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企画室のドアを開ける寸前思いついた、考えるまでもないような言い訳を口の中で繰り返す。


部屋の中では課長が、さっきの姿勢のまま仕事をしてた。

傍までいって、とんっと、マグカップを机に置く。

「あの課長。私、急用できたのでやっぱり帰ります」

「そうか」

頭も上げずに、課長の返事。

あら、なんか嫌味言われるかと思ったけど、よかったー。


そのまま机に戻ってさっき電源をつけたパソコンをシャットダウンしようと、マウスに手を伸ばしたとき。


「あ、そういえば」

「え?」


時間差?!


怪訝そうに顔だけ課長に向けたら、椅子から立ち上がってこっちに来る姿。

中腰になっていた身体を戻す。

「なんですか?」

課長は私の言葉を無視して勝手にマウスに手を置くと、何かファイルを開いた。

「これ、なんでここで止めたんだ?」

? これ?

課長の横から顔を出してファイルを覗き込む。

エクセル?

そこには今日以降のスケジュール…………


って、これ――


一気に顔に血が上る。

これ、今日の昼に作り途中だったスケジュールだっ。

いや、別に何もやましいことないんだけど――

なんで課長……

課長はカーソルをトントントンと軽く音をさせて動かすと、私のほうを見た。

「ここで、お前真っ赤になって出てっただろう?」


――!


カーソルの位置は、来週の金曜日で止まっている。

その前日までしか、スケジュールが書き込まれていない。

こっこれは……


哲……の、帰ってくる日で……――


まずい、顔、赤いぞ。

まずい、まずい、まずい――


呪文のように頭の中でまずいを繰り返しつつ、別に課長に分かるわけないんだからと冷静な自分が腕を伸ばす。


マウスに手を置いて、さっさとエクセルを閉じた。

「別にこれが原因とかじゃないですし。なんか昔のこととか思い出して、それで」

そのままの勢いでパソコンをシャットダウンする。

課長は何も言わずに、横でこっちを見下ろしている雰囲気。……見てるよね(涙

でもこういう時の、身長差って助かる。

顔は、見えまい。あっはっは


電源が落ちたのを見計らって、内心焦りながら鞄を掴もうと手を伸ばしたら。

「瑞貴が帰ってくる日だろう?」


――先手を打たれた(涙再び


思わず、手の動きが止まる。

「……あ、そうでしたっけ?」

とりあえず、ごまかそう。そして帰るっ

あやふやな返事をしながらもう一度手を動かそうとしたら、そのまま掴まれた。


――やばい……

あーっ、さっき間宮さんと帰っておけばよかった……!


後悔先に立たず

覆水盆に返らず


手を掴まれた状態で、動きが止まる。

これって、どうやってここから帰ればいいのかな。

誰か教えて、えらいひとーっっ


「瑞貴と付き合うのか?」


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