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14

エレベーターのボタンを押して、一階からあがってくるのを待つ。


あれから、課長との間には何もない。

二人になることがほとんどないからなのかもしれないけど、ある意味ほっとする。

なんとなく、なんとなくだけど。

課長にも哲にも、罪悪感を感じるから。


っていうか、二人してなんなのよっ!

男としてみていないって言って悪いとは思うけど、いや、申し訳ないけどホントそうなんだもん。

仕方ないじゃない。

なのに、いきなりそう接されたら戸惑うでしょってのっ!


ゆっくりと上がってくるエレベーターに内心八つ当たりしながら、ぷんすか待っていたら開いたドアの向こうに斉藤さんの姿。


「あれ、久我。もう帰り?」

エレベーターから出てきた斉藤さんは、その場で立ち止まる。

「斉藤さん、お疲れ様です。はい、ワタクシ帰らせていただきます」

出てきた斉藤さんと入れ替わるようにエレベーターの中に入り込んだ私は、後ろを振り向いた途端腕を掴まれて外に出された。


「――え?」


後ろで、エレベーターのしまる音。


目の前には、斉藤さん。


私の腕には、斉藤さんの手。


突然の行動に、頭が真っ白になる


斉藤さんは私の腕を離すと、ちょっとここで待っててと言って企画室の方へ歩いていってしまった。


その後姿を呆気にとられながら見送って、小さく首を傾げる。


え? なんで、私、斉藤さんを待ってなきゃいけないんだろ?


いくつも疑問は沸いて出て、なんとなく、もしかして、と思いはじめた時。

斉藤さんが、走って戻ってきた。


「わり、待たせた」

「はぁ、いえ別に……。で、あの……?」

斉藤さんはエレベーターのボタンを押しながら、私を見下ろす。

「たまには、飯行こうぜ」

――

その言葉に、思わず下を向く。

絶対、内容、アレ、だよね?

あの課長の拗ね拗ね言葉に、反応してたもんね。斉藤さん。

脳裏に浮かぶ事柄に、さぁぁっと血が引いていく。


あのね。

これ以上、誰にも知られたくないわけで。

話すのも嫌なわけで。

だってこれ以上、恋愛へたれだってこと、ばれたくないじゃん!

分かってんのよ、私がへたれってことくらい


エレベーターを降りて、駅方向じゃなく裏通りの方へ歩き出す斉藤さんから少しずつ離れ始める。

歩幅せま~く。途中の路地に入り込んでしまえば、気付くまい。


ゆっくりと、こっそりと、距離をとる。

斉藤さんは気付かないのか、先を歩いていて。

一体どこに行くのか分からなかったけど、会社からしばらく離れたところで私はすいっと横道に入った。


よっしゃ、気付かれてない!

脱出成功! あとは逃げ去るのみ!


――あれ? 身体が前に進みません!


そしてなぜ、後ろから黒いオーラが押し寄せてくる……!?


「ばれないわけないだろ、久我」


溜息交じりの苦笑いが、私の首根っこを持った斉藤さんから発せられた。


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