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偶然

15話


「あまり香港映画とか、観ない有楽さんには、わからないと思いますが。ツインズって、知ってます?」

「ああ、年に300本以上観てるから香港映画でも劇場公開してる作品なら観てる。ツインズも知ってる。え〜とジャッキー・チェンとも共演してるよな彼女たち。返還前の香港でアイドルだった二人だろ」


「さすが有楽さん。ボクね、ジリアン・チョンの大ファンなんですよ。なのにある事件がきっかけで映画に出なくなっちゃたんですぅ……。もう古い話ですけど。ジリアンのあの笑顔が、新しい作品で見れないんです……」


「僕はシャーリー・チョイの方が好みだが……。たしかにあの事件は」


「ですけどね、彼女がボクの夢に出てきたんですよ。いゃ〜嬉しかったな。思わずハグしちゃいましたよ」


「豊洲くん、そりゃうらやましい。僕は数十年映画ファンをやってるが夢に女優さんとかアイドルなんか出てきたコトないんだよ……」


 かみさんなら、夢で何度でも。しかし、怒られてばかり。


「豊洲くん、そりゃあぶないぞ。君の脳は映画脳化してるぞ!」


「なんすか、それ?」


   ☆ ☆


 シネマディクトの会にまた、入会希望者が、今度はわたしが日比谷さんを。


 しかし、なぞだわ。あの雑誌でしか募集しなかったと元会長が。


「オレ、方賀映造(ほうがえいぞう)。現在某大学の映像科にかよっています。オレの夢は映画監督か、プロデューサーになることです」


「え〜スゴイわねぇ〜。観る人はよく会うけど作る人は、はじめてね会長」

「キネマちゃん会長はあなたよ。私は平会員」


 そうだっけ、ソレに副会長はアミちゃんだ。


「アハハ実は、コチラは元会長で、わたしは二代目の木根間未来です。歓迎します方賀さん」


「あと、ですね有名になってキーラ・ナイトレイと結婚したいです。オレ、子供の頃に観た『バイレーツ・カリビアン』で一目惚れしてさぁ」


 おい、あんたが有名になる頃はキーラ・ナイトレイはいくつだ。


   ☆ ☆


「あ、和津直美(わつなおみ)です。普段は家事手伝いですが、エキストラを副業でしてます」


 二人目は前髪で目がかくれた、一見暗そうな女性だ。


「エキストラしてるんですか、じゃ映画に出てたり……」


「ハイ、最近はこんな映画に。パンフにも載ったんですよ」


 彼女は、そのパンフレットを開いて見せた。


「ひいっ、それですか!」


 たしかに彼女だ。


 ソレは映画で使われた。主人公の後にボワっと写っている顔の写った心霊写真。


「あ、この映画、私観たんだよね。すごく怖かったわ……。で、ドコに出てたの?」

「ホラ、会長。じゃなかった日比谷さん、この顔です」

「あら、怖い……。キネマちゃん、日比谷でもないわよ」

「そうでした月島聖子(つきしませいこ)さん」


 また一人個性的な娘が入った。


   ☆ ☆


 某大学の映像科教室。


「エイゾー。クラブ。とか、入った? テルがさ、卓球サークルに入ったんだって。あたし、大学入ってまでスボーツ部とか、やりたくないわぁ」

「部活でもサークルだろ、高校のとは違うだろ。テルのことだカワイイ娘でも見つけたんだろ」


「オレはさ、世界的に認められる映画を作る人間になるんだ。サークルとかしてるなら映画をバンバン観て勉強する」


「だね、あたしは女優とか……。あ、映画サークルとかも有るわよ。でも、大勢でゾロゾロと同じ映画観に行くのってなんか、やだなぁ〜。映画なんて観るのは一人よね」

「でも、カップルとかでよく」

「エイゾー、アレ映画観に行ってんじゃないのよ。イチャつきに行ってんのよ。エイゾーってドーテー」


   ☆ ☆


 某シネコン。


「あれ、おかしいなぁ数寄屋橋さん居ないなぁ。あの、すみません。ココって5番の劇場ですよね」


「違いますよ、ココは6番です」

「ああ、そうだ6番だ。て、てっきり5番だとアハハ。番号の憶え間違いだ」 


 この人、劇場間違えたと違う。笑ってごまかしてるけど。

 辰巳(たつみ)みたいな人、やはりいるのね。このまま違う映画観てくのかしら。

 指定席だけどガラガラだから大丈夫なのか?


 隣の劇場で。


「石原、来ねぇなぁ〜」


   ☆ ☆


 また某シネコン。


「あら、豊洲くん」

「マリオンさんだ。偶然ですね。席も隣で。なんか嬉しいです」

「大丈夫? 私、イビキうるさいですよ」

「ええっ」

「ジョークです」


「豊洲くん、こういう偶然もあるんだよ」


 え、後の席に有楽さん!


   ☆ ☆

 

「エイゾー授業終わったらカラオケ行こ!」

「あ、オレは映画観に行くから」


「おい方賀、授業終わったんだから映画は忘れろ。俺達とボーリング行かないか、別の科の女の子も来るぞ」



 そして、某カフェで。


「有楽さん、今日の時代劇最低でしたね」


「あーあ、時代設定がいいかげんだよ。江戸時代に無い物がやたらと出てきた。コメディならともかく……」


「今日朝イチで観たの、感激よ大スクリーンで観れるなんて」


「『午前9時のロードショー』だね」


「あーなんで中国映画の功夫映画は、つまらないんだ。香港映画見習えよ」


「CGばかりで動物映画と言えるかぁ?」


 学校の連中と遊ぶより、オレにはココのサークルのメンバーの方が楽しい。


             つづく    

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