数寄屋橋の仕事
12話
「おう、ヤローまだ動かねぇか?」
「はい、まったく」
「ホント、張り込みって〜のは、つまんねぇな。正月からよ。石原は、正月予定ね〜の?」
「こんな仕事してますから予定なんて。数寄屋橋さんは……。映画以外の予定は」
「あ〜。多少の家族サービスも、しないとな。が、女房も娘も俺の仕事、わかってるからなぁ」
「できた、ご家族ですね」
「あ〜。今頃は実家に帰って、うめ〜もん食ってんじゃないかぁ。石原、お前はいくつだっけ?」
「30です」
「早く結婚しろ、俺はその歳に娘作った。でも、オヤジやおふくろにおせ〜って言われた。石原、お前、いい男なのに女のニ、三人居ないのか?」
「ニ、三人どころか一人も……。縁ないんですよ僕」
「あ、つまんねぇ話しちまった……。そうだ、しりとりでも、すっか?」
「しりとりですか……。いいですよ」
「じゃ、古今東西映画のタイトルで」
「数寄屋橋さんの得意分野じゃないすか……」
「『クイール』」
「いきなり『る』ですか……。『ルーニー・テューンズ』」
「おっ、よく出たな。が、お前の負けだ。『ルーニー・テューンズ』のフルタイトルは、『ルーニー・テューンズ・バック・イン・アクション』だから『ン』が、付く。昼めしお前の奢りな」
「数寄屋橋さん、なんですか。そんなの聞いてませんよ」
「パンと牛乳くらい、たいしたことね〜だろ」
☆ ☆
大白里亜海、一人でシネコンで鑑賞。
うわぁ〜この映画、泣けると聞いたけどホントだわ。『ハンカチ用意忘れずに』のコピーは、ウソじゃなかった。
『うっううコリャ泣けるねぇ〜』
え、隣は空席だったはず。声が?
見ると、ねんどろいどフィギュアくらいの金髪の子供が?
よく見ると頭のてっぺんに角が一本。
小鬼かしら、あ、耳がとがってる。
ポップコーンを泣きながら食べてる、この子は?
『ポップコーンって、美味いなぁ。映画はおもしろいし、あぁビールが欲しい』
ビール、子どもじゃないんだ。
上映が終わって、外に。
アミはポップコーンを食べながら映画観て泣いている妖精を見たと、スマホの日記に入力した。
鬼じゃ、ないアレは妖精だ。
☆ ☆
「イヤイヤ、初日は気づかんかったよ。あんたみたいな美人さんが居たなんて。わし活堂だ。あんたは?」
「マリオン三越です。よろしく。マリーと呼んで」
「そんじゃマリーさん。ウチのホームシアターにセクシーなオシャレ映画を観に来ないかうっひひひひ」
「セクシー。オシャレ。そーゆー映画はノーグッドね、私、観ないのじゃ」
「お待ちなせぇお嬢さん。勝新の『座頭市血笑旅』なんかどうかの。座頭市シリーズのイチオシだ泣けるぞぉわしが……」
「OH! チャンバラ、座頭市! 観たいですシャチョーさん。I LOVEチャンバラ♡」
マリオン、スケベおやじだよ。気をつけて。
と、二人を心配そうに見てたわたしに。
「大丈夫よ、キネマちゃん。映画ファンに悪い人は居ないから」
よく、そういうの聞くけど、〇〇に悪い人は居ない。ソレはウソだと思う。
☆ ☆
再び、一人のアミちゃんはシネコンに。
「わぁ平日のシネコンはガラガラだわ」
アミ、一人でも上映してくれるのかなぁ。
なんて考えてしまった。
真ん中あたりのアミの席まで行くと。
「あっ!」
アミの席の隣に、あの妖精小鬼が。
『え、あんたオイラが見えるの?!』
「あ、誰も居ないなぁ……。映画、やるかなぁ」
『ほっ、見えてないか……』
アミは、見えないフリをした。
上映された。あたりまえか。
はじめてだ。なんか貸し切り状態。
が、しかし。
「ひいっ!」
『ひいっ!』
「うっわあ〜」
『うっわあ〜』
「映画とは、いえ酷い」
『酷い』
今日は妖精さんと、二人きりでホラー映画を見た。と、スマホに。
☆ ☆
またまた、遅れた新入会員が。
カフェで会う。
名前で女性とわかってたけど会長に言われて一緒した。
一応わたしは副会長だからと。
「ハーイ。あたし宝束みゆきで〜す! よろしくぅ」
やたらと元気のイイ二十代の女性だった。
「宝束さんはどんな映画をよく観ますか?」
「あ〜あたしぃプラピのファンで、映画は主役で選びますぅ。やはりキレイな人見たいから。映画がつまらなくても出演者で観れちゃいますぅ」
「そーゆーのも有りね。いい映画の選び方だわ」
「ありがとうございますぅ。あたし、大学の映画サークルでは映画の見方が不純とか、邪道とか言われてました。そんなコト言われたのは、初めてですぅ」
「ウチの会長は、すべての映画を愛する人だから、誰がナニを観ようが好きなのかは気にしない人だから。ほら、時々居るでしょナニナニしか、観ないようなのは映画ファンじゃないとか、アレを観ずして映画を語るなとか」
「はい、ウチの大学の先輩がぁ、まさしくソレですぅ」
「あ、宝束さんは大学生?」
「はい、一応……」
こうやって入会者も居れば、ときを同じくして、会を離れる人も。
「会長さん、私たち会を辞めるわけではないんですよ」
と、石場さんと元銀座一さんこと、石場京子夫婦は、石場さんの仕事の関係でアメリカへ移住する事に。
「本当に、ロスに住むんだ……。さみしくなるね」
「ロスに来たら、いつでも寄って下さい。ね、アナタ」
「ああっいつでも歓迎しますよ」
そんな日がわたしに来るだろうか。
空港へ会長と二人で見送りに。
「人生は、ナニがあるか、わからないわね。会長。まさか、ウチの会で出会って結婚して、海外へ行っちゃうなんて……」
「そうね。私も近いかなぁ……結婚」
「えぇ、ソレってまさか」
つづく




