君だけを見つめていた 3
Side 宗吾
目を、奪われた。
彼女の、ドレス姿に。
控え室で、フロックコートに着替える。
男なんて、簡単なものだ。
女と違って、髪も自分でやるし化粧はない。
普段着で来て、着替えるだけ。
のんびり準備をしていて、少し、美咲より控え室から出るのが遅かった。
時間があると思って、そこまで急がなかった。
――だから
最初の言葉を、あいつに盗られた。
「……綺麗だよ、美咲」
そう彼女に告げる男の姿に、控え室から出た俺は体の動きを止めた。
愛しそうに、眩しそうに、美咲を見下ろす瑞貴の姿。
全身が……その声音が、瑞貴の全てが美咲に向けて想いを告げている。
愛している
愛している
愛している
暗い嫉妬心を感じると共に、その姿が……俺が言うのもなんだが、切ない。
ずっと想い続けてきた幼馴染が他の男に嫁いでいくのを、笑いながら見送らねばならない瑞貴の姿が。
恋敵だった。
きっと、まだ今も。
でも、最後は美咲の心を……想いを最優先に、彼女が幸せになるように背を押してくれた。
その先に、俺が待っているのが分かっていたのに。
俺は、瑞貴を、年下だが尊敬している。
口には出さないが。
出す事もないだろうが。
いくら好きな女の為とはいえ、あそこまでやれる人間はいないと思う。
だからこそ。
美咲は俺を選んだけれど、瑞貴が大切で大事な存在である事は変わらない。
天然で鈍感で、……素直な彼女は、無意識に瑞貴を縛り続ける。
それを望む、瑞貴の気持ちと共に。
それを、罪と呼ぶか。
絆と呼ぶか。
ふと視線を上げると、美咲の横に立つ佐和と目が合った。
困ったような視線で、俺を見てそのまま瑞貴に戻す。
その顔はまるで弟を見守る姉のような雰囲気で、その後ろに見える真崎でさえも同じ様な笑みを浮かべていた。
美咲は真っ赤な顔を瑞貴と佐和に向けていて、まだ俺の存在に気付いていない。
綺麗な、美咲。
俺の為に真っ白なドレスに身を包む、綺麗で愛しいひと。
俺が、言いたかった。
一番に。
でも、それくらいは、許すべきだと、告げる自分がいる。
これからの、美咲の全てを俺が受け取るのだから。
短いので、今日中にもう一話アップしますm--m