猶予は皆無-1
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見た目を裏切る インファイター
大学の時 そう言われた
はっきりいって 素の俺は
気は長いほうじゃない
……まぁ、その時もだいぶ隠していたが
大人になって 社会に出て
インファイターを押し込めた
今の俺は ボクサーファイター
意識して アウトボクサーよりの
さて
いつ 俺を出そうか?
あいつの隙を狙って
有無を言わさず
落としてやる――
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――――第十章 猶予は皆無
*1
「おはようございます」
いつもの時間、いつもの企画室。
いつもどおりそこには間宮さんがいて、にっこりと笑いかけてくれる。
「おはよう、久我さん。体調はもういいの?」
自分のデスクに鞄を置きながら、同じ様に笑い返す。
「はい、ご心配おかけしました」
「そう? あまり無理しないで」
椅子に腰を下ろして、PCの電源を入れた。
間宮さんも、PC画面に既に向き直ってキーボードを叩いてる。
机の端にある書類入れには、未処理のものが溜まっていて。
それをざっと読みながら、優先順位を決めて仕分けていく。
目を覚ました私は、あれからまた熱をぶり返して。
夜に哲と来た加奈子にお小言を頂戴しながら、それから二日間課長のアパートで休んで自分の部屋に帰った。
そしてなぜか一週間の有給休暇の許可が出されていて、週明けの月曜日、今日出勤したのだ。
課長が手を回してくれたらしいけど……嬉しいような辛いような。
だって、疲れた身体にはありがたい休暇だったけど、仕事が溜まってる、溜まってる。
私が何も覚えていなかったということは、課長から皆に伝えられているようで。
誰も、何も言わない。
今まで以上に心配した目で見られるけれど、それは仕方ないし……内心嬉しい気もしたり。
心ぐるしいけれど、このまま忘れた振りをしてうやむやに終わらせてしまいたい。
どうする事も出来ない問題なんだから――
立ち上がったメーラーには、三桁後半の数はあるんじゃないかと思われるほどの新着メール。
あぁ、私にはのんびりと心を癒す時間もないのね。
なーんて、思える自分が凄いなんて思ったり。
気持ちを消そうとか、いなくなりたいとか思ったけれど。
それが出来ないなら、意識を消してしまおうとか思ったけれど。
全部、出来なかった。
周りを思うと、そのどれも出来なかった。
でも、もう、諦めた。
何もかも、望むことを止めてしまえばいい。
そう思ったら、本当に心が楽になって。
誰も縛らなくてすむなら、諦めるなんて簡単なこと。
私も細かくは知らないんですが、一応ご説明をば――
インファイト 相手に接近して戦うボクシングのスタイル。
パンチ力がものをいう。
相手によって打ち合いになることが多い。
これが得意な選手を、インファイターと呼ぶ。
アウトボクシング 相手との間に一定の距離を保ちながら戦うスタイル。
フットワークがものをいう。
これが得意な選手を、アウトボクサーと呼ぶ。
ボクサーファイター 上記両方の戦術が出来る選手
こんな感じです。
間違ってたらごめんなさいー




