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昔に戻りなさい-1

あの頃は 全てが私に優しかった


両親がいて 哲がいて


哲の両親がいて 私がいた




キラキラ キラキラ



輝いていた ガラスのような幸せは





全て あの時  



         砕け散った――






――第4章 昔に戻りなさい















「あれ、久我さん。今日は早いね」

八時過ぎには出社してくる間宮さん。

それよりも早く、私は企画室の自分の椅子に座っていた。


えぇ。

もう。


六時過ぎには課長のアパートを出て、ばれないように会社に入り自分の机から着替えを取り出し、仮眠室へ直行。

シャワーを浴びて身支度して、七時過ぎには座ってましたよここに。


もし仮眠室に入っていくのを見られたら、なんか朝帰りの後始末をしてるみたいで嫌じゃない?

朝帰りっていうか、自分のアパートにさえ帰ってないんだけどさっ。


「おはようございます、間宮さん。だって、今日残業しなければ初残業なし週間ですからね。今日は頑張らないと」

間宮さんは鞄を机に置くと、ドアへと歩き出す。

「そうだね。あぁ、俺、珈琲淹れてくるけど、何か飲む?」

その言葉に、慌てて椅子から立ち上がる。

「私行きますよ、間宮さんは座っててください」

そんな、先輩に淹れて貰うだなんて

既にドアノブに手を触れていた間宮さんは片手をこちらに向けて、私を制する。

「いいよ、俺が行ってくるから。確か紅茶の方が好きなんだよね?」

そのままドアを開けて外に出て行く間宮さんに、お礼を言って椅子に座りなおす。

頬杖ついて、間宮さんの机を見た。


綺麗に整理された机の上。

さっき机に置いていた鞄は、結構上質な革鞄で。

実は、彼女さんからの贈り物。

大学から付き合っている彼女さんから、昨年の誕生日にもらったんだって。

時間をかけて、軽くて似合うものを探してくれたらしいって、嬉しそうに言っていた。


すごく、いい関係だよね。

ほんわかとした、暖かさっていうか。

斉藤さんは長く付き合ってて結婚の話も出ないんじゃ、彼女嫌じゃない? とかいってたけれど。

お互いを思いやって、暖かく続いていけるなら、それはそれでいいと思う。

きっと、そのタイミングが来れば結婚に踏み出すんだろうし。


大体さ、課長も哲も私の意志とか、結構無視してるよね。

そりゃ、ちっともそういう風に見ていませんでしたなんていう私も悪いと思うけどさ。

あーあ


「間宮さんの彼女さん、うらやましいなぁ」



「――それは、ありがとう」

開いたドアから、間宮さんの姿。

カップを載せたトレーを片手で持って、こちらを見ている。

「すみません、聞こえました?」

「はは、うん」

間宮さんは、その場で立ったままなぜか苦笑い。

私はついていた肘を机から下ろすと、にへらと笑う。

「だって、間宮さん優しいですもん。彼女さん、幸せでしょうね」

「あはは……、あー……うん。その、嬉しいんだけど。僕としては……」

ゆっくりとドアから離れる間宮さんの後ろに、ごつい身体が二体。

「後ろからの視線が怖いかな」


私の表情から笑みが消えていく。


「ま、まぁ。これでも飲んで。……ある意味頑張れ」

最後の方だけ小さく囁くように言うと、トレーからマグカップを一つ私の机において間宮さんは横を通り過ぎる。

よく見れば他の二人のカップものっていて、それぞれを机に置いて間宮さんは席に着いた。

そして後ろから入ってきた二人、いや正確には一人が部屋の温度を下げていく。


「今日の会議は、何時だったっけな」

斉藤さんはごまかす為なのか、関係のないことを大声で言いながら自分の席について。

一番後ろにいたその人は、がちゃりと大きな音を立ててドアを閉めた。


「おはよう、久我」


「お、はよう……ござい、ます……」


冷たい威圧感をばんばんにかもし出す、加倉井課長さまでありました――――


遠野 雪と申します。

お読みくださる皆様方に、心よりお礼申し上げます。

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ご意見ご感想、もしくは何もなくてもぽちりとしていただけると、とても嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

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