運命の出会い
32話
サークルの有楽総士郎のすすめで、『オカンの嫁入り』を配信で観た。
まあまあかな。でも、泣けた。
ウチの親父は急に若い嫁を。
そういえば、オレに役者に、なれとか言ってた親父が、後継ぎのコトなんかも。
まさかと思うが。
「親父、かくしてる事があるなら、正直に言ってくれ」
「ないよ、なんだ急に」
「ダーリン。リキちゃん、どうしたの?」
「よく、わからんが、わしが若い嫁もらったのは先が短いからなのか、みたいな事を……」
「まあたしかに、私よりは短いわよね」
☆ ☆
二年の後期から、部長になった、新宿春斗。
「今年の文化祭は、映画は作らず、各自の個人研究の展示と、いうことで……」
「個人と言ってるが、同じ趣味の仲間との共同研究はいいのかな?」
太郎にいちゃん、あたしと。
「まあ、グループでは、ない二人くらいなら認めよう」
「よし、やった。成田龍くん、ボクと香港アクション映画の研究を」
「オスッ!」
ええ、太郎にいちゃん。あたしとじゃないの!
香港アクション映画には、負けてるのね。
あ・た・し。
☆ ☆
某興信所。
「流山さんは、なんで探偵になったんですか?」
などと事務の隼鷹よしねさんに聞かれた。
「ガキの頃にねテレビの洋画劇場で『フォロミー』って、映画観てね……」
「私、知りませんけど、どんな映画なんです?」
「あれはね、普通の探偵映画なんだ。ミステリーとかじゃなくて、探偵が監視してた女性がね探偵に恋しちゃうんだよ、よしねちゃん」
と、所長が映画の説明を。
「お、所長も観たんですね」
「ああ、アレはいい映画だね。しかし、流山くん。ホームズとか明智小五郎じゃなく。きみだと、金田一かな? そういう映画じゃなくて?」
「所長、そんな現実感のない探偵は……。オレね、バカだから推理モノとかは……。オレ、行動派なんで、名探偵とかにはあこがれませんでした」
☆ ☆
映画部部室。
「まえの顧問の先生がおめでたで、辞めることになり、私が顧問に。春野さくらです、とりあえず臨時ですけど……」
「先生のマイ・ベスト映画はなんですか?」
「私のマイ・ベスト映画……」
考えること数十分。
マイ・ベスト映画なんて、でない。
そもそも私、映画をあまり見ないし。
「先生、無理に答えなくてもいいで〜す」
「あ、そ……。子供の頃に見たプリキュアかな……」
「先生、何作かありますが……」
「タイトル忘れた……」
☆ ☆
職員室。
「やっはり、映画部の顧問として好きな映画の一本もあげられないのはダメよねぇ」
「どうしたんです春野先生」
「あ、黄音先生」
「部活の顧問をして、ちょっと」
「部活ですか……」
「先生は?」
「空手部で、僕じゃたいしたこと言えませんから、先生は何部でしたっけ?」
「映画部です」
「あ、有楽のトコね。コレ見とけば大丈夫ですよ」
と、黄音先生は引き出しからDVDを出した。
そして私に『燃えよドラゴン』のDVDを。
☆ ☆
高校生になった宝田明は。
さすがにね、女子高なんでドニー・イェンの映画に付き合ってくれる人、居ないのよね。
入場出来るまでロビーでパンフを買い、座るトコを探してたら同じパンフを見てる娘が。
あの娘も学校帰りで、しかもアレはウチの制服。
「あのぉもしかして、B組の銀間久さんでは」
赤茶けたショートカットのメガネの娘が顔を上げた。
「あ、中学のとき映画部にいた宝田さん?」
「やっぱり、同じ中学の」
「あなたもドニー・イェンの映画を?」
「宝田さんも、パンフ持ってる」
「もしよかったら映画友だちになりません
?」
「いいわよ。私、あなたの監督した『走れメロス』観てね、泣いたわ」
「嬉しい、なんか運命の出会いかもね」
この出会いから、彼女たちの高校生活が変わった。
つづく




