愛の日
4話
「木根間さんって、バレンタインにチョコレートばらまく女ですか?」
「ナニ、チョコ? いつの話をしてるの、豊洲さん。まだバレンタインには早いわよ。鬼が笑うわよ」
「木根間さんも、古いことを、来年のコトを言うと鬼が笑うですか」
「わたしね、お爺ちゃん子でね。もしかしてもうチョコのおねだり?」
「違うんだ木根間さん。サン・ジョルディの日って、知ってる?」
「なんだっけ、聞いたコトある」
「花と本を愛する人に贈る日だよ」
「それだ!」
「映画でも、そういう日あってもいいんじゃないかな」
「映画の日ってあるじゃない。二人で行って安く観れるわよ。あと、シルバー料金とか、夫婦でどちらか五十歳超えてたら割引とか……。いろんなサービスデーあるじゃない」
「サービスデーには、バレンタインやサン・ジョルディの日みたいな愛がないんだよ!」
「あの、豊洲さん。それ、ものすごく遠まわしに、わたしを誘ってるの?」
☆ ☆
「なるほど、豊洲くんの言いたいことは、よくわかるね」
「劇場に行って愛の告白をする日ですよ。なんか良くないすか有楽さん。特に劇場は、僕ら映画マニアのラッキースポットなんですから」
「映画ヲタクのね……。いや、いかんぞ豊洲くん! キミはバレンタインデーの劇場を知らないのか、チョコの香りとラブラブカップルばかりだ。もし、映画を観て愛の告白日なんてぇ日が出来たら、僕は一人で映画を観に行けなくなる!」
☆ ☆
日比谷聖子・三十才見合いする。
「わたし、趣味は映画鑑賞なんです」
「僕も映画好きです!」
なかなかいい男だし、映画好きなのね。
「あの、最近はどんな映画を?」
「あ〜なんだっけ、アレ。タイトルが……出ない」
この人、観てないわね。
☆ ☆
次の見合いで。
「私、休日は映画を観に行く事が多いんです。あなたは映画をみます?」
「映画ですか、僕も大好きです。月に10作品くらい見ます。ゴロゴロしながら、酒飲んでます」
ゴロゴロって?
「おつまみは?」
「ポテチとか、イカ類のつまみもよく、さきイカとか、あとチータラも好きだな。時々観ながらソファーで寝ちゃいます」
だめね、配信で自宅のテレビで観てるタイプだわ。
この人。
外で劇場で観てほしいわ。
劇場へ行ってね!
☆ ☆
「まさかねぇ銀座一さんが石場さんと……。知らなかったわ」
「意外だよな。あの二人が結婚って」
結婚式の帰りカフェに豊洲さんと会長とで。
「日比谷さんは、知ってたの? 二人のこと」
「まあ薄々ね。ハネムーンはアメリカの本場のディズニーランドとユニバーサルスタジオへ行って、ビバリーヒルズにも行くらしいわ」
「石場さんて意外とリッチなのね」
「映画マニアらしいな〜。画に描いたような映画マニアの新婚旅行だなぁ〜」
「豊洲さんならどんな……」
「ボクは……。本場、中国の少林寺へ。で、香港へよって未公開の功夫映画のディスクを買いまくる」
「それこそ、絵に描いたような功夫映画オタクの……」
「木根間さんは?」
「そんな、先のことは、わからないわ」
☆ ☆
また、おそくなってからの新入会員が。
募集が載った雑誌は古書店で買ったそうだ。
「大白里亜海です。水瓶座です。まだ、映画ファンには、なりたてのホヤホヤって感じなのでイロイロと教えてください」
会長より薄い茶髪のショートの若い子だわ。
もしかして十代?
で、美少女って感じ。男どもは嬉しそうだ。
とくに有楽さんは。
「はじめまして、僕は有楽総士郎。映画の事ならなんでも僕に聞いてね大白里さん」
「あ、アミでいいです。皆さんアミと呼んで下さい」
「じゃアミちゃんは、どんな映画のジャンルが好きなんだい?」
「ジャンルですかぁ……。え〜と、ロボットとかUFOとかぁモンスターの出てくるSМ映画」
なに、セクシーな美人のアンドロイドにムチで、たたかれるような映画か?
「アミさん、ソレはSF映画じゃないの」
☆ ☆
「プログラムは1000円になります」
「おや、キミはマリオン三越さんじゃないか」
「あら、ユーラク・ソーシロー。アルバイトね。マリーと呼んで」
驚いた売店にマリオンが。
「そうだ、ソーシロー。いいものあげる」
バイトのマリオンにチケットをもらったが。
コレはカップル専用ではないか。
「つ、使えない……」
☆ ☆
観る会のときに。
「シネコンのチケットもらったんだけど、アミちゃん一緒に観に行かない。今月中なら、なんでも観れるよ」
「ホントに。嬉しいなぁ。で、ナニを観るんですか? アミは『アバター・サムライ・セブン・ソルジャー』が観たいです」
「あ、僕は『愛の讃歌と恋の冒険者』なんかどうかと……」
劇場の二人。
「くぅ~」
カワイイ女の子と二人で映画に。の夢はかなったが。
複雑な心境だ。彼女、ほぼ寝てた。
やはり『アバター・サムライ・ソルジャー』にするべきだった。
つづく




