一目惚れ
17話
「数寄屋橋さん、チーズバーガーで良かったんですよね」
「ああ、サンキューな。最近アンパンより安いのな、このチーズバーガー」
「ですね、バーガーショップのではないですからチンしましたよ温かいでしょ。あとコーヒー」
「昔先輩たちは、アンパンと牛乳だったが、今はコンビニが近くにあって便利だ」
「あの、数寄屋橋さん。あっちの外国人らしい女の人、さっきから数寄屋橋さん見てません。知り合いですか?」
「また、お前、ヨン様と間違えてんじゃないのか」
「今日はコンタクトですから……。あの女、僕じゃなく数寄屋橋さんを」
「あっアレは」
「やっぱり、そーだ。スッキーだわ。ハーイ」
「あ、よう。高島屋」
「ノー三越です。スッキー」
「東急、スッキーは、やめろ」
「ノー、私も三越です。わざとですか。高島屋、東急って。あまり面白くないです。あ、隣のハンサム・ボーイ。私、スッキーのお友だちマリオン三越です。今後ともよろチクビーム」
「あ、ど・ど・どーも。石原です……」
「イシハラ……。ゆーちゃん?」
「いや、悟未です」
「オーイシハラサトミ! じゃあね〜。バイオハザード」
「バイオハザード?」
「バイバイのシャレだ」
「面白い娘ですね……。数寄屋橋さん、あの娘紹介して下さい。なんか一目惚れしちゃいました」
「あ〜。アレはやめといた方がいいぞ」
☆ ☆
某居酒屋。
かんぱーい!
「撮影終了。あとは編集ね、エイゾー」
「あまいな、まだ音入れもあるし……。おい、吉田。音楽の方はどうなんだ?」
「ああ、やっぱ映像観てから作るよ、脚本だけじゃどーもイメージがわかないんだ」
「おいおい、そんなんで間に合うのか?!」
「なんとかする」
「ところで、エイゾー。気になってたんだけど、あたしらが休んでたときから手伝ってくれたのホントにただの親戚の映画ファン?」
「ああ、彼らね。あの人たちはホントに映画好きな親戚なんだよ。ホントだよ、映画ファンの老若男女」
なんだオレ、綾乃に映画サークルに入ってるなんて言えない。
☆ ☆
映画を観る会の待ち合わせをしてたら、やたらといい男が。
「あの、もしかして映画サークルの方ですか?」
「ええ、そうですけど」
あれ、この人は、なんか見たことある。だれだっけ?
「シネコンコンコンの真砂さんで?」
「いえ、違います。わたしはシネマディクトの会の人間です」
あ、思い出した。この会話、シネコンで劇場間違えて、そのまま観ちゃた人だ。
「あ、すみません間違えました」
「あの、もしかして入会希望の石原さんですか?」
わぁ、突然現れたメガネ女。
ウソ、わたしと同じ服着てる。
☆ ☆
某喫茶店。
「石原さんは、どんな映画がお好きなんですか?」
「はあ、とくにコレというジャンルはありません。面白ければ、なんでも」
「では、好きな俳優さんとかは?」
「好きな監督います?」
「好きな作品を教えて下さい?」
「そ、ソフィ・マルソーとか……」
目の前でボクを面接してるのが、みんな同じショートカットで同じ縁無しメガネの同じ顔。
三つ子?
でも、なんだか漂うダークな感じは何?
このサークルに入会は、やめとこ。
☆ ☆
「おい、力。おまえも遊んでばかりいないでちゃんと働け」
「働け? ちゃんとバイトしてんだろ親父。俺にはさぁビッグな俳優になる夢があるんだ。そんな事、親父も知ってるだろ」
「ナニを言ってるお前は長男だろ、会社を継いでもらうぞ。よく考えろ、お前のようなブ男は俳優にむいとらん!」
「はぁ〜。ブ男ぉ〜。俺は親父似だ。自分の顔をみな。だいたいなぁ親父だろ。俺に俳優になれと言ったのは」
「そんな昔の事は憶えておらん!」
「わかってんだよ、親父。ホントはニューハーフに、なった弟に会社を継がせたくないんだろ」
「兄さん、あたし親父の会社なんか継がないわよ」
活堂映吉の家庭の問題。
☆ ☆
この春からわたしは念願のある映画会社に就職した。
上司は女性で元女優だという美人。
「あなたたちが今年の新人ね。私は課長の阿部キネカ。よろしくね」
「木根間未来です。よろしくお願いします」
「城島軽人です、よろしくお願いします」
同期入社の隣の男はけっこうなイケメンだけど、どうもナルシストぽい。男のクセに薄化粧してるし、コンパクトを持ってるしで。京本政樹かマットか。
「さっそくで悪いんだけど、あなたたちに外の仕事してもらうわ」
で、やらされたのは。
着ぐるみで宣伝キャンペーンのビラくばり。
わたしは、ブタの着ぐるみで子どもに風船を。
相棒のイケメンくんは、顔が出たヒーローの着ぐるみ。
「木根間さんは、顔が見えなくていいですね」
そうだが、イケメンのナルシストのあんたは顔出し着ぐるみでホントは嬉しいのをわたしは知ってる。
つづく




