18
「いーや、久我。俺はお前に聞きたい」
脳内妄想で顔を熱くしながら、ぱたぱた両手で風を送っていたら、妙に目の据わった斉藤さんの顔が目の前に迫ってきた。
「は?」
少し後ろに仰け反りながら、ちらりと横目でグラスを見ると。
ちょっとまてっ!
そこに転がるピッチャーの数はなんだ!
しかも、ワインまでいってませんか!!
私も酔っ払い気味だけど、それは否定しないけれど、斉藤さん!
あなたほどじゃないぞ!
「ちょっと、斉藤さん。烏龍茶のみましょう、それともなんか他の頼みましょうか」
自分が頼んで手をつけていなかったグラスを、斉藤さんの目の前に置く。
斉藤さんは、一応手に持ったけれど飲もうとはしない。
「俺さー、課長が幸せなの嬉しいんだよねー。すげー仕事忙しくて、俺たち以上にプライベート少ないからさー」
「あぁ、それははい。尊敬はしてますよ」
やばいな、この人どうやって帰そう。
タクシー押し込むか?
そのあと部屋まで、どうやって持ってこう。
つーか、私も結構きてるんですが、酔い。
「んでさー、久我とさー瑞貴がさー、幸せなのも嬉しいんだよねー。お前ら頑張ってるし、可愛い後輩だしー」
「あはは……」
嬉しいんだけど、この後どうせいと……
「あのさ……課長と瑞貴が今は返事しなくていいって言ってんなら、まだ二人に止めささないで付き合ってやってよ」
――
「え?」
何、今の。
斉藤さんが、突っ伏していた腕の間から私を見る。
真っ赤な顔で、それでも視線は真剣で。
「……二人とも、真剣なんだろ。つったって、久我にとっちゃはた迷惑なんだろうけどさ。嫌いじゃなかったら、あいつら……とと、あの二人の恋愛ごとに、付き合ってやって……」
そのまま、顔を腕に伏せる。
「え? ちょっと斉藤さん……」
言葉の途切れた斉藤さんの口から、小さく寝息が聞こえてくる。
あぁ、つぶれたな。斉藤さん。
いつも酔いがまわると寝てしまう。
仕方ない、少し待つか……
店員さんを呼んで烏龍茶をおかわりしながら、壁に背を預ける。
てかさ。
正直どーしたらいーのか、よくわかんないんだよね……
溜息をつく。
生殺しといわれながら、二人に付き合ってやってといわれ。
要するに、どちらかを好きになるか嫌いになるかまで、二人のやることに付き合えってことでしょ?
それって、どーなの?
傍から見たら、すごい悪い奴じゃない? 私。
どっちともキスしちゃったし。――いやその、濃さ? の違いがあれどね。
嫌いじゃないけど、恋愛感情も少ないんだってっ
少ない……
自分で考えて、恥ずかしくなる。
そりゃぁね。どきどきしましたよ。
でもせまられれば、どきどきするのが人間ってもんだと思いますっ。
だから、恋愛感情がまったくないとは言わない。
でも、どっちって言われても――
「経験値少ない私に、ハードル高いっすよ」
ふはぁっと溜息をついて、目を瞑った。