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ぐぁぁぁ、と女らしからぬうめき声をあげて美咲が悩んでいる頃。
ラウンジで珈琲を買っていた哲の携帯が、着信音を鳴らす。
「あー、亨? え、今? うん、大丈夫」
相手は亨。
{待ち合わせなんですけど、今日そっちの方に行くんで本社のそばで待ってますね}
「あ、ホント? じゃあ、七時には外に出るようにするな。美咲にも言っとくから。あと、別に俺相手に敬語使わなくていいぜ? 同い年だし。な?」
電話の向こうは何か逡巡しているようだったけれど、分かりました、と答えて通話を切った。
携帯をYシャツの胸ポケットにしまいながら、自販機で缶珈琲と紅茶のペットボトルを買う。
あいつは珈琲より紅茶派だから。文句はねぇだろ。
小銭を自販機に入れながら、小さく溜息をつく。
つい、本音言っちまった。
あいつが気にするの分かってるのに。
ホント、俺ガキだよなぁ
……どうも、焦ってる自分がいる。
最近、課長が目に見えて美咲をかまいだしたから
多分、打ち合わせの翌日から。
今まで、通り一遍の無表情ポーカーフェイスだったのに、美咲と話してると感情が表情にも声音にも言葉にも表れてる。
美咲はからかわれてるっ! て怒ってたけど。
そうじゃない。
目に見えて、特別扱いを始めたんだ。
本人もきっと分かってて。
間宮さんも斉藤さんも、微笑ましく見守ってる
「あーあ」
取り出し口に出てきた缶珈琲を取り上げながら、思わず目を瞑って息を吐く。
――多分、俺
感情の箍をはずすきっかけ、多分、俺
ポケットから小銭を取り出して、投入口から力なく落とす。
美咲のことで企画室の前で話した時。
自分で思っていた以上に、課長を煽ってしまったらしい。
気付いて後悔しても、後の祭り。
美咲はいらいらしながらも、傍から見れば以前より課長との間が縮まっているのが分かる。
そして――
無意識に、俺との関係も確立してきたように――
――感じる