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15

私の状況……?


考えながら、もう一度囲いにもたれる。

企画広報部……。初めて聞いた部署。


私が? そこに?


突然すぎて、分からない。

どうしていいのか分からない。


それ以上に――


――美咲ちゃんの状況もね――


もしかして、課長と哲の間でどっちつかずに……何も決められていない私のことを言ってる……んだよね、きっと。



分かってる。

いくら本人達に言われたからって、斉藤さんに言われたからって今の状況はよくないって事くらい。


分かってる。

決めなきゃいけないのに、それから目をそらしていることくらい。


何を言ったって、言われたって、決めるのは私なのに……



「おーい、美咲。お前何してんの、こんなところで」

後ろのドアが開いて、哲が出てくる。

顔だけそっちに向けて、んー? と呟いた。

「酔い覚まし」

隣に立つ哲は、面白そうに私の頭をぽんぽんと軽く叩く。

「酒弱いんだから、飲みすぎるなよ? 酔ったお前介抱するの、面倒くせぇ」

「幼馴染なら喜んでやれ」

そのまま、哲を見上げる。

「哲はいいね、お酒強くて。あんまり顔にも出ないもんね」

私の横に肘を付く哲のYシャツの白さに、目を反らして眼下に視線を移す。


哲は腰を少し屈めながら、囲いに体重をかけた。

「そりゃ営業は飲みが多かったからな、酔っ払ってたら仕事にならねぇよ」

「……ふぅん」

囲いに両腕を置いて顎をのせる。

哲から顔が見えないように、腕の中に顔を埋める。

「どうした? 具合悪いのか?」

そんな私の態度に、哲が珍しく心配そうな声を出す。


……哲、何で企画課来たの?


哲の手の平が、私の頭を撫でる。

本当に珍しく、優しいその態度につい聞いてしまいそうになる。


……私がいたから……?

私が企画課に行ったから、まさか、追いかけてきた?


でも、それを聞くのは卑怯だ。

哲への答えを用意していない私では。


軽く頭を振って、哲の手をやんわりとどける。


「んーん、平気。さてと、戻ろっかな」

後ろを向こうとした私の頭を、哲の手ががっちり掴む。

「なぁ。何か言われたのか? 今、こっち来るときに真崎さんとすれ違ったけど。それで、様子おかしい?」

そのまま私の顔を持ち上げると、視線を合わせられる。

じっと見つめるその目は、真剣で。心配そうな色が見える視線に、目を反らす。


「ううん、何も言われてないよ。なんかやっぱり飲みすぎたみたいで。戻ろ」

俯いた顔でなんとか笑顔を作る。


「美咲? 俺……」

「ね、哲。行こう」

何か言いかけたその言葉を、聞こえないように遮る。


哲は一瞬黙って、小さく息を吐いた。

そのまま手をはずして、歩き出す。


「さすがにもう飲むなよ、顔、変な色」

「変とは何だ、変とは!」

前を行く哲の背中を叩きながら、内心不安と安堵の入り混じった複雑な気持ちでその背中を見つめた。


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