中学生になった
25話
バレンタインデー。
「沙織さん、詩織さんはバレンタインデーにチョコあげる人、居る?」
「千織さんは? 私はサークル内であげようと……」
「詩織さん、サークル内って?」
「沙織さん、そんなコトは……」
「伊達に三つ子じゃないわ、沙織さんも詩織さんも、だいたい想像はつくわ……」
某居酒屋。
「会長、バレンタインの感謝チョコです。会長になっていただきありがとうございます」
「どーも、木根間さん」
「石原さんはハンサムだから、今日は沢山チョコもらったんでしょ?」
「いや、仕事柄ねぇ〜。そんなコトは、ないですよチョコは木根間さんがはじめてです」
「そうなんですかぁ〜。なんか嬉しい」
帰るときに、居酒屋の出口で。
「こんばんわ、石原会長。コレ、バレンタインデーのチョコレートです」
と、真砂三姉妹からチョコを。
やっぱり、
沙織さんも詩織さんも、同じターゲットだった。
☆ ☆
ニカッ
「千織さん、何スマホ見てニヤニヤしてるの?」
「石原会長より、メールが来たのよ」
「え、詩織さんは?」
「来ないわよ」
「私もよ、千織さんってば、どんな手を……」
「まさか、チョコの中にヌード写真とか忍ばせて」
「バカ言わないでよ、誰が私等みたいな痩せっぽちでペチャパイのヌード喜ぶのよ! あんたら、いったいどんなサークルに居るの? チョコと彼が好きそうな映画のチケット入れたのよ。ご一緒しようとメールが……」
当日。
「いやぁ僕で悪かった? 会長が、急な仕事で行けなくて僕に、チケットムダにしたくないとね。助かるよ、金欠だからね僕」
こんなオチだと思ったわ、私たち姉妹は不幸なの。
「やっぱりね、千織さんだけイイコトあるわけないのよ」
「でも、代わりが有楽さんなのも不幸よね、他にもイイ人、居るのにね。シネマ王子とか」
☆ ☆
ごく普通の高校生だった私。松屋映香が映画オタクになったわけは。
映画は、テレビ放映で話題作を見ることはあったが進んでシネコン行ったり、配信で見たりしたことはなかった。
高2の春にグラス変があり、クラスメイトが変わり、私のクラスには知ってる子どころか友だちも居なかった。
たまたま、隣の席の和津直美は、映画オタクと自称する映画好きな子だった。
彼女は月曜になると土日に見た映画の話をするが、興味がなかったのでテキトーに聞いていた。他に話す人も居なかったから。
和津直美に、映画研究部の連中と映画に誘われた。
映研の中に思いっきり私好みの会員が居たこともあり、私はみんなと映画を見に行くことに。
実は、コレが私のシネコンデビューだった。
はじめてのシネコンの劇場に少し緊張した、好みの彼が隣の席に。だから、これは、これで緊張した。
映画が始まる前の宣伝広告や予告編があるのも知った。
ソレが始まる前に彼が私が、わからない映画の話をしてたが、全くわからなかった。
きっとコレから始まる映画の解説だろう。
映画が始まり、はじめて見た巨大スクリーンに圧倒された。
ウチのテレビは60インチと大きいが、そんなものではなかった。
そして、私はスクリーンの中に見つけた。
あれから5年以上たったかしら。
私は和津直美の紹介で映画サークルに入った。
私、松屋映香。スクリーンの中の男しか、愛せない女。
独身。
「和津さん、は彼氏出来たの?」
「いや、中々ねぇ怪談好きのイイ男居たら教えて。あんたは相変わらず映画のキャラ好み?」
「ええ、男優の素のキャラ見るとしらけるのよね」
☆ ☆
有楽太郎と数寄屋橋愛は中学生になった。
なぜか、同じクラス。しかも席は隣って悪縁かしら。
「嬉しいなぁボク。愛ちゃんと一緒のクラスで」
「はいはい、あたしは別に……」
あ、先生が来た。ジャージ姿のカッコいい男の若い先生だ。
体育の先生かな?
「みんな、はじめまして。君たち一年A組をうけもつ担任の黄音純だ。乙女座のO型。趣味は……空手と映画鑑賞かな」
「先生は、どんな映画が好きなんですか?」
先生の好みを聞いてみた。
コレは小学生の頃の太郎と映倉先生の再現みたいだわ。
体育教師だから『タイタニック』はないよね。
「あ……。そうだな、ジェイソン・ステイサムとかドゥエイン・ジョンソンなんかのアクション映画とか、好きだな」
俳優名出されても、わかんないや。
「先生は、空手をやってるとか。香港の功夫映画とかは?」
隣の太郎が。
「カンフー映画も見るぞジャッキー・チェンとか、ジェット・リーとか」
「先生、カンフーはやめましょう。現地では不適切な言葉とか、クンフーか、コンフーと」
「そうか、えーと」
「有楽太郎です。先生は功夫映画ではナニが好きですか?」
「そうだな、ジャッキー・チェンとジェット・リーが共演した『ドラゴンキングダム』とか面白かったぞ」
「ソレはボクも好きです。でも空手やる方ならリー師匠の『燃えよドラゴン』がオススメです」
「リー師匠って? ジェット・リーか」
「先生、空手が趣味なのに、『燃えよドラゴン』のブルース・リー師匠を知らないんですか?」
この日から黃音先生ファンの女子から有楽太郎は嫌われた。
つづく




