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だーっ、恥ずかしいっ。
乙女の秘密ってなんだよーっっ!
自分で自分に、吐き気がしそうだ。
だって上手い言い訳が思いつかなかったんだもんー!
穴があったらじゃなくて、自分から穴掘って隠れたいくらいの羞恥心にさいなまれつつ、一応資料室を覗いてみる。
――真っ暗です。
てことは、哲はまだ営業部から戻ってない、と。
資料室のドアを閉めて、IDチェックを抜ける。
あーっ、いつもも面倒だけどこういう時のIDチェックってイライラするっ。
エレベーターに乗り込んで、三階へと向かう。
哲みたいに、運動するつもりはございません。
もう、おばちゃんだよ。一日中座ってることが多いから、腰痛いし背中痛いし。
エレベーターを降りて右側。
営業部のあるフロアに入る。
ここは企画課フロアと違って、部屋で仕切られているわけじゃない。
だだっ広いフロアに、課の単位でブースが島になっている。
営業に用事なら、川島かな。
あいつ、何課だったっけ。
ていうか、ほとんど人がいないんですが……
まぁ、残業していないというよりは、まだ営業先から帰ってきてない人たちも半々なんだろうな。
入り口の所でぐるりとフロアを見回していたら、後ろから声を掛けられてビクッと肩を竦めて振り返る。
「何やってんだよ、こんなとこで」
「うあっ、かっ、川島……」
今まさに帰社したような、そんな格好で私を後ろから見下ろしていた。
それは、同期の川島。
哲の、営業の時の直属上司。
「はい、カッカワシマですけど、何でこんなとこいんの? 誰か用事?」
「繰り返さなくてもいいじゃない、意地悪いんだから。って、哲、知らない?」
「瑞貴? 何、あいつ営業に戻ってくれんの?」
笑顔になってフロアを見回す川島に、片手を振って否定する。
「違う違う。あれ? 川島じゃなかったか」
哲が用事ある人って。
最後の方をぼぞぼぞと呟いていたら、川島が首を傾げながら私の横を通ってフロアに入る。
「なんか、勘違いかも。ごめん川島。じゃ、おつかれー」
「あ、おい、久我?」
川島が呼び止めていたけれど無視して、さっさと営業フロアから踵を返す。
川島に構っている暇はない。
さっさと哲を探し出して、このもやもやを取り除きたいんだよ。
エレベーターホールまで戻って、腕を組んで考えこむ。
ていうか、哲の奴。
営業に行くっていうところからして、嘘つきやがった?
だいたい、この時期にっていうか既に営業出て一年近くたつ哲に、何の用事があるって言うんだろう。
最初の方なら引継ぎの事とかで呼ばれることはあるけど……
仮に営業に来年度異動とか言う話が出てたとしたら、すくなくともうちの課長を通すだろうし。
課長も知らなそうだったしなー
顎に手をやって、ふむ、と息をつく。
指先に触れたテープの端がまた気になりだして、無意識に弄りながら――
「あっ……」
思いついた“もしかして”に、目を見開いて口を開く。
もしかして……、私のこと、ばれた――?
慌ててエレベーターに乗って、一階に向かう。
そういえばこのテープ止める時、一瞬、間があったような気がする。
その上、手元が狂ったからってテープ剥がすかしら。
疑問に思うと、どんどん気になることが出てくる。
そうだよ、あれ、もしかしてこの傷を見るためだったとか――




