キネマの天使たち
1話
なになに。
みんなで映画を、楽しくお話しましょう。
シネマディクトの会 会員募集
面白いかしら、こういうの。
いつも、一人で映画を観に行って鑑賞後にあーだこーだと言いたくなるのよねぇわたし。
まわりに映画好きの友だちも特に居ないしなぁ。
その記事を映画雑誌で見て、載ってたメールアドレスへ送ってみた。
有楽町のとあるシネコンの入口前で会の人と会うコトに。
どんな人が来るんだろう。
会名しか、書いてなかったから男が来るのか女が来るのか?
約束の時間は過ぎてる。
「あのぉ〜」
わたしに声をかけてきたのは茶髪の縁無しメガネのおねえさんだ。
この人がシネマディクトの会の人?
「木根間未来さんですか?」
「はい」
「私、シネマディクトの会、会長で日比谷聖子です。はじめまして」
「あ、はじめまして木根間です」
「すみません、遅れちゃって。映画の時間には絶対遅れないんですけどね」
目はぱっちり大きくて、二重。唇がポチャと厚くて、見た目はスマートな茶髪の美人さんだ。
なんか、人も良さそう。
良かったオタクなオヤジでなくて。
オヤジだったら、別人のふりして帰るつもりだったけど。
「あの、他にも誰か会員さんは来るんですか?」
「あ……。今日は木根間さんと私だけです。まだ、会員はあなたと私の二人なのね」
え、そうなの。
☆ ☆
木根間未来。20歳。
わたしは、シネマディクトの会という映画サークルに入ったが、実は会長の日比谷さんはサークルを設立したばかりで、映画雑誌に募集を載せたらメールが来たのは、わたしだけだったと。
現在は会員二名のサークル。
シネマディクトの意味を聞いたら映画中毒だって。わたしはソコまで映画を見てない。
いいとこ年間二十作。まあウチで見るのも足すと三十作以上なるかな。
子供の頃に親に連れられて観てから映画は劇場の方が好きなんだけど。
わたしは普通に観てるつもりだが友だちは多いという。
普通の人はシネコンには年に二、三回しか行かないと。
シネマディクトの会に入ってから、観る本数が増えた。
半分は会長の日比谷さんと一緒。
わたしはサークルに入ったつもりだったけど、映画友だちが一人出来ただけのようだ。
映画鑑賞数は、まえの倍は増えたかも。
トー然、はずれ映画も出てくる。
あるムチャつまらん映画を観ちゃた帰りのカフェで、日比谷さんに聞いてみた。
「ねぇなるべく、はずれのない映画を観る方法ってないかなぁ」
「あるわよ。すべての映画を愛すればいいのよ。ねっ、簡単でしょ」
ねって、日比谷さん。それは、かなりむずかしくない?
☆ ☆
久々に会う友だちと最近ヒットしているからとシネコンで映画を観に。
あまり面白くないわねぇ。コレが今一番入ってる作品なの。
ふわぁ〜。
あくび、長くて寝そうだった。
「どうミク、この映画……。えっ、ウソ! ミクって。こ〜んな、つまらない映画でよく泣けるわね」
「違うわよ、あんまりつまらなくて眠気がして、あくびで涙が出たのよ!」
こ〜んな、つまらない映画に誘ったのは、あんたよね。
世間の評判は、あてにならない。
☆ ☆
シネマディクトの会、三人目の会員が入った。
ちょっとアニメオタクぽいっロン毛の男性。
歳は同じくらいかな。
「はじめまして。ボクの好きな映画のジャンルはアクション物です。豊洲健太といいます。よろしく」
「よろしく、会長の日比谷です。隣は副会長の木根間さんね」
いつから副会長に。会長ぉ。
四人掛けのカフェのテーブルに、わたしと日比谷会長の前で彼は自己紹介を始めた。そして、好きな映画を語りだした。
「アクション映画って言っても僕はカーチェイスや銃撃戦なんかよりマーシャルアーツとか功夫映画が好きなんです」
「じゃ香港映画とか好きなのね。豊洲さんって、なんだか、そーゆー顔してるよね」
と、わたしが。なんかカンフーやりそうな顔。
どんな顔だ。
「あ、そう言えば、あなたジャッキー・チェンに似てるかと言われない?」
今のより、昔のカンフー映画の頃のだ。実はわたしも香港映画、中国に返還前のが好きだ。
「あ……。たまに言われます。でも、ちょっとだけね。髪型のせいかな」
彼は目の前のホットココアを一口飲んで。
「ジャッキー・チェンの映画は全部観てます。もちろんジェット・リーのも!」
今度はお水を飲みほして。
「ジェット・リーは『ワンチャイ』シリーズのウォン・フェイホンが一番好きでして。そもそもウォン・フェイホンという実在の功夫マスターは南派少林拳の使い手なんですが、リーの習ってたのは北派の拳法で……」
わっこの人、映画ではなく拳法の話を始めちゃたよ。
話しだしたら止まらない。
この人きっと、女の子にもてないだろうな。
つづく




