10
企画室に戻ると、課長がパソコンとにらめっこしていて。
私達が戻ったのを見て、少し顔を上げた。
「早かったな」
「結構、あそこにいましたから。だいぶ休憩とってしまいましたね」
間宮さんが席に座りながら、課長に笑う。
「まぁ、相手先がいたんだから仕方ない。あと五分待ってもらえるか? 会議はそれからで」
四人四様の返事をして、各々持っている仕事を始める。
私は出ていなかった分の会議資料を確認し始めた。
「――そういえばさ」
いつもは私語の少ない間宮さんが、ふっと顔を上げて私を見た。
「久我さんて、久我部長と元々の知り合い? 親戚とか……」
「――え?」
思わず聞きかえす。
哲も顔を上げて間宮さんを見てる。
間宮さんはボールペンを持ったまま、小さく首を傾げた。
「いや、結構話を聞かれたな、と思って。差しさわりのないものは答えたけど、とりあえず適当に流したよ」
「――そうですか、ありがとうございます。ホント関係のない方なんですけど、そんなに同じ苗字って言うことが珍しかったんですかね」
間宮さんはなんとも腑に落ちない表情をしていたけれど、
「そっか、まぁそうなのかもね」
と、曖昧に笑う。
その場はうやむやに、何とか終わった。