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「み~さき♪」

翌朝アパートから出勤した私は、エレベーターで加奈子と一緒になった。

「昨日は自宅に帰れたんだ、よかったね」

あら、優しい言葉。

毒舌加奈子の優しい言葉に、思わず頷く。

「なんか仕事が早く片付きそうなんだ」

「そっかー、それが一番だよねぇ。身体休まるし」

――

一瞬黙って、加奈子を見上げる。

「何? 何か……企みごと……?」

エレベーターから、五階につくことを知らせる音が、ポーンと鳴り響く。

加奈子は見上げる私を笑顔で見返すと、エレベーターに向き直る。

「親友の体調を心配したらおかしいの? まったく、疑り深いんだから~」

タイミングよく開いたエレベーターのドアから押し出されて、五階の廊下に降りた。

振り返ると、閉まるドアの向こうで加奈子が手を振っている。

「また明日ね~」

という、言葉を残して。




なんとなく釈然としないままセキュリティーチェックを通って、一番奥の企画室に入る。

そこには課長と斉藤さんの姿。

「おはようございます」

声を掛けながら入っていくと、課長の席で話していた二人がこちらを振り返る。

「はよー」

「おはよう」

ほら、ニコリともしない。

ついじっと見た私に、課長が眉を顰める。

「なんだ、久我」

――なんだじゃないよ、こっちは夜に眠れないほど悩んだっていうのに。

そりゃ、二日くらいでしたが。

「いいえ、今日は私展示会なんで、午後から外に出ますね。そのまま直帰します」

「そうか」

一言だよ。

思わず悪態をつきたくなるがそのまま自分のデスクに鞄を置いて、マーカーを手にとる。

企画室の壁には大きいホワイトボード。

会議の時に使うまっさらな部分の下に、五人の行動予定を書き込む場所がある。

基本的には就業時間は決まっているけれど、半分はフレックスタイムのようなもの。

仕事さえ進めれば、自分で管理できる。

要するに、残業とか休日出勤とかが多いから、会社で管理が出来ないだけなんだけどね。

予定を書き込んでいると、斉藤さんが顎に手を当てて横に立った。

「あれ? 課長が行く展示会、久我の場所と近いですよ。一緒に出ちゃえばどうです?」

「え?」

思わず不服そうな声が出てしまって、慌てて口を塞ぐ。

斉藤さんが驚いたように私を見下ろしたけれど、すぐににやりと笑った。

「あはは、嫌がられてますよ加倉井課長。さんざん怒らせた罰ですね」

「えっ、いえ、嫌がってなんか……」

ただ、何話せばいいかわからないだけでっ

居心地悪いだけでっ

それって嫌がってるって、確かに言うかもだけどっ

斉藤さんを睨みあげると、その後ろに立った課長と目が合う。

課長は私の行き先を確認してから小さく頷くと、

「じゃあ、面倒だがごまでもするか」

ぷちんっ

「そう言うのは、口に出さずにしろぉっっ!」

再び私のボディーブローが炸裂した事は、言うまでもない。





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