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「斉藤さん、美咲の鞄そこにありますよね?」
瑞貴が携帯でメールを確認しながら、俺の方を見た。
「あるよ。鞄もコートも」
その言葉に、瑞貴が顔を顰める。
――そう
俺の隣のデスクには、鞄もコートも置いてあるけど本体がいない。
久我からよくわからない外回りに行くという連絡が来たのが、一時半過ぎ。
電話を取った課長は、怪訝そうな顔をしてしばらく顔を顰めていた。
「瑞貴、お前にはなんて連絡来たんだ?」
メールで久我に連絡を取っていた瑞貴は課長の言葉に、首を傾げながら携帯を机の上に戻す。
「多分同じ内容だと……、急に呼び出されたからメーカーに行ってくるって――」
二人とも、というか今ここにいる久我以外が、全員腑に落ちない表情でお互いに顔を見合わせた。
確認しようにも、出先の会社名を言わなかったらしくて、お手上げ状態。
いつもなら確認するんだろうに、課長も確認を忘れたらしい。
「まぁ、本人がそう言うんですし、確認もとりようがないなら仕方ないんじゃないですか?久我さん真面目な子だし、さぼりとかそういうものではないと思いますが」
間宮の言葉に、それはそうだが……、と課長が呟く。
「後でもう一度、連絡してみたら? 何の資料も持って行ってないんだから、まさか夜までってことは無いんじゃないかなぁ」
そう瑞貴に言うと、納得したようなしないような複雑な表情で、そうですね、と呟いた。
微妙な雰囲気を維持したまま時間だけは過ぎ、夕方に突入しようとした時、企画課のドアが勢いよく開かれた。
「斉藤! 前にやった企画の資料頂戴」
久我かと思って全員で見つめたものだから、真崎が珍しく驚いて瞬きを繰り返す。
「どうしたの、皆。なんか変」
ドアを閉めて中に入ってくる真崎に、皆して溜息をついた。
「なんだっけ? 企画の資料?」
不穏な空気になりそうな雰囲気を消そうと、引き出しを開けながら真崎に話しかける。
真崎は、うんそう、と不思議そうな表情で横に立った。
企画の資料……企画の……
「あ」
置いてある場所を思い出して、思わず声を漏らす。
「何?」
なんとなく課長や間宮の視線を気にしつつ、苦笑い気味に真崎を見上げた。
「わりぃ、資料……倉庫だ」
間宮の信じられないものを見る視線が、俺に痛かった(涙




