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美咲の部屋を出て、階段を降りる。
宵闇だった空は、真っ暗な夜に変わっていて。
駅までの道を、前のめりで足早に歩いていく。
なんで、俺じゃないんだろう。
美咲の横にいるのが。
どうして、俺じゃないんだ。
課長に渡すために、美咲と一緒にいたわけじゃない。
小学生の頃から、今思えば独占欲丸出しで、美咲にまとわりついてた。
自分では、なんとも思わずに。
ただの、幼馴染なだけだって。
でも。
中学校に入って制服を着た美咲を見たとき、性別と年齢の差を突きつけられた。
ずっと俺と同じだと思ってたのに、いきなり大人びて見えた。
俺の知らない世界が、美咲の日常になった。
どんなに追いかけても年齢だけは、越えられない。
なら、見合う男になりたいと思った。
美咲の世界にずっと必要と思ってもらえる、そんな男に。
今は、そう見てもらえなくても。
男としてみてもらえなくても。
いつかは、きっと……って
苦しい。
幼い頃からの、片思い。
どうやったら、消すことが出来る?
苦しくて、苦しくて。
美咲に、壊してもらおうと思った。
好きな人に、消してもらおうと思った。
切り捨てられたその傷の痛みで、毎日をごまかして生きていこうと思った。
頬に風が当たって、その冷たさにいつの間にか涙が零れているのに気付く。
片手でそれを拭うと、足を止めて空を見上げた。
――辛いけど
でも、もういい
もう、充分
苦しいけど
ホントは、嫌だけど
――なんで泣きそうなの?
悲しそうに、俺を見つめて美咲は言った。
俺の気持ちを、お前は探し出してくれた
俺を、お前は信じてくれた
お前が、好きだ
今だって、きっとこれからだって
俺の幸せを望むなら、ここでお前を壊してしまえばいいのかもしれないけれど。
お前の幸せを望むから、俺は、幼馴染に戻るよ。
お前を守れる、場所に戻るから。
いつか、この気持ちが薄れる時が来るとしても
幼馴染の、大好きな美咲ねーちゃんを守りたいから――




