数寄屋橋の素顔
10話
とあるシネコンロビー。
数寄屋橋家族、映画に。
「『野生馬物語』かぁ……。アレ観るか」
「ダメよ、アナタ。愛が『クレパスしんちゃん』見たいんだから」
「そうか……。愛、パパは『馬物語』が観たい」
「ヤダ、パパっ動物の映画見ると泣くんだもん。ソレに『しんちゃん』見に来たんだよ!」
「あ〜パパなぁアニメ苦手なんだ。愛はお母さんと観てきなさい」
「一緒に見るの楽しみにしてたんだよ……」
「アナタ……」
やっとパパが、おれてくれた。
が。
「おい、なんでペットのクロが捕まるんだ。可哀想にうっ……」
パパ、『しんちゃん』で泣かないで!
☆ ☆
映画と関係ない話……。
「まあ映画とかじゃよくあるけど、超常現象とか、みんなナニか体験したことある?」
右隣のマリオンが。
「私、小学生のトキにお葬式の夜、亡くなったグランマの幽霊見ました」
するとマリオンの向いの数寄屋橋さん。
「ウチのな、亡くなったペットのシロが夜な夜な寝室で三日間ダンスしてた……。ソレが可愛くてよぉ」
隣の会長も。
「テレビに超能力者が出た時に、真似してやったらスプーンが、曲がったのよ」
「レオタード着た、小さいオジさん見た」
アミちゃん。
「中学生の修学旅行の写真に変な顔が……」
豊洲くん。
「歩いてたら、前に進めなくなった。コレってヌリカベ?」
おい、有楽さんもか。
「木根間ちゃんは?!」
一同。
「わたし、UFOも見たことない……」
なんで、みんな。
驚いた。
☆ ☆
「木根間ちゃん、『会いたい』って歌さぁ知ってる?」
日比谷会長とカラオケに。行ったときに。
「知ってますよ。映画をいっぱい観ると約束した彼が亡くなった歌でしょ」
「あの歌、好きなのよね。でも、歌うと映画のトコで泣いちゃって歌えなくなるの……」
「わかる〜。会長ぉわたしも」
「あと、『いちご白書をもう一度』もダメ……。悲しい場面で彼女が涙ぐんでるのよ」
「あの、わたしぃそんな古い映画、観たことないんですけど。泣けるんですか『いちご白書』って?」
「実は私も観たことないの」
☆ ☆
お正月休みにシネコンで中学生の頃の同級生と偶然会いましてね。
映画終わって、カフェでお茶しながら映画の話をしたんですよ。
『なんか幸せになれる映画だったね。私も結婚したくなっちゃった』
『そうかい、僕で良かったら一度してみない』
『いいよ!』
「ウソだぁーっ」
わたしと会長は同時に。
これは、有楽さんのホントの話。
「ホント、ホント。僕も冗談かと思ったよ……。で、会長さん、木根間さん。式によぶから来てね」
☆ ☆
シネコンで娘の愛にせがまれて『走れ、ハム助』なる映画を。聞けばハムスターの映画だと。
動物物ならと連れてく。
「あ、コレは。こんにちは」
「おおっ」
「映画が、はじまるのでお先に」
「ああ」
「パパ、今のカワイイおねえさんはだーれ?」
「ん、あれは……。ただの知り合いだ」
「パパがあんな若い女の人と、ウソでしょ……」
「ホントだよ会社の……」
「浮気相手、ママに」
「そんなわけないだろ、よけいなことママに言うなよ」
「どうして……? あやしいなパパ。ココはお昼は焼き肉といちごパフェで手をうちましょ」
「あれ、今の子連れのオジさんは誰だっけ。なんか見たことあったから挨拶しちゃたわ」
☆ ☆
「このまえどこかの金髪のオジさんを数寄屋橋さんと思って挨拶しちゃいました。けど、女の子を連れてたから違うかなぁと……」
「あはは、アミちゃん。その子ども。もしかして頭にお団子二つヘアーの小学生くらいの女の子でしょ」
「はい」
「アミちゃん、ソレ普通のメガネかけた金髪の前髪おろしてたオジさんよね」
「はい、木根間さん知ってる人ですか」
「それ、みんな見てるわよ。その人は本物の数寄屋橋さんよ」
「みんなに、バレてた……」
「そうなんですか、ボクは知りませんでしたよ。銀縁メガネの数寄屋橋さんは」
「豊洲、誰が銀縁メガネと言った。おまえも知ってたのか」
☆ ☆
下校中の二人。
「数寄屋橋さん、聞いて。ついに一番上の兄さんが結婚することになったんだ。良かった映画オタクでも、結婚出来るんだ」
「有楽くん、言ったじゃないオタクでも結婚出来るって」
「数寄屋橋さん、イヤ愛ちゃん。実はボクも、兄の影響で映画オタクなんだ。そんなボクで良かったら……」
えっ、ナニよ。コレって。
「テレビで見たんだけど、ある結婚相談所のデータで。映画オタクとの結婚は幸せになれないというデータが……」
ウソだけど。
「だから、有楽くんのお兄さん、きっと離婚するわ。ごめんね。だから、わたし映画オタクとは付き合えないの」
「あ、兄さん!」
え、また。
つづく




