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――なぜだろう


ベッドに腰掛けながら、両手で頭を抱える。

なぜ、いつの間にか泊まることになっていたの……?


なんで言ってなかったの! と小言を言うおばさんに、「言ってたら、こいつこねぇよ」と、哲から確信犯な言葉をいただきました。

どうりであいつ、風呂入りやがったなーとか思ったんだよね。


いや、ま、おばさんがいるからいいんだけど、哲んちに泊まるのは。




ただ――


ふと、手を伸ばしてカーテンを小さく捲る。

ここからだと、よく見えるその家。

かつて、自分の家だった場所。

暖かな明かりがついているその家は、私とは関係のない家族が住んでいる。


カーテンから指を離して、ベッドに寝転がる。

ふかふかのベッドは、正直アパートのベッドよりも気持ちいい。


少し痛む頭を、右手で強く押さえる。

大丈夫だと思っていたけれど。

やっぱり、苦しい。


九年間、ここには来ていなかった。

少し古びた雰囲気を感じるこの町は、それでもあの頃のままで。



――来なければよかったかもしれない……

おばさんの、願いでも。

さっきの、おばさんの言葉が頭から抜けない。



ここに住んでいた頃、たまに哲も加わって四人家族になったりしてた。

とても、仲のいい家族だったと思う。

思うだけで、それは脆くも崩れ去ったのだけれど。

中学を卒業する頃、両親の仲がギクシャクしてきて。

私の知らない間に、離婚が決まっていた。



私の知らない居場所が、二人には互いに出来ていて。

唯一ほっとしたのは、どちらにもまだ子供がいないことだった。

子供がいたら、私、おかしくなってしまいそうだったから。



両親はどちらも私を引き取りたがった。

可哀想な思いをさせてごめんねと。

でもね、それは違う。

哲が目的で私に近づいてくる人達のせいで、けっこう人を見る目はいいんだよ。


ワタシハダマサレナイ


贖罪の為の、温もりはいらない

そんな、キタナイモノ、いらない。

ただ二人が楽になりたいだけだよね?



私は二人に、提示する。



私と一切の縁を切ってください

それだけで、結構です



私に対してナゲキカナシミながら、二人の話し合いの結果。

籍を抜くことは出来ないけれど、もう二度と会いません。

その時に進学が決まっていた大学のお金を、全て振り込んだ通帳を前に、

深く頭を下げてゴメンといわれた。



手切れ金の ような それを


私は 手に取った



そして、そ知らぬ顔でこの町を出た。

離婚についてはどうしてもご近所に噂が流れてしまったけれど。

幼い頃から見知ったその場所で、両親ニダマサレタ娘、として自分は見られたくなかった。


哲さえも知らない、うちの親の離婚の内情




二人から与えてもらっていた家族の愛は、とてもとても綺麗で暖かくて。

それが嘘だったことが、私を闇の中へと引きずり落とす。

あんなに幸せだったのに、それが作り上げられていたものだったなんて。


何を、信じればいいのか、分からなくなった。



―― だから もう 両親とは


      赤の他人になりたかった  ――


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