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それは嵐-1

たった一人の存在が


周りを巻き込み 大きくなる


その中心は


果たして あの人?


それとも……


        わたし?




――第5章 それは嵐
















「おはよーございまーす」

いつもどおりの月曜日。


始業三十分前に、企画室に入るのが私の日常。

そこには間宮さんだけがいつも出社してて、ほんわかな癒しの笑顔を――

「おはよう、美咲ちゃん」

ドアを開けたまま固まってしまった私に、目の前に佇む人はにっこりと笑いかける。


その笑顔に押されるように一・二歩後退するとおもむろにドアを閉めてみた。


――なんでしょうか。

ここにいるはずのない人の姿を見た気がします。

嫌な予感つきで


ノブを持ったままドアの前に立ち尽くす。


あれは幻?

ただの幻想?

ていうか悪夢?


「何やってんだ、美咲。邪魔だよ」

その声に横を向くと、廊下をこちらに向けて歩いてくる哲と斉藤さん。

「何って……」

思わず斉藤さんを見ると、怪訝そうに首を傾げる。


斉藤さんが知らないんじゃ、きっと見間違いだったんだよね?

私に言わなくっても、少なくとも斉藤さんには言うよね?


そのまま手元に視線を向けてドアを開けようと力を込めた瞬間、いきなり開いたドアに引っ張られるように前のめりになると、そのままガバッと抱きとめられた。

「美咲ちゃん、なにしてんのー」

頭の上から聞こえてくる甘ったるい声をだすそのわき腹に、即座に拳をいれる。

「離せ変態!」

ごすっ、という音と共に上から笑いが漏れる。


「はっはっは、あの時の経験上、美咲ちゃん対策は万全さ!」

片手でぺらりとシャツをズボンから出して、おなかを私に見せる。

そこには巻かれたバスタオル。


一気に脱力。


「そこまでしてやりたいか……」

硬直してる哲の横をすり抜けて、斉藤さんが私の隣に立って呟く。

「美咲ちゃんで遊ぶのは、僕的最高に楽しいからね」

そいつは悪びれもせず、しかも私を放さない。



「あーそーぶーなーっ! いいから、離せ!」

鞄を企画室の中に放り込んで、両手で身体を押す。

「はっはっは、ムダムダ。さぁ、負けず嫌いの美咲ちゃん! どこで降参シマスカ!」

再び両手で抱きしめてきたその腕に殺意を覚えると、同時に一気に圧迫感が消えて身体が離れた。


よく分からないまま上を見上げると、後ろから右手を哲が、横から左手を課長がそれぞれ掴んで私から引き剥がしてて。

二人して無表情でそいつを睨む。


そのままするりと斉藤さんの影に隠れると、間宮さんが私の鞄を机に置いてくれているのが見えた。

斉藤さんは私の頭を軽く撫でると、大きな溜息をつく。

「真崎、お前なんでここにいるの?」


その言葉に、離された腕を腰に当てて胸を張る。


「期間限定で異動して来たから!」

まるでというか、ホンキで子供のようなこの男、真崎 昴はにこやかに笑った。



――獰猛犬二匹を、一瞬にして敵に回したとは知らずに←斉藤心の声


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