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知らない映画

40話


「もしもーし、入会希望のメールが来たわ。ヨーコ、一緒に会って」

〘イイけど、男の人、女の人?〙

「男女で二人よ。一人は下里久八げりきゅうはち。五十歳。会社員で、もう一人は二十歳の学生で戸増とますみりあ」


 彼らには夜にあたしの祖父が経営してる『カフェ・ケム〜ル』に来てもらった。


 小柄で茶髪のクセっ毛のセミロングで前髪が長めで顔のわかりにくい女性と大柄で短髪のマゲの無い力士みたいな太眉毛オジさん。


「ねえ、ミドリさん。二人とも妙共通点があるよね……」

「服装見れば、なんとなく」


「あの〜お二人はどんな映画が好きなんです」


「私は……西部劇ウエスタン全般が大好きでね」


 と下里さんは、テンガロンハットをかぶるとバッグから拳銃を出した。

 おそらくモデルガンだろう。


「早撃ちも得意! シェーンにも負けない自信あり」


「あたしもウエスタン好きですけど、だいたい観るのはマカロニウエスタンよ」


 彼女もタータンチェックのポンチョの中? から、拳銃を。


「オジさん、マカロニは?」

「み、観ますよ。ウエスタンはみんな好きだよ!」


 偶然に西部劇好きだったようだ。


 いまどき仲間が少ないのは昭和特撮映画好きと一緒よね。


   ☆ ☆


 実相寺緑の祖父が経営している『カフェ・ケム〜ル』。


「マンダがテレビに出てたの知ってます?」

「あ〜出てたよねマンダ、『ウルトラQ』に……」


 実相寺緑さんと鎌田ナオミさんの会話。

 マンダってナニ?


「私ね『漢江の怪物』観てポン・ジュノにハマったわ」

「今頃、遅いはヒカル。『パラサイト』は?」

「あ、観てないわ。私、韓国映画はあまり観ないの……」

「観てよ、わたしは、『ほえる犬は噛まない』で、ポン・ジュノはハマったわ、同時にペ・ドゥナにも、彼女、イイわよ……」


 宝田明さんと銀間久光さんの会話。

 ポン・ジュノって誰?


「あたし、レオーネ好きだけど『ウエスタン』とか長くて退屈よね。あたし、モリコーネの音楽なけりゃ寝てたわ」

「そうかな『ウエスタン』は、じっくりあの時代を描いてて、私は好きだよ。ブロンソンもイイ……」

「でもさぁあたし長い映画はあまり好きじゃないのよね。二時間以上のマカロニなんかどうなの。やっぱマカロニは90分代よ……」


 戸増みりやさんと下里久八さんの会話。

 マカロニって食べ物だよね。ブロンソン?


 わたし、なりゆきで入会しちゃたけど、やっぱりこの人たちの言う事がまるでわからないわ。


 やめようかしら。


「お嬢さん、お名前は?」

「佐藤日音歌ですマスター」

「あんたは、なぜ一人でカウンターに?」

「話が出来る人が居なくて……」

「お嬢さんは、どんな映画が好きなの?」

「トム・クルーズの映画とか」

「ソレは……。僕はね邦画専門でね洋画観ないんだ……。が、みんなけっこうな映画バカだから、お嬢さんの好きな映画の話をしたらいい……」


   ☆ ☆


「ある日、ホラー映画を観に行ったのよね。昔は指定席なんかなかったから、早めに行って席取って座ってたのよ、そしたら私の前に角の生えた男が……」

「なんです、鎌田さん。怖い話ですか? やめてくださいよ苦手なんです」


「でさぁ、ななめ後ろに長〜い髪の顔の見えない女がぁ。そして、その隣には頭にナイフが刺さった血だらけの男が。気がつくと半分くらいはバケモノの客で……」


「って、なんなんですか。その劇場?」


「映画が終わって外でチケット売り場見たら、オバケの仮装で半額と書いてあったのよ」

「なんですそれ?」

「昭和にわね、映画に合わせた割引があったの。恋人同士とか、着物でとかね。懐かしいわぁ。『スター・ウォーズ』ファンは映画に仮装して観に来たわね」


「仮装とかしたのが、前に居たら邪魔で観えないんじや」


   ☆ ☆


「鎌田さん、サークルに新入会員が入ったとか、聞きました?」


「そう? イイ男かしら?」

「顔は知りませんが偶然、入った男女が西部劇のファンだったとか」


「西部劇ねぇ私は興味なかったから有名なのはテレビで、何作か」

「西部劇って、ボク観たことないんです。アメリカの時代劇ですよね」

「へぇ~りんちゃん、西部劇観たことないの。まあ私もそれほどじゃないけどイーストウッドとかのしか」


「イーストウッドって、クリント・イーストウッドですか、あの目の細いおじいちゃん俳優の。昔は西部劇に、知らなかった」


「ええ、そうよ。じゃりんちゃん、『荒野の用心棒』とか『夕陽のガンマン』知らないの?」

「タイトルは……。ソレに出てたんですかイーストウッド。『ダーティハリー』なら」


「りんちゃん、ソレは西部劇じゃないから。私もとしをとるわけだわ……。知らないかイーストウッドの西部劇」


              つづく

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