映造の帰国
20話
有楽さんの大学時代の映研の後輩という新入会員が、観る会の二次会の居酒屋に現れた。
「紹介する、僕の後輩で、飛鳥麗くんだ」
「飛鳥麗です。ヨロシクお願いします」
「ウソ、飛鳥さん俳優?!」
「いえ、ただの会社員です」
宝束さんもぴっくりなイケメン。
「まあなぁ彼は映研時代はシネマ王子と言われてた」
昔、〇〇王子とか流行ったな。
あの頃だと歳の計算があわないけど王子と言われりゃ王子だ。
サカナくん。イヤ、シネマくんではない。
彼は。
後でわかったけど、彼には二つ欠点があった。
一つは、映画好きだけあって映画を語ると止まらずオチまで言ってしまうコト。
その語られた映画を観てない会員から苦情が。
もう一つは有楽さんが言ってたが、彼は映画以外の社会常識にうといらしい。
大学時代にはじめて『割り勘』という言葉を知ったとか。
でも大学出てるからバカじゃないと。
☆ ☆
方賀映造くんが帰国。
わたしたちは彼のお祝いの飲み会をひらいた。
珍しく居酒屋の一室を借りた。
部屋の前に。
シネマディクトの会様。
と、書いてあった。
おおっ、なんか会がメジャーになった気がした、わたしは単純。
「お帰りエイゾー!」
彼の他に映画のスタッフという男女が一緒だ。
「わざわざオレのために、ありがとう……」
「エイゾーくん、グランプリおめでとう!」
「ありがとう。で、一緒に来た彼らを紹介する今回プロデュースをしてくれたジョー・マグナムだ」
「皆サン、ハジメマシタ。私、日本語下手デス。スミマセン。ジョー・マグナムデス。オタクデス、ヨロシク」
ハジメマシタは、ハジメマシテの間違いよね。
ちょこっと老けた顔だが映造くんと同い年らしい。
金髪のオールバックで宮崎駿みたいなメガネで顔だ。ヒゲが無い頃のね。
ネクタイはしてないけどスーツ姿た。
「彼女はオレの監督した映画の主演女優。ミシェル・ラム。彼女は香港出身だ」
「オハコンバンワ、ウチは、ミシェル・ラムだっちゃ。エイゾーの映画のミューズだっちゃよ」
ど、言って映造くんの背中から抱きついた。
名前と口調。その派手髪色髪型は、あきらかにあの漫画のキャラだ。
でも、さすがにトラジマビキニではない。
「おい、ミッシェル。キスとか、するな日本では……」
「エイゾー、向こうの彼女?」
「そんなんじゃない、ちょこっと変わった女な、だけだよ、こいつは」
向こうじゃキスは、変わってるの? 映造くん。
「あ、そー。ミッシェルさんとか言ったわね。あたし、エイゾーのいいなずけで綾乃よ、よろしく」
おい、綾乃ちゃん。外国人に中指立てちゃダメよ!
「ああっ、綾乃。誰がいいなずけだ!」
背中のミッシェルも中指立ててる。
☆ ☆
活堂映吉邸。
「ホントか、力。ウチを継ぐ気になったか」
「ああ、でも一つお願いがあるんだ親父」
「なんだ? 『新しい母さんが欲しい』以外なら……。まあいい歳して、ソレはないよな」
「親父、シネコンで一緒だった美人のハーフの居るサークルへ、オレも入れてくれ!」
人生変えちゃう女性に会ってしまった。
☆ ☆
「ご主人様、お帰りなさいませ」
「オー、ココガメイドカフェ!」
オレはジョーとミシェルを連れてアキバに。
二人はアニメオタクなので、アキバは日本に来る第一目的だった。
「オー!エイゾー。『リコリス』ノ、フィギュアダヨ」
アニメとかに、うといオレにはよくわからない。
「あ、ラムと乱馬のフィギュアちゃ。最近リメイクされたと聞いたっちや。シャンプーもあるちゃ」
妙に上手いミシェルの日本語はアニメで覚えたと。
ミッシェルは見た目も派手だからアキバでも目立っててホコ天ではカメラ小僧による撮影会まで。
シネコンで遅い方が、すいてるから「鬼滅」の映画を最後の回で観た。
ホテルに着いた頃は、ジョーは燃えつきて白くなってた。
「エイゾー、ジョーはほっといて明日は池袋の乙女ロードへ行くちゃよ」
「乙女ロード……」
ソコは絶対、オレが楽しいトコではあるまい。
つづく




