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企画室に戻って、パソコンの電源を入れる。

午後は急ぎの仕事もないし、真崎さんとの打ち合わせは夕方からだし、のんびりだなぁ。

定時で帰れそうな勢いなのに、こそこそ帰らなきゃいけないから時間ずらさなきゃ。

面倒だなぁ、もう。


寒いところから戻ってきたから、暖房の効いた室内はとても暖かく、眠い(笑


欠伸をかみ殺しながら、午前中から処理していたデータをファイルから引っ張り出す。


今日は斉藤さんだけ在社してるけど、なぜか帰ってきてない。

ラウンジででも、お茶飲んでるのかな。

まぁ、課長もいないことだし、のんびりといたしましょう。


メーラーを立ち上げて新着メールを確認する。


ずらずらと新着メールの一覧が更新されて、開封しながら処理を始める。

ほとんどが、今進めている企画商品の確認事項ばかりで、目で内容を追いながら削除していく。

一日に百件以上は来るから、片っ端から処理していかないと後が辛い。


単純作業を進めながら、呟く。


「女の嫉妬、ねぇ……」


加奈子の言葉に、溜息が出る。


まぁ、高校まではよくやられてたなぁ。

かるーい苛めもどき。

小学校が、一番酷かっな。

高校生だと先輩後輩って関係になるから、流しておけばよかったけど。

小学校くらいの子供だと、ここまではいいけどこれ以上はダメっていう感覚がまだ薄いから。


一度学校の遊具から落とされて、頭縫ったっけ。

あれ、傷残ってんのよね。

まぁ、小さいからそんなに目立たないけど。


「それよりも――」

目を少し伏せる。

加奈子の言っていた、哲の気づいた何かって何のことだろう。

だから、余裕がなくなったって言いたいんだよね? 加奈子は


って言うか、そもそもなんに対しての余裕?



――


わかんないや。

あー、もうなんていうか殴り合いとかで全部決着つかないかなぁっ

柿沼のこと、考えるだけで頭痛くなってくる……



がっくりと肩を落としながら新着メールを確認していくと、新規のアドレスからメールが来ていて。

差出人を見て、件名に視線を走らせるとつい笑ってしまった。


――他社にいる弟です


おいおい、どんな件名だよ(笑

絶対ふざけてる。


「亨くんてば」

メールの内容を確認して、思わず呟く。


年明けに一度弊社のほうに来ませんか、というなんだかお誘いのようなメール。


いや、仕事なんだけど、ふざけすぎでしょ。

相手が私だからなんだろうけど仕事上はまずいぞー、ビジネスマナー違反しまくり。


「ま、いっか」


思わず言葉に出して頷きながら、了承のメールを打ち始める。


父親に会いたくないから、そんな理由で断るわけにはいかない。

あれは、他人。

その為に、私の行動範囲を狭められてたまるもんか。


亨くんからのメールにも、自分ひとりで対応しますけど任せてください、なんて可愛いことかいてきてるし。

反対に、ありがたい。



鼻歌が出ちゃいそうな雰囲気でカタカタと小気味よくキーボードを鳴らしていたら、すごい音を立てて勢いよくドアが開いた。

「久我!」

「はい!」

いつにない声量に、思わず姿勢を正して元気よく返事を返す。


声の発生元を見ると、そこには斉藤さん。


なんか、ものすごい形相です。

あの、こわいですよ、それ。


「どうしたんですか、斉藤さん」

すると斉藤さんはドアをこれまたバタンと大きな音を立てて閉めて、ずかずかと私の前に大股で――って言っても、二・三歩ぐらいだけど、――歩いてきた。


思わず椅子から腰を浮かす。


その目の前で、ガバッと――


「すまん!」


斉藤さんが、頭を下げた。



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