十月二十五日
六時五十三分きっかりに目が覚める。今日はやけに底冷えするな、例の理論で行けば今日は晴れなのかもしれない。朝の日差しを浴びたいものだと思ってカーテンに手をかけようとする。
その瞬間、私は違和感を覚えた。
時間を確認するためにスマホの画面を付けた時、なんと表示されていたか?
気味の悪い妄想を振り払うためにもう一度スマホを開くと。
十月二十一日、月曜日。六時五十四分。
なにこれ、夢でも見てるの?
理解を拒んだ私の頭はそれでも、昨日のことや一昨日のことを覚えて……。
――何があったかな。
嘘だ、だって……。
――何もなかった。
私の頭の中に別な人がいるかのように声が聞こえる。
昏い、それでいて虚な声。
――今まで日付は見てきたか?
毎朝起きた時に私は時間を確認している。学校に遅刻してはいけないから、タイマーまで付けて。
そうだ、時間しか確認していなかった。
――今日は何がある?
今日?
二十五日の金曜日は学校に行って、部活をして。
――意味があったと思うか?
意味?無いことはないはずだ。
学校の授業に出席して、嫌なチームメイトとバレーの練習をしているのだから。
「それなら結局は意味がないのと同じだろう」
突然、背後から声が聞こえ、私は飛び上がるかの勢いで振り返った。
黒い服に身を包んだ謎の人物が立っている。顔は見えず、ボロボロの服は凡そ現代のものに見えない。
「誰?」
震える喉から絞り上げて出した一言。
得体の知れないそいつは呟く。手には何か大きなものを握りしめているようだ。
「貴方を解放しに」
その手に握られている何かは私を解放するための道具なんかじゃないことはとうに察している。
直感が告げる。逃げろ、と。
「私は誰にも捕らえられていない、だから」
「何もわかっていないなら、ワタシが解放させる」
精一杯に上げた声も虚しく、そいつが振り翳した黒い影が私の肩口に入り込み、突き抜けた。
痛みは無いし、苦しみもない。
でも、意識が遠のいていく。
力の抜けた私は布団に倒れ込み、最後にそいつを一瞥する。
ようやく視界に入ったそいつの目は、不思議と黒い七色の光を宿していた。
灰色の摩天楼。その日の当たらない地上部分に、黒い装束に身を包んだ人影が。
――人影は四千五百に及んだ。
それを見る男が一人。
カタルシス=アポカリプスと名乗りメディアに露出している彼は一言を呟いた。
「今日も災難なことで」
彼はフラッとその場を立ち去った。
そしてやってきた十月二十一日。
彼の行方も、沢山の人影の行方も、誰も知らない。




