパチパチパチ
「え〜と百鬼夜行さんだっけ、ジイさんのわしにもわかるそのダジャレ気に入ったよ」
「叔父さん、べつにダジャレじゃあ〜」
休日といえば『ローマの休日』。あ、なるほど。
「マスター、ありがとう。どうですか皆さん」
☆ ☆
『カフェ・ケム〜ル』翌週の土曜日。
「入会希望のシルビアですわ。そしてコチラは一緒に入会する執事のセバスチャンよ」
黒服の執事とは、その着飾った洋服といい、二人とも絵に描いた様なお嬢様と執事ね。
「入会の条件は、映画が好きというだけですから」
「では、皆さんのお仲間に、よろしくね。セバスチャンも挨拶を」
「わたくし本名は山俵吾作と申します。ちなみにお嬢様の本名は熊田貞子と申します」
「セバスチャン、余計な事は言わない!」
☆ ☆
その夜はもう一人。
「私は、香港が中国に返還されるまで香港でスタントマンしてました、今も日本の某アクション・スタジオで働いてます塩見理恵です。レディ・リーと呼んでね」
黄色いジャージのこの女性、何処かで。
「リーさん、あなた見たことあるんですけど、ボクと何処かで会ってませんか?」
「あ〜。私、テレビとか、映画に出てるからなぁ。映画サークルだから、映画とかで……。私、あなた知らないけど?」
「あ、思い出した。ドニー様直伝の蹴りを放った」
「あ、わかったあのときのナイフ男!」
「いえ、そいつを捕まえた方です……」
☆ ☆
「ヒカル、実相寺さんに頼まれて入会希望者に会うんだけど、付き合って」
「イイわよ、カフェ・ケム〜ルで?」
「なんだか、夜は都合悪いからと、某シネコンのロビーで待ち合わせ」
と、いうことで、わたし、宝田明は銀間久光と、シネコンに。
たしかロン毛でメガネの男よね、有楽とか。
あ、あそこにロン毛の人が。
「あのぉー有楽さんですか?」
「はい」
うわぁイケメンの学生さんだわ、メガネ男子!
「私たち、シネマサークル『キネマの休日』の者です!」
「待ってました有楽進之介です。はじめまして」
知ってる人は知ってる。あの男の長男、でも銀間久光も宝田明も彼を知らない。
☆ ☆
休日なので昼間に有楽進之介を呼んで『カフェ・ケム〜ル』で、みんなと顔合わせ。
「有楽くんは学生さんよね」
「高一です。でも、映画好きの父に鍛えられて自分で言うのもなんですが映画の事ならなんでも……」
「じゃクイズ出すわね。ラスセ・ハルストレム監督作品をあげて」
「宝田さん、意地悪ねえさんね。誰よその監督」
「簡単だ、メジャーなので『ショコラ』でいいですか、主演はジュリエット・ビノシュに相手役はジョニー・デップです。脚本はロバート・ネルソン・ジェイコブスです」
「スゴイわ天才ね」
「それじゃ、私の好きなジャンルがら、谷ナオミの好きな責はなにかな?」
「オジさん……完能山さんでしたっけ、世の中には未成年が観れない映画もあるんですよ」
なるほど、でも谷ナオミは知ってるのだな。
つづく




