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既に冷め切った珈琲を喉に流し込んで、窓の外に目を向けた。
視線をずらして、壁にかかった時計を見上げる。
六時近くを指す、針。
俺の視線に気付いたのか、間宮が腕時計を確認した。
「もうそろそろ戻らないと、課長と瑞貴が変に思うかもしれないね」
倉庫に探し物を見つけに来ただけ。
あまり遅くなると、見にこられてしまうかもしれない。
「俺、戻るから」
間宮はそう言って、飲み終えた缶を手にとって立ち上がった。
「僕も、そろそろ広報に戻らないと。斉藤は、しばらくここにいて」
立ち上がる真崎を見上げる。
「そうだね。斉藤はきっとごまかせないから。本社の人間が大体帰り終わる七時くらいまで、誰かが倉庫に入らないように見張ってて」
間宮を見て、頷いた。
確かに、俺には無理だ。
笑って話せる、自信がない。
俺の飲み終えた缶も一緒に手に取ると、二人は部屋から出て行った。
静まり返る、室内。
机に肘をついて、両手で頭を抱える。
――怖かった
目を瞑る久我を見て。
冷たい水をぶっ掛けられたような、感じがした。
あんなことを、今まで幾度もされてきたのだろうか。
慣れてるからって、噂のことで久我に謝った時、言われた。
それ自体が、俺を安心させるためについた嘘だったのかもしれないけれど。
辛かったに違いない。
苦しかったに違いない。
でも、俺達や……課長や瑞貴のために、笑って過ごしていたのだと思うと、久我の言葉に安心していた自分に罰を与えてぇ。
七時が大幅に過ぎた頃、間宮のメールでやっと俺はその部屋を後にした。
短くてすみません。
今日、せめてあともう一回は更新します




