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カフェラウンジ(1)

 4人はカフェの中でも2階に位置する、高位貴族用の個室ラウンジへ向かった。セドリックが公爵家の名を使って手続きを済ませると、目の前の扉が開き、二階へと繋がる階段が現れる。4人がラウンジの個室に案内されると、扉が静かに閉まり、その瞬間、外界の音がすべて遮断された。個室内は、穏やかな静けさと上品な香りが漂い、まるで別世界のようだった。壁一面には美しい木彫りの装飾が施され、天井には繊細なシャンデリアが煌めいている。上質な絨毯が足音を吸収し、歩くだけでも特別な空間に足を踏み入れたことを実感させる。


「わぁ、すごい……!」


 キャサリンは感嘆の声を漏らしながら室内を見渡し、嬉しそうに目を輝かせた。


「ねぇ、こんな素敵な場所、お兄様の名前で使えるならもっと早くお願いすればよかったわ!」


 その無邪気な言葉に、セドリックは肩をすくめ、軽くため息をつきながら答える。


「キャサリン、ここはそんな軽い気持ちで使える場所じゃないんだ。このラウンジの個室は防音設備が整っているうえに、部屋数も限られている。高位貴族同士の重要な会談や密談に使われることが多いんだよ。遊び半分で頻繁に使っていたら、父上に叱られるのは目に見えている」


「ちぇっ、わかってるわよ。でも、こんな特別な場所を使えるのに、私がお願いしてこなかったなんて損した気分だわ」


 キャサリンは少し拗ねたように唇を尖らせるが、その顔にはどこか満足げな表情が浮かんでいる。


「ふふ、キャサリンらしいわね」


 ノエルが微笑みながらキャサリンの肩に軽く手を置く。


「でも、セドリックの言う通りよ。こういう場所は必要なときにだけ使うからこそ、価値があるのよ。今日だって、少し目立ってしまったから、ここで静かにお昼を過ごせるのは幸運だわ」


「そうよね。ノエルがそう言うなら仕方ないわ」


 キャサリンは素直に頷きながら椅子に座ると、背もたれに体を預けた。その横顔には、どこか満足感がにじんでいる。


 2人の様子に、エレノアは小さく微笑み、改めてノエルとキャサリンに向き直る。


「本当に、先ほどは助けてくださってありがとうございました。おかげで、無事に切り抜けることができました」


 彼女の感謝の言葉に、キャサリンは照れたように首を振った。


「えぇ、別にお礼を言われるほどのことじゃないわ!私たちが何かしたってわけでもないし。ただ、あの二人が勝手に逃げ出しただけよ」


 その謙遜した態度に、ノエルが小さく笑みを浮かべる。


「私も、大したことはしていませんわ。キャサリンも隣にいてくれましたし…。それでも、感謝の気持ちは受け取りますわ。キャサリンの大切な家族は、私にとっても大切な存在。助けることができてよかったわ」


 その言葉に、キャサリンが嬉しそうに目を輝かせる。


「そうよ!ノエルの言う通り!私たち家族なんだから当然じゃない!でも、さっきのエレノアさんの毅然とした態度、本当にかっこよかったわ!


 エレノアはその言葉に少しだけ恥ずかしそうにうつむいた。


「ありがとうございます。でも、あの場では、ああする以外に方法がなかっただけです」


「いや、君の対応は見事だった」


 セドリックが横から口を挟む。その表情には誇らしさが滲んでいた。


「あの二人の態度には目に余るものがあったけど、君が冷静に言い返してくれたから、彼らも少しは引き下がらざるを得なかった」


 セドリックの言葉を聞き、キャサリンはニヤニヤしながら茶々を入れる。


「でも、これからはもっと強気でいいんじゃない?だって、セドリックがいるもの!」


 その言葉に、セドリックはわずかに赤くなりながらも、真面目な口調で言葉を返した。


「もちろんだ。エレノアを守るのは僕の役目だ」


 その真摯な言葉に、エレノアは心からの笑みを浮かべた。そして、そんな二人を見守るノエルとキャサリンの眼差しにも、優しさと安心感が宿っていた。


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