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ハウフォード公爵家(2)

「お兄様!こんなところにいらしたのね!」


 扉がバンッと勢いよく開き、荘厳な応接間に響く穏やかな空気が、一瞬にして破られた。燃えるような赤髪を勢いよく振り乱して、元気いっぱいに飛び込んできたのは、キャサリン・アーノルト伯爵令嬢だった。


 彼女の動きはどこか猫のようにしなやかで、それでいて若さ特有の無邪気さを漂わせている。体つきや身のこなしには大人びた雰囲気があるものの、愛らしい顔つきや時折見える八重歯が彼女を実際の年齢以上に幼く見せていた。


「キャサリン!」


 セドリックが軽く眉を寄せつつも、どこか呆れたような微笑みを浮かべる。


「ノックくらいしなさい」


「えー、お兄様相手だし、別にいいじゃない!?」


 キャサリンは全く気にする様子もなく部屋に飛び込むと、部屋の中まで駆け寄った。


 キャサリンはハウフォード公爵家の遠縁にあたるアーノルト伯爵家の娘だ。ハウフォード公爵家とアーノルト伯爵家は事業提携もしており、お互いの家や領地を頻繁に行き来している。キャサリンはセドリックと歳が近いこともあり、幼い頃から頻繁に顔を合わせては兄妹のように過ごしていた。


「アーノルト伯爵夫妻が打ち合わせに来ているのか?」


 セドリックが何気なく尋ねると、キャサリンは小さく首を振る。


「いいえ、お母様とお父様は今領地にいらっしゃるの。今日は執事のジャベールが両親の代わりに来ているわ。で、そのついでに私も一緒に来たってわけ!だって、家だと退屈だったんですもの」


 そう漏らした後、彼女はセドリックの隣に座るエレノアに気づき、目を丸くした。


「あら……こちらの方は?」


 セドリックが軽く咳払いをして、穏やかな声で応じる。


「紹介しよう。こちらはエレノア・ハモンド。僕の婚約者だ」


 その言葉に、キャサリンの目がさらに大きく見開かれる。


「婚約者!?お兄様の!?」


 突然の事実に驚きを隠せない様子のキャサリン。だが、エレノアはそんな彼女に優しく微笑みかけ、一歩前に進み出た。


「初めまして、エレノアと申します。セドリックさんにはいつもお世話になっています。どうぞお気軽にエレノアとお呼びくださいね」


 エレノアの落ち着いた親しみやすい挨拶に、キャサリンは一瞬ぽかんとした後、ぱっと笑顔を咲かせた。


「わあ、本当に素敵な方だわ!お兄様、すごいじゃない!」


「キャサリン……声が大きいぞ」


 セドリックが呆れたように言うが、キャサリンはそれを気にせず、エレノアに近寄ってきた。


「ねえねえ、エレノアさん、どうしてお兄様なんかと婚約しようと思ったの?私、あの陰気で真面目すぎるお兄様が婚約者を見つけるなんて夢にも思わなかったわ!」


「まったく…陰気とか真面目すぎるとか、言葉を選べ」


 セドリックが即座に抗議するが、キャサリンは悪びれる様子もなく舌を出して笑う。


「だって事実でしょぉ~?小さい頃から、お兄様はいつも難しい本ばかり読んでて、私が遊びに誘っても『今はそれどころじゃない』って冷たく断るんだもの!」


「研究熱心だっただけだ。それをそんな風に言うな」


「それを陰気って言うのよ!」


 キャサリンがセドリックをからかうたびに、彼の眉間の皺が深まる。それでも二人のやり取りにはどこか温かさがあり、まるで実の兄妹のようだった。


 エレノアは微笑みながら、そんな二人を見守っていた。その笑顔には、彼女が心からこの場の和やかさを楽しんでいる様子が滲み出ている。


「ふふ……お二人の関係、とても素敵ですね」


 エレノアがぽつりと呟くと、キャサリンがふっと顔を赤らめた。


「そ、そうかしら?」


「ええ。兄妹のように仲の良いお二人を見ていると、私まで幸せな気持ちになります」


 その言葉に、キャサリンは少し照れくさそうに鼻をこすった。


「そ、そう?ならいいんだけど……!」


 一方で、セドリックはその様子を見て小さく溜息をつきながらも、口元には微かな笑みを浮かべていた。

「エレノアさん、こんな騒がしい妹みたいな存在がいて驚いたでしょう?」


 エレノアは、ふっと小さく笑い、やんわりと口を開いた。


「いえ、とんでもないですわ。キャサリンさん、とても可愛らしいですね。実は私、女兄弟がいないので、こうして妹のような方とお話しできるのはとても新鮮で、嬉しいです」


 その一言に、キャサリンの頬がぱっと赤く染まる。


「えっ、そ、そんな……!私が可愛らしいなんて……えへへ!」


 照れた様子のキャサリンは、嬉しさを隠しきれずにくるくると部屋を歩き回るような仕草を見せた。


「エレノアさん、そんなこと言われたの初めてよ!嬉しい!」


「本当に?私は心からそう思ったのだけど」


 エレノアが柔らかく笑みを浮かべて言うと、キャサリンは顔を真っ赤にしてさらにはしゃぎ始めた。


キャサリンが登場すると、一気に場面が華やぎますね。

彼女は今後もたくさん登場するので、是非可愛がってやってください。

実は彼女にはイメージとなった有名なVtuberがいます。分かったらぜひコメントで教えてください^^

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