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屋上に続く階段を、お弁当片手に上る。

今日も哲は午前中に回る場所があるらしく、まだ会っていない。


なんとなく、昨日の様子が気にかかるんだけど――


屋上へのドアを開けると、冷たい風が吹き込んでくる。

少し身震いしながら屋上に出ると、いつもの定位置……物置小屋の階段へと歩く。

たぶんもう加奈子がいるはず。


「……」


ん?

誰かの声……?

こんな場所に来る物好き、私たち以外にもいたのか……?


そのまま近づいて物置小屋の側面に建つ。

ここから階段は見えないけれど、声だけはよく聞こえる。


「だめねぇ、瑞貴くん。意外と度胸のない」

「そう言わないでくださいよ」

少しすねたような哲の声と、加奈子。


あら……? あらら?


何の話だろう。そういえば、加奈子と二人で話してるの、初めて聞いたかも。



そのまま耳をそばだてる。

「なかなか言いづらいもんなんすよ。俺、気ぃ小さいから」

「まぁねぇ、相手が――」

そこで言葉が切れる。


――? あれ?


相手? ちょっと大事なところで……



と、俯けていた顔を上げると

「うわっ」

加奈子がこっちを見ていて、驚いて声が出る。

「立ち聞きさん、はっけ~ん」

「あら……」

その後ろから哲が顔を出す。


「最悪……」

哲のその言葉に、思わず体当たりするように駆け寄って両腕を掴む。

「哲! 私には話せないのに、加奈子には相談できるの?!」

「あら、やきもち?」

答えない哲の代わりに、加奈子が後ろでほやや~んと呟く。


「そりゃそうでしょ! これだけ世話と面倒を見てきた美咲おねーちゃんにナイショなの!? 昨日もご飯作ってあげたのに、この恩知らずーっ!」

「うるせぇな、これだからお前に言いたくないんだよ!」

私の腕を掴んではがすと、そっぽを向く。

「哲~、裏切り者め~」

恨みがましそうに呟くと、加奈子がうふふ~と笑いながら私の肩を叩いた。

「いじめ返せる最大のチャンスよ、美咲。今までの恨みをぶつけちゃいなさい?」


「おぉ、さすが我が親友!」

「佐和先輩!」


私と哲の叫び声が、屋上に響く。

「ぜってぇ嫌だ! お前には、絶対言わねぇ!」

「よいではないか、ほらほら、おねーちゃんに相談してみ?」

「まぁ、麗しい幼馴染の姿」


加奈子に何か弱みでも握られているのか、文句を言う割には屋上から立ち去らない哲をいじめつつ、お弁当を食べ始める。

加奈子がお弁当を開いた私を見て、珍しい……と呟いた。

「久しぶりね、お弁当持ってくるの」

「ん?」

確かに、いつもコンビニとかだもんね。

箸を取りだして食べ始めると、横から哲がおかずを掠め取っていく。


「哲。話さないくせに、弁当は盗むってどういうことだ」

「お前のものは俺のもの」


――お前は、某アニメの有名な脇役か


内心ため息をつきつつ、あきらめて残りを口に放り込む。



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