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「広報部所属の真崎 昴です。っていっても、初めましての人は瑞貴くんしかいないけどね。期間限定三ヶ月間だけ企画課と兼任勤務になりますのでよろしく」

――そんなに長く……

うんざりした顔を隠さずに、じとーっと視線を送る。

「そんな熱烈視線で見なくても! 席はもちろん美咲ちゃんの――」

「――机から対角線のここで」

課長が自分の傍にある机を指差す。

間宮さんの斜め後ろにいつの間にかあった簡易デスクと椅子に、全員の視線が向く。

「加倉井課長、僕は美咲ちゃんの――」

「机から対角線のここで」


有無を言わさない課長の無表情に、年甲斐もなく口を尖らせながら言われた椅子に座る。

「なんだよー、美咲ちゃんで遊べると思ったのに」

「真崎、いい加減にしなって。ここ職場だよ?」

いつもよりトーンダウンしている間宮さんの声が、真崎さんの言葉を遮る。

「ていうか、なんでお前こっち勤務なんだよ。神戸からお払い箱か?」

斉藤さんが椅子の背もたれに寄りかかりながら、持っていたボールペンをくるくると回す。


真崎は座った椅子ごと身体を反らしながら、斉藤さんを見る。

「美咲ちゃんの出した今回の企画、あれの広報、僕が担当なんだよね。加倉井課長の企画と連動だけどそっちはすでに動いちゃってるじゃない。だから、美咲ちゃんの企画は、僕と二人で進めることになったんだ」

「二人で……?」

「そ、兼任だからずっとこっちにいるわけじゃないけど、企画を詰めていく時は必ず僕と一緒にね?」

「――げ」

思わず、嫌そうな声が出る。

その声に真崎はにやりと笑いながら、課長を見る。

「だから美咲ちゃんの横がいいって言ってるのに、加倉井課長も頑固なんだからぁ」

「――お前が横に行ったら、久我の仕事が進まない。必要以上は近づくな、拳をお見舞いされたくなければな」

いつもより低めの声で課長が言うと、真崎はきょとんとした顔で首をかしげた。

「――課長の?」

きっと真崎と課長以外の内心は、いっちゃったよ……と汗をだらだら流していたに違いない。

課長は一瞬真崎に視線を向けると、何事もなかったかのようにキーボードをたたき出す。

「……久我のだよ、さっきすでに喰らっただろう?」

「あぁ、美咲ちゃんのね。あれはあれで、愛情表現」

「な、わけない」

既に仕事を始めていた私は、真崎の方も見ずに一言でぶった切る。


「美咲ちゃんてば、ホント強気ね。まぁいいけどさ、こっちにはほとんどこないと思うし。美咲ちゃんが広報に来る方が多いと思うよ。僕、あんまりあっちを抜けられないんだ」

「じゃあ、なんで今ここにいるんですか」

離れられないんじゃ、来なきゃいいのに。

真崎は満面の笑みを浮かべる。

「そりゃ、美咲ちゃんの驚き顔を見たかったからね」

くすくすと笑う真崎に、なぜか課長が口を開いた。


「――俺の拳をお見舞いされたければ、やぶさかではないな。ただしその後、お前が立っていられるか保障はしない」


しーんと、静まり返ったのは言うまでもない。




なぜならば、しゃれにならないから――



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