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19

はて。なんでこんなに揺れてるんですかね。

私は何をしていましたかね。


「おい、斉藤。大丈夫か?」

あぁ、そうそう。斉藤さんと飲んでいたわけで。

――あれ、二人じゃなかったっけ?


なんで、斉藤さんと二人なのに、斉藤さんを呼ぶ声?


「頭いてぇー。課長、水ください水」

「勝手に飲め、まったく」


――なんか、恐ろしい役職名が聞こえてきました。

あの、冗談ですよね?


「久我、大丈夫そうですか?」

蛇口からコップに水を入れる音が聞こえて、斉藤さんの声が近づいてくる。

「まぁ、お前が復活するの待ってて寝ただけだろ。そんなに酔ってるわけじゃなかったって、店員が言ってたし」


――で、ここどこ。

蛇口でコップって、店じゃないよね?


ゆっくりと下ろされて、何かに背中をつけた感覚。

私、今、どこにいるんですか???


恐る恐る、うっすらと目を開けてみる。

霞んだ向こうに、課長の顔。


「あ、起きた」

後ろに、斉藤さん。


「――あの……?」

ゆっくりと上体を起こすと、そこはソファの上。

ぐるりと見回しても、私の思考は停止中。


見知らぬ部屋です。

ここどこですか?

自分のアパートじゃないですよね??

こんなに広かったら、手放しで喜びます。


「わりーな久我、迷惑かけて。いやー、俺たち二人とも寝ちまったから、困った店員さんから課長に電話がいったんだって。あれ? そーいえば課長、遅くまで仕事してましたねぇ」

コップの水を飲み干して、再びキッチンへと戻っていく。

その後を、課長が引き継いだ。

「あの店、よく斉藤と行くところなんだ。もう終電ないし、どうしようかと困ったらしくて俺に連絡が来た」

「え? 終電がない?」

って、今何時?

腕時計を慌ててみたら、深夜の一時過ぎ。


「俺ら、どんだけ寝てたんだよなー。課長に起こされた時、毛布までかけてもらってたよ」

そういって笑う斉藤さんに、ちゃんと謝っておけよと課長の言葉が飛ぶ。

「仕方ないからうちに連れてきたんだ」


――うすうす気付いていましたが、やっぱり課長のご自宅でしたか――


私はソファから降りると、頭を下げる。

「すみません、ご迷惑おかけして。あの、私帰りますから……」

「さっきも言ったが、終電ないぞ? 泊まっていけばいいだろう、斉藤もいるし」

「あははー、俺、課長んちに着替えまであるんだぜ? よく泊まるから」

スーツを脱いで笑いこける斉藤さんに、お前は自重しろと課長が冷たい視線を送ってる。


いや、ほら。斉藤さんはいいけどさっ

見当たらない鞄を目で探しながら、両手を振ってごまかす。

「いやいやいや、ほら。タクシーとか帰る手段は、いくらでもっ」

課長は腕を組んで、ふぅっと息を吐く。

「さっきの居酒屋から、うちは近いんだ。必然的に、会社まで歩いていける。明日楽だぞ?」


そーなんだー、課長ってば会社と最寄り駅が一緒なのねっ


「そうそう、楽だぞー久我ー。無理すんなー」

じろっ、と斉藤さんを睨むと、こえーって笑いながらお風呂借ります~だって。

なんて暢気な。


もし仮によ、もし仮に柿沼じゃなくても会社の人に見られたらやばいでしょ。


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