17
「まっじで? うっわー」
いろいろと推敲を重ね抜粋を重ね消去も重ねて、なんとか今までの経緯を話し終えた後。
斉藤さんの表情は、私にとって厳しいものでした。
はい、男二人への同情的表情です。はい。
それを見つつ、お酒に手が伸びる。
くそうっ、呑まなきゃやってられるかっ!
「生殺しだぁ、生殺し。同情するわ、課長と瑞貴に」
「そんなぁぁぁ」
すごい同情の嵐に、肩を竦めて斉藤さんを見る。
斉藤さんは向こうの壁に背中をつけて、呆れ顔。
「私、悪者ですか?」
「う~ん、まぁ、久我の気持ちも分かるけど」
「ですよねっ?」
がばっ、と机に身を乗り出すと懸命にまくし立てる。
「だってだって、ずっと幼馴染やってきたんですよ。いきなり態度変えろって言われても、無理ですしっ!
課長だって一年以上、上司部下やってきて、それ以上にあの性格。分かれって方が無理だと思いませんか!」
「――いや、まぁそうだけど。瑞貴に関しては気付かないお前の方が、ある意味貴重」
ぐぅぅぅ……
加奈子にも言われたなぁ、くそう。
斉藤さんは溜息をつくと、頬杖をしながら私を見る。
「課長に関しては、俺も分からなかったなぁ。ていうか俺、久我を女と見たことないし。企画室来てからの久我に惚れたんなら、課長の好みが分からん」
――それも、なんだか、微妙なお言葉ですが
表情に微妙なものが出ていたのか、斉藤さんは笑いながらだってさーと話し出す。
「さすがに女性社員が一人、部署に来るって言われた時は大丈夫かなぁって思ったけど、すげぇ仕事するんだもの。俺らの中にいても物怖じしないし。女っつーか妹? みたいな」
――あぁ、それ意味分かる。
斉藤さんも間宮さんも、おにーちゃんみたいっていうのは、思ったことある。
課長はおにーちゃんじゃなくて、課長! でしたが。
「でも、あの拗ねた課長は面白かったなぁ」
「確かに。ちょっと、笑えました」
小さく頷くと、斉藤さんも頷いてまた背中を伸ばして壁にもたれる。
「俺、大学ん時から加倉井課長の事知ってるけど、あんなこと言ったの初めて聞いたよ。付き合ってた彼女もいたのになぁ」
「へぇ、どんな人なんですか?」
あの課長と、お付き合い!
うーわー、想像つかなーい
といいつつ。
貫徹した夜を、思い出す。
見たことのない課長の笑顔。
うん、普段とのギャップで落ちる子はいる気がする。
ていうか。
ごめん、わたしもちょっとクラリときました。
いや、別に謝る事じゃないんですが。
だってさー、いつもストイックな感じなのに、いきなり……アレで……ソレで……あの笑顔は、――どきっとしてもおかしくないと思いますっ




