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「逃げたってことは、俺が飯に誘った理由。分かってるって事だよなぁ、久我?」
針のむしろです。
ていうか、針を投げられている感じです。
斉藤さんの目が据わっております。
会社から少し離れた場所にひっそりとあった、小さな居酒屋。
斉藤さんがよく来るというこの店は、自分的には雰囲気は好き。
今の、この状態じゃなければ。
静かだし、ほぼ個室だし、なんか人いないし←失礼
話が話だけに、会社の奴らがいないところを選んだ俺に感謝しろ、と先ほど斉藤さんが笑っておりました。
いえ、感謝して欲しいなら私を解放してください。
向かい合って座る斉藤さんは、勝手に頼んだおつまみとビールを既に食べ始めていて。
私にも勧めるけれど、そんな気になれないのは当たり前だよね?
「久我、絶対課長と何かあっただろ」
これですよ。
予想を裏切らず、やっぱりこれだった。
「な……なにも……?」
へらりと、ぎこちない笑いが私から漏れる。
――ぎこちなさすぎだからっ
「嘘だな。ほらほら、おにーさんに言ってごらん? じゃないと、部署で冷やかすよ」
「それはナシ!」
部署ってことは、哲もいるからっ。
そんなことしたら、居た堪れないどころの話じゃないっ。
それまでしどろもどろだった私がいきなり断言したものだから、一瞬口をあんぐり開けた斉藤さんは次の瞬間にやりと笑った。
「なんかあるんだろー、今ので肯定したも同じだけどな」
あぁ、自分の馬鹿。
がっくりと肩を落としている私を見て、斉藤さんは小さく息を吐く。
「まぁ、大方予想は出来てるんだけどな。三角関係?」
「はっ?!」
なんでそこまでっ
俯いていた顔をがばっと上げた私を、面白そうに見る。
「分かりやすいなぁ。だって、課長に告白されたんじゃないの? だとしたら、がっつり三角関係だろ」
「え、だって、あれ……?」
「瑞貴がお前に惚れてて、課長が告ったなら三角関係じゃん」