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「そこの宮野が、ちゃんと言ってくれたけど? 柿沼がぶちましたって」


宮野が肩を竦めるのと、柿沼が歯をかみ締めてそっちに視線を向けたのは同時で。

「宮野の方が、まだお前より常識人だと思うけどな。なぁ、もう言いなよ、宮野。何したんだよ。美咲に」


口端だけ上げて歪んだ笑みを、二人に向ける。


「上に言う? 重役室、連れて行こうか?」


宮野には、この言葉が聞くらしい。

何か言葉を吐き出し始めた宮野を、柿沼は睨み続ける。


「う……わさ。流して……」

「何の?」

「久我先輩、の。加倉井課長や瑞貴先輩、真崎先輩……あと飲み会の時にいた取引先の人との……。惑わせてる……とか」




――取引先って……亨……?





「もしかして噂流したの……、あの飲みのあとか……?」




ゆっくりと頷く宮野の姿に、思わず目を瞑る。

噂に、亨が入っているって事は、あの飲み会の後に、噂を流したって事で。

今まで大人しかったこいつ等が、あの時をきっかけで実力行使したのなら――



「飲みの時の……あの時の、腹いせ、か――?」



途中で帰った美咲を追って、こいつ等をおいて出て行ったときの……?






柿沼が、勢いよく顔を上げた。


「だからなんだって言うんですか?! 事実を言っただけのことです!」


事実――?


眉を顰めると、柿沼は負けじと睨み返してくる。



追い詰められて反対に冷静になったのか、柿沼は物怖じしない態度で俺の前に立っている。



ある意味、こいつ、すげぇわ。

理解したくねぇけど。



「お前が、噂を流してどれだけ美咲を傷つけたか、わかんねぇのか?」

「自業自得じゃないんですか?」

「は?」

「噂を流されるような、態度をとるからいけないんじゃないですか?!」



ダメだ、逆切れかよ……

イライラしてきた気分そのままに、右手で髪を乱暴にかき上げる。

こいつに言葉は通じないのか?!




「久我先輩、久我先輩。皆して一体なんなんですか?! あんな人のどこがいいって言うんですか?!」



「――俺が、一方的に美咲を好きなだけだ。お前に関係ない」



そこまで言って、怒りを押さえ込むためにゆるく息を吐き出した。


俺の言葉に、呆然と……そして無表情になって柿沼は俺を見つめていた。

俺はそれを、じっと見返して。




宮野の嗚咽だけが響いていたその状況を、柿沼が破った。



何を思ったか、口端を上げて歪んだ笑みを零し俺を見上げる。

その様子に背筋が寒くなり、眉を顰めた。


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