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君だけを見つめていた 7

side 宗吾




「瑞貴……」


扉の近くにあるピアノが奏でる音と共に開いた扉から、美咲と瑞貴がゆっくりと中に入ってきた。

ベールを被っている美咲の表情は見えないが、瑞貴はじっと俺を見ていて。



「……なんで」


斉藤が、呆気に取られたような声を漏らしている。

きっと、ここにいる人間、皆思っているに違いない。


「……私が、頼んだんです」


呆気にとられている俺に、久我部長が伝えた。

その声が、斉藤や他の人たちにも聞こえたらしい。

ざわついた音が、なくなった。

「私より、適任ですから」

そう笑う久我部長は、少し寂しそうだったけれど。


視線を瑞貴に戻す。


二人は一歩前に出ると、深く頭を下げた。

そして、ゆっくりと俺に向かって歩いてくる。



久我部長の気持ちも分からないでもない。

確かに、瑞貴がずっと美咲を守ってきた。


だからといって、これは、ないだろう。



多分、久我部長は俺たちの間に起こった事を知らない。

知るわけもない。


だから、頼めたのだろう。

知っていたら、頼むなんて残酷な事、絶対にしなかったはずだ。



じっと俺を見つめる、瑞貴。

俯いて、瑞貴に引かれてくる美咲。



……瑞貴、お前は、今、何を想う?



ずっと守ってきた、まだ心を残す美咲を俺の元へ連れてくる、今に。


その視線は、揺らぐことなく俺に向けられていて。

俺の方が、射すくめられてしまいそうだ。



一度目を瞑って、ゆるく息を吐き出す。



瑞貴。

お前が守ってきたもの。

ずっと傍にいて、大切にしてきた美咲。


俺は、お前から、美咲を……受け取る。

お前の役目を、これから一生をかけて引き継いでいく。


だから。

だから、どうか。



お前が心から欲する人間と出会えることを、祈らせて欲しい――



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