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馬車にて(1)

 下校の鐘が鳴り響き、学園に賑わいが戻る頃、セドリックはエレノアを迎えるために校舎の玄関前へと足を運んでいた。エレノアは既に待っており、軽く微笑みながら手を振っている。


「待たせたかな?」


「いえ、今来たところです」


 エレノアは軽やかな声で応じたが、その顔には少し疲労の色が浮かんでいる。セドリックは彼女の表情をじっと見つめた後、穏やかに提案した。


「一緒に馬車で帰ろう。道中も話ができるし、何かあったらすぐに対応できる」


 しかし、エレノアはやんわりと首を横に振る。


「ありがとうございます。でも、少し寄るところがあるんです。それに、馬車で送っていただくのは大げさですから」


「寄るところ?」


 セドリックが眉を上げる。


「ええ、ちょっとした用事です。そんなに長くはかかりませんので、心配しないでください」


 エレノアはにこりと笑みを浮かべるが、その微笑みの奥に、どこか確固たる意志が感じられた。セドリックは一瞬口を開こうとしたが、彼女の気丈な様子を見て押し黙った。


「わかった。でも、何かあればすぐに知らせてくれ」


「はい、ありがとうございます」


 二人が別れの挨拶を交わしていると、少し離れたところからキャサリンの声が響いてきた。


「セドリックお兄様!」


 振り返ると、キャサリンが急ぎ足でこちらに向かってくる。その後ろにはノエルの姿も見えたが、彼女は少し離れた位置で立ち止まっている。


「お兄様、私も一緒に帰るから馬車を使わせてね。……あら、エレノアさんも一緒?」


 キャサリンが目を輝かせて尋ねると、エレノアは軽く笑って首を振った。


「いえ、私は少しやることがあるので」


「そうなの?残念!」


 キャサリンは少し残念そうに呟きながらも、すぐに気を取り直した様子でセドリックの方を振り返る。


「じゃあ、私が兄様と一緒に帰るわ!ノエルは……ほら、また何か用事があるって」


 ノエルの方を見ると、彼女は微笑みを浮かべたまま、やはり首を横に振る。


「キャサリン、先に帰って。私は少しだけ残りたいことがあるから」


 キャサリンは一瞬不満げな表情を浮かべたが、ノエルの穏やかな微笑みを見るとすぐに諦めたようだった。


「まあいいわ。ちゃんと気をつけて帰るのよ!」


 ノエルが微笑んで頷くのを確認すると、キャサリンはセドリックとともに馬車に向かい始めた。


 エレノアも軽く頭を下げると、学園の中へと戻っていく。セドリックは一瞬彼女の後ろ姿を見つめたが、やがてキャサリンの後を追い、馬車へと向かった。


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