24
知らない内に、周囲を巻き込んで。
知らない内に、傷つけていた――
いつの間にか眠ってしまったらしく、目を開けたら真っ暗だった。
涙で張り付いたまぶたが、少しひりひりする。
壁にもたれて寝ていた身体は、あちこちが軋みを上げて。
ゆっくりと身体を起こす。
「今、何時だろ……」
窓から見える真っ暗な夜空に、腕時計を見ようとしたけれど真っ暗すぎて見えなかった。
仕方なく、ポケットから携帯を取り出す。
それを開けて画面を見ようとしたけれど、いきなりの眩しさに目を瞑って横を向く。
「まぶ……し……」
目がちかちかする。
薄目を開けて光に慣れてから、やっと画面を見ることができた。
「――メール十件……」
思わず、時計よりそっちに目が行く。
メール十件?
私にしては、珍しい数なんですけど。
ボタンを操作して、受信メールを出す。
「? なにこれ……」
哲は、分かる。うん、哲は。
さっきメール送った時、思いっきし不信がられたし。
それに返信してない私も、私だけど。
十件中、哲が三件、真崎さんと間宮さんが一件ずつ、課長が二件――で、
「斉藤さんから三件って……」
内容は異口同音
――帰ったら、メールしろ
思わず、力が抜けて笑ってしまう。
引きつれるのか、頬が痛いけど。
「どれだけ心配性なの、皆」
寝ていた間に止まったはずの涙が、目尻から頬を伝う。
爪で引っ掻かれた傷が沁みるけど、どうでもいい。
嬉しくて、幸せで。
温かくて、泣けてくる。
どれだけ、皆を心配させれば、私は気が済むんだろう。
ひとしきりまた涙を流して、倉庫を出る。
そのままトイレに直行して、顔を思いっきり水で洗い流した。
冷たさに、顔が引き締まる。
頬の赤みは、大分治まってきたみたい。まぁ、腫れてるし、傷もあるけれど。
スーツと髪をささっと直して、気合を入れた。
「よし、帰ろう」
鏡に向けて、にっこりと笑う。
明日はちゃんと、いつもの“久我 美咲”でいられますように。




